65歳超雇用推進助成金

Two construction workers review a document at a building site during sunset; the older man in a white helmet has his arm around the younger colleague.

【令和8年改正】65歳超雇用推進助成金でベテラン人材を確保

「若手がなかなか育たない」「ベテランが辞めてしまうと、現場が回らなくなってしまう」。これは、建設業や運送業など、熟練の技術が事業の根幹を支える多くの経営者様が抱える、切実な悩みではないでしょうか。

そんな悩みに応える強力な一手となり得るのが、「65歳超雇用推進助成金」です。特に令和8年度(2026年度)の改正で支給額が増額され、要件も緩和されたことで、これまで以上に活用しやすくなりました。

この記事では、単なる制度の解説に留まりません。人手不足や技術承継といった経営課題を、この助成金を使ってどう乗り越えていくか、具体的な活用法と注意点を専門家の視点から分かりやすくお伝えします。企業の雇用に関する助成金は多岐にわたりますが、この記事がベテラン人材の確保を検討する際の参考資料としてお役立ていただければ幸いです。おすすめ助成金一覧も併せてご覧いただくと、より理解が深まるでしょう。

まず結論:主要2コースの支給額と申請フロー

お忙しい経営者の皆様のために、まずは結論からお伝えします。「結局、いくらもらえて、何をすればいいのか?」という疑問に、最も利用の多い2つのコースに絞って簡潔にお答えします。

【早見表】貴社はいくら受給できる?支給額をチェック

令和8年度の改正で、支給額はより魅力的になりました。貴社の状況と照らし合わせて、具体的な受給額をイメージしてみてください。

65歳超継続雇用促進コース

措置内容対象被保険者数
1~3人
対象被保険者数
4~6人
対象被保険者数
7~9人
対象被保険者数 10人以上
65歳への定年引上げ15万円20万円25万円30万円
66~69歳への定年引上げ(5歳未満)25万円32万円39万円46万円
66~69歳への定年引上げ(5歳以上)40万円65万円110万円135万円
70歳以上への定年引上げ45万円70万円115万円140万円
定年の定めの廃止60万円120万円180万円240万円
希望者全員を66~69歳まで継続雇用する制度の導入22万円37万円60万円90万円
対象者基準ありで66~69歳まで継続雇用する制度の導入20万円32万円50万円75万円
希望者全員を70歳以上まで継続雇用する制度の導入40万円65万円105万円130万円
対象者基準ありで70歳以上まで継続雇用する制度の導入36万円60万円95万円120万円
65歳超継続雇用促進コース 支給額一覧

高年齢者無期雇用転換コース

対象者中小企業の支給額(1人あたり)中小企業以外の支給額(1人あたり)
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者40万円30万円
高年齢者無期雇用転換コース 支給額

※65歳超継続雇用促進コースの支給額は、対象被保険者数と実施する措置により異なります。

申請までの流れを2パターンで解説

申請フローはコースによって少し異なります。それぞれの流れを掴んでおきましょう。

パターン1:65歳超継続雇用促進コースの流れ
このコースは、事前の計画書提出が不要なのが特徴です。

  1. 就業規則の整備:定年の引上げなど、助成金の要件を満たすように就業規則を変更します。
  2. 制度の導入:変更した就業規則を労働基準監督署へ届け出て、社内に周知します。
  3. 支給申請:制度導入後、定められた期間内に必要書類を揃え、JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)へ申請します。
65歳超雇用推進助成金の申請フローを2パターンで解説した図解。継続雇用促進コースと無期雇用転換コースのステップの違いが示されている。

パターン2:高年齢者無期雇用転換コースの流れ
こちらは、まず計画を立ててから実行に移す流れになります。

  1. 計画書の提出:無期雇用への転換計画書を作成し、JEEDに提出して認定を受けます。
  2. 制度の導入:計画に沿って、対象となる有期契約の従業員を無期雇用に転換します。
  3. 支給申請:転換後、定められた期間内に必要書類を揃え、JEEDへ申請します。

どちらのコースも、申請の土台となる就業規則の改訂・変更が非常に重要になります。申請先がハローワークではなく「JEED」である点も覚えておきましょう。

【改正の罠】社労士委託要件廃止後の自社申請のリスク

令和8年度改正の大きな変更点に「社会保険労務士への委託要件の廃止」があります。「これなら社労士に頼まず、コストをかけずに自分でできそうだ」と感じるかもしれません。

しかし、この点は慎重に確認すべき注意点です。結論から申し上げますと、委託要件がなくなったからといって、申請の難易度が下がったわけでは決してありません。むしろ、専門家のチェックがないまま手続きを進めることで、気づかぬうちに不備を犯し、結果的に受給できないリスクは高まったとさえ言えるのです。

助成金申請は、単に書類を出すだけの作業ではありません。労働法の専門知識がなければ、思わぬところでつまずいてしまう可能性があります。顧問社労士に依頼するメリットもぜひご検討ください。

