建設業許可の更新の注意点

別の記事でも書きましたが、許可更新申請をするにあたっては、前提として確認すべきこと、事前にやっておくべきことがあります。これが抜けていると、更新許可申請書がどんなに完璧であっても、受け付けられません。

ここでは、具体的に建設業許可の更新をする上で注意すべき点についてご説明します。

建設業許可の更新申請の前に確認すべきこと

建設業許可を取得した後5年も経つと、その間に会社に関する様々な事項が変更になることはあると思います。何か変更があったら、そのつど変更届の提出が必要です。

こうした変更届の提出は、建設業許可更新のために必須条件となります。私どもが建設業許可の更新のご依頼があった時には、まずこの変更届が提出されているかを確認するのです。

まずは、どのような場合に変更届が必要なのかについてご説明します。

決算変更届

決算変更届は毎年提出します

毎年、1年間の決算内容や工事の内容を、決算日から4カ月以内に提出することになっています。たとえば、3月31日が決算日だとすると、7月31日が提出期限になります。

税理士による決算書の作成、税務申告が終わるのが通常は決算日から2~3ヶ月後ですから、決算確定後から1ヶ月以内に対応する必要があります。

決算変更届の内容

決算変更届には、次のような書類を添付して提出します。

  • 工事経歴書(請負金額上位の工事について記載)
  • 直前3年の工事施工金額
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 完成工事原価報告書
  • 注記表
  • 事業報告書(株式会社のみ)
  • 納税証明書



税理士の作成する決算書とは違う

貸借対照表、損益計算書などの財務諸表は、税理士の作成する税法上の書類はそのままでは使えません。建設業法施行規則で定める様式で作成しなおす必要があります。原価、販管費を区分しての管理も必要です。

公共工事をめざして経営事項審査を受ける予定がある場合は、消費税抜きで作成するというルールもあります。

また、工事経歴書には請負代金の上位6~7割、あるいは少なくとも上位10件の工事について詳細を記載します。ふだんから受注工事の内容をExcel等でリストにしていればよいのですが、そうでもないと1年間の請負契約書や注文書から必要な情報を抽出して作成することになります。

建設業経理に明るい方であれば別ですが、一般的には決算変更届を仕上げるのはかなり煩雑な作業になります。

経営業務管理責任者、専任技術者の交替による変更届

経営業務管理責任者や専任技術者が交替した場合は、14日以内に変更届を提出する必要があります。

5年も経つと、国家資格を持つ専任技術者が退職してしまうこともあるかもしれません。 後任の専任技術者をすぐに選任していればよいのですが、後任者を用意していなかったとなると大問題です。

というのも、経営業務管理責任者や専任技術者の交替で、中1日以上不在の期間があると、許可が失効してしまうからです。

たとえば、経営業務管理責任者または専任技術者が

10月10日に退任 → 10月11日に新任者が就任 

14日以内に交替の変更届を提出すれば大丈夫です。

10月10日に退任 → 10月12日に新任者が就任 

この場合は、許可が維持できないので、残念ながら廃業届を提出しなければなりません。

経営業務管理責任者や専任技術者には常勤性が求められますから、これらの日付は健康保険証や履歴事項証明書などの公的書類で厳格にチェックされます。タイムリーに対応しないと、後で取り繕おうとしても無理が生じてしまいます。

経営業務管理責任者、専任技術者は、建設業許可の要件の中でももっとも重要なものですから、このような厳しいルールが設けられています。決算変更届や会社名変更を届け出忘れていた、というのとは訳が違います。

その他の変更届

建設業許可を取得してから、次のことについて変更はなかったでしょうか?

変更届が必要な事項(主なもの) 

  • 商号(会社名)・名称
  • 営業所の所在地・名称
  • 営業所の新設・廃止・業種
  • 資本金
  • 役員等
  • 支配人
  • 令3条使用人(支店長、営業所長など)

これらの事項に変更があった場合は、30日以内に変更届をしなければならないことになっています。

ただ、実際には変更していたにもかかわらず、変更届の提出をしていない建設業者様は少なくありません。30日以内の期限内に提出するようにするのがベストですが、提出していないことに気づいたら、その時点ですぐに対応するようにしましょう。

更新許可には変更届の副本が必要

以上、さまざまな変更届についてみてきました。

これらの変更届が更新許可にとってなぜ重要なのかというと、5年の間に必要な変更届を提出し、その副本(控え)を建設業許可更新申請書と一緒に持参しなければならないからです。

変更届が必要かどうかは、5年前の申請書と更新申請書を見比べれば分かってしまいますので、完璧な更新申請書を窓口に持っていっても、変更届の副本が無ければその日はそのまま帰ることになってしまいます。

変更届は建設業許可更新の大前提になります。許可取得の時だけではなく、その後も定期的なお付き合いがあれば、こうした届出漏れを防ぐことができます。

ぜひ許可取得だけでなく、許可後も継続的にご相談いただければと思います。

なぜ更新期限を忘れてしまうのか?

更新時期を忘れてしまい、気づいたら5年経過してしまっていた。そんな事態になってしまうのはなぜなのでしょうか?

いくつか理由はあると思いますが、行政書士との連携がうまく取れていないのではないか、というケースをいくつか経験しています。 

新規許可の取得は行政書士に依頼したけど、年1回の決算変更届は自社でやろうとして行政書士に依頼されていない等により、行政書士と話したのは最初だけで、その後は行政書士と連絡を取っていないという業者様もいるかと思います。

決算変更届は、届出書そのものを作成代行するという意味もあるのですが、それ以上に毎年決まった時期にお話をすることによって、建設業許可に対するペースメーカー的な意味合いもあります。4年目の決算変更届の時に、「来年は更新ですね」という会話があれば、更新期限を忘れることもないと思います。

当事務所では、過去に新規許可の取得や各種変更届をご依頼いただいたことのある業者様については、更新期限を逐一チェックしています。

そして有効期間満了の4~5ヶ月前には「更新が必要です」とお知らせをして、3ヶ月前の日には満を持して更新許可申請をできるようなサポートをしています。

決算変更届にかかる費用は1回について3~4万円程度です。通常はかなり手間もかかりますので、建設業の決算変更届の専門家である行政書士に依頼されてみてはいかがでしょうか。

許可の有効期間の一本化

もう1つ、複数業種の許可を異なる時期に取得した場合に、それぞれの業種の有効期間を管理しきれていない、というのも、更新忘れの理由の1つではないかと思います。

同一業者で2個以上の許可を受けている(許可日が複数ある)場合、先に有効期間の満了を迎える許可の更新を申請する際に、有効期間が残っている他の建設業の許可についても同時に許可の更新申請をすることができます。

たとえば、最初に解体工事の許可を取得した後に、2年ほどして建築一式工事の許可を追加で取得した場合、次のようになります。

  • 解体工事の許可取得日 平成28年10月7日 有効期間満了令和3年10月6日
  • 建築一式の許可取得日 平成30年3月3日  有効期間満了令和5年3月2日

このままだと、令和3年、令和5年と2つの更新期限があり、令和3年の更新を終えてほっとしたのも束の間、令和5年にまた更新手続きがやってきてしまいます。

このような場合、解体工事の更新のタイミングである令和3年に、建築一式も一緒に更新してしまうことが可能です。これを許可の有効期間の調整(一本化)といいます。

この一本化をすると、先に有効期間の満了する許可にあわせて許可日は同一となります。

上の例では、解体工事と建築一式を令和3年に同時に更新をすると、次のようになります。

  • 解体工事の許可取得日 令和3年10月7日 有効期間満了 令和8年10月6日
  • 建築一式の許可取得日 令和3年10月7日 有効期間満了 令和8年10月6日

これで有効期間が揃いましたので、令和8年の期限だけチェックしておけばいいことになりますね。

当事務所では、申請手続きはもちろんのこと、許可有効期限の管理が楽になるこうしたテクニカルなご提案なども可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

 

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