ここでは、就業規則の見直し、変更の流れについて、注意点もまじえてご説明します。
このページの目次
1 現在の就業規則の分析
もしすでに就業規則が存在する場合は、その内容分析から始めましょう。
御社の現状とズレがないか、昔はあったけど今は廃止した制度が書かれていないか、トラブル発生を招く条項がないか、契約社員やパートなど含め全社員の労働条件が記載されているか、などチェック項目はたくさんあります。
また、表紙か1番最後のページに「施行日」が書いてあれば、チェックしてみましょう。
中には10年以上前に作成してから見直しをしていないという相談例もありますが、働き方改革をはじめとして、いま労働法制は目まぐるしく変わっています。現行法に違反している条項はないか、についても1つの大きなポイントです。
2 就業規則(変更)案の作成
現状が把握できたら、チェックポイントで問題点が見つかった部分について、就業規則の変更案を作成していきます。現状の条項を見直し修正することもあれば、大掛かりな変更が必要なケースもあるでしょう。
ご自身で労働法令や資料を読みながら就業規則の見直し、変更を進めるのはなかなか大変です。就業規則の変更にはポイントがありますので、専門家である社労士のアドバイスを受けるとスムーズです。
3 従業員代表の選出
就業規則の変更にあたっては、従業員代表の意見を聞かなければなりません(労働基準法第90条)。
労働組合の無い会社の場合、従業員の過半数により、就業規則の変更に関する意見を述べる代表者を選出します。この過半数とは、正社員のみならず、契約社員、パートタイマーなどすべての労働者(管理監督者を含みます)の過半数のことをいいます。
選出方法は、投票、挙手など全社員が集まって決める方法もあれば、候補者を示したうえで回覧により賛否を募る方法、メールにより候補者を信任するか否かたずねる方法など、さまざまあります。
この選出には会社側である社長や役員は関与してはいけません。従業員に任せましょう。
社長指名で選出された過半数労働者の選出は無効とされた事例もあります。
近年、この過半数代表者の選出手続きについて裁判所、行政とも厳格な判断をする傾向にあるので、選出の記録(議事録や回覧板、メールなど)を残しておくことが望ましいといえます。
4 従業員代表の意見聴取
過半数代表者が選任されたら、その代表者から意見を聞きます。
たまに勘違いがあるのですが、就業規則の変更内容について過半数代表者の賛成(同意)を得る必要はありません。あくまで意見を聞くことが会社の義務なのであって、仮に全面的に反対という意見でも、意見は聞いたことになります。
ただ、過半数代表者から反対の意見があった場合、その就業規則変更について後で有効性を争われたときに、会社に不利に働く可能性があります。
就業規則の変更が認められるには、その変更に合理性があることが必要なのですが、その合理性の判断要素の1つとして、「労働組合等との交渉の状況」を要素とするように定められています(労働契約法第10条)。
従業員代表と誠実に協議を尽くしたか、変更の理由や影響について説明を尽くしたか、といった点を重視するのが裁判例の動向です。
なので、反対されてもいいんだ、と形式的に考えるのではなく、なるべく納得を得られるように努力することも必要でしょう。
5 労働基準監督署へ届出
事業場を管轄する労働基準監督署へ、就業規則を届出します。届出にあたっては、従業員代表の意見書の添付が必要です。
窓口に書面で移出する際は2部同じものを持参すると、受付印が押されたものを1部返してもらえます。なお、この際に就業規則の内容が審査されることはありません。窓口だと、労基署の担当者パラパラめくりはしますが、1分以内に受付印を押してくれて終わりになります。
6 変更後の就業規則の周知
終業規則が効力を生じるためには、従業員に周知されていることが必要です(労働契約法第10条)。周知というのは、一言で言えば「就業規則を読もうと思ったときに、いつでも読める」状態に置くことです。
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就業規則の診断を受け、見直しを行うことで、変更すべき条項が明確になります。
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