「自分でできる」は危険!失敗する3つの典型パターン

安易な自社申請で失敗するケースには、共通した典型パターンがあります。

  1. 就業規則の不備・矛盾
    助成金申請の成否は、法律の要件を満たした就業規則にかかっています。「昔作ったまま放置している」「ネットの雛形をそのまま使っている」といった就業規則では、最新の法改正に対応できておらず、審査で指摘される可能性が非常に高いです。特に就業規則の作成には専門的な視点が欠かせません。
  2. 申請書類の複雑さと添付書類の漏れ
    申請書類には専門用語が多く、正確に記入するだけでも一苦労です。さらに、出勤簿や賃金台帳など多数の添付書類が必要となり、一つでも不備や漏れがあれば申請は受理されません。「これくらい大丈夫だろう」という自己判断が、不支給につながることもあります。
  3. JEEDからの専門的な問い合わせに対応できない
    書類提出後、審査機関であるJEEDから電話で内容確認の連絡が来ることがあります。その際、担当者は労働法のプロとして、就業規則の条文の意図や制度の運用実態について鋭い質問をしてきます。専門知識なしで的確に回答するのは極めて困難です。
助成金の複雑な申請書類を前に、頭を抱えて悩んでいる中小企業の経営者。

これらのリスクを避けるためにも、専門家である社会保険労務士の活用を検討することをお勧めします。

【事務所ノウハウ】助成金を2回受給する戦略的活用法

ここで、当事務所ならではの実践的なノウハウを一つご紹介します。それは、この助成金を戦略的に複数回受給するという考え方です。令和8年度の改正で「1事業主1回限り」という制限が撤廃されたため、段階的な制度改定によって2度、3度と受給できる道が開かれました。

実際に、私が担当させていただいたお客様で、この改正を活かして2度目の受給に成功したケースがあります。

そのお客様(A社様)は、3年前に私のサポートで定年を60歳から70歳に引き上げ、一度「65歳超継続雇用促進コース」を受給されていました。社長様も「助成金はもう使えない」と思い込んでいらっしゃいました。

しかし、令和8年の改正内容を分析した私は、すぐに社長様へご連絡しました。「社長、もう一度チャンスがあります。70歳定年の会社が、希望者全員を71歳まで継続雇用する制度を導入すれば、再び助成金の対象になりますよ」と。このアドバイスにすぐにご決断いただき、申請手続きを進めた結果、対象従業員が5名いらっしゃったため、見事65万円の助成金を追加で受給することができたのです。

社長からは、「猪狩さんに相談していなければ、このチャンスに気づくことすらなかった。本当にありがとう」と、大変喜んでいただけました。これは、常に最新の法改正を追いかけ、お客様にとっての最善策を考え続ける専門家だからこそ実現できた事例だと自負しております。

モデルケース:定年引上げと継続雇用制度で合計85万円受給

例えば、従業員数が1~3名の企業様でも、以下のような戦略が描けます。

  • 1回目:まず定年を70歳に引き上げて申請し、45万円を受給。
  • 2回目:数年後、さらに希望者全員を71歳まで継続雇用する制度を導入して再度申請し、40万円を受給。

この場合、合計で85万円もの助成金が受給できる可能性があるのです。一度きりと諦めず、長期的な視点で制度を設計することが重要です。顧問社労士に相談することで、このような戦略的な活用も可能になります。

パート・契約社員も対象!無期雇用転換コースの利点

もう一つの柱である「高年齢者無期雇用転換コース」も、非常に使い勝手の良い制度です。これは、パートや契約社員として働く50歳以上のベテラン従業員を、期間の定めのない「無期雇用」に切り替える際に活用できます。

このコースの最大の利点は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と異なり、無期雇用へ転換する際に、必ずしも賃金を上げる必要がないという点です。もちろん処遇改善が望ましいのは言うまでもありませんが、「まずは雇用の安定を優先したい」という企業にとっては、人件費の急な増加を抑えながらベテランの定着を図れる、非常にハードルの低い制度と言えるでしょう。

建設現場で笑顔で話すベテランと若手の作業員。技術承継がうまくいっている様子。

建設業や運送業では、繁忙期に合わせて有期契約で経験豊富な職人さんを雇用することも多いはずです。「これからも安心してうちで働き続けてほしい」という想いを、この助成金で形にしてみてはいかがでしょうか。他にも、高齢者などを雇用する際に活用できる助成金もありますので、貴社の状況に合わせて最適な制度を選ぶことが重要です。

専門家に任せる本当の価値は「時間」と「申請精度の向上」です

ここまでお読みいただき、「自社でも活用できるかもしれない」と感じていただけたのではないでしょうか。しかし同時に、「やはり手続きは複雑そうだ」という不安も残っているかもしれません。

専門家である社会保険労務士に依頼する本当の価値は、単に面倒な手続きを代行することではありません。それは、経営者にとって最も貴重な資源である「時間」を生み出し、助成金申請の「精度」を高めるという経営判断にあります。

不慣れな申請業務に頭を悩ませる時間を、本来の業務である売上向上や人材育成に使う。そして、専門家のサポートのもと、万全の体制で申請に臨む。これこそが、賢明な経営判断ではないでしょうか。

私たち、いがり綜合事務所は、助成金申請はもちろんのこと、その土台となる就業規則の整備から、日々の労務相談まで、貴社の経営を力強くサポートします。「うちの会社の場合はどうだろう?」と少しでも思われたなら、それが第一歩です。詳しいお打ち合わせ・ご相談方法のご案内もございますので、まずはお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。貴社の未来を一緒に考えさせていただきます。

 

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