令和4年3月時点で、新型コロナウイルスの第6波はピークを越えつつあるものの、なお一部の都道府県ではまん延防止等重点措置が適用され、1日に数万人の新規感染者が報告されています。
このような状況下で、顧問先の社長から「社員が新型コロナ陽性や濃厚接触者になった。どう対応すべきか」というご相談がかなり多く寄せられています。 そこで、改めて従業員が陽性、濃厚接触者になった場合の対応、特に休業手当の支払いなど従業員の所得補償の方法についてご説明します。
このページの目次
1 従業員が新型コロナウイルスに感染した場合
コロナ陽性者は就業禁止
PCR検査の結果新型コロナ陽性と判定された場合、法律上その従業員は就業させることはできません(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第18条)。これは無症状であっても同様です。
休業手当は支給不要。雇用調整助成金も対象外
就業できない以上、会社としては休業手当(平均賃金の60%以上。労働基準法第26条)を支払う必要はありません。また、休業手当を支払う必要がないため、雇用調整助成金の支給対象外となります(雇用調整助成金FAQ(令和3年12月21日現在版)04-03)。
コロナ陽性者には傷病手当金か有給休暇で対応する
新型コロナ陽性となった従業員に対しては、健康保険の傷病手当金が支給されます。標準報酬額の3分の2が支給されますので、会社としてはこの傷病手当金の申請をしてあげるとよいでしょう。
または、従業員から有給休暇取得の申出があればこれを取得させ、通常の賃金を支払うことになります。
2 従業員が濃厚接触者と認定された場合
濃厚接触者は会社指示により出社制限すべき
濃厚接触者と認定されればその社員を出社させることはまずないでしょう。ある統計では、濃厚接触者の従業員に対しては9割以上の事業者が会社指示により出社を制限しています。また各自治体からも、濃厚接触者には不要不急の外出自粛が要請されています。
ほかの従業員の健康を守るためにも、濃厚接触者と認定された従業員は出社させないことが望ましい対応と考えられます。
在宅勤務の可能性を検討する
いわゆる濃厚接触者はあくまで接触者であって、コロナに感染しているとは限りません。健康状態に問題なければ、在宅勤務させることができないかを検討しましょう。
在宅勤務が難しければ、休業手当の支払いを検討する
業務の性質上、在宅勤務が難しい場合には、休業手当の支払いを検討します。厳密にいうと、濃厚接触者に対して休業手当の支払いが法律上必要かどうかは悩ましい(事例ごとに判断すべき)ところですが、一方で濃厚接触者の休業については雇用調整助成金の対象となるとされています。要件さえ満たせば、休業手当を支払った上で雇用調整助成金の支給申請をするというのがおすすめの対応策です。
なお、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4-問1」では、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、休業手当の支払いが必要となる」と述べており、もし休業手当の支払いをしないという判断をするには、少なくとも上で述べた在宅勤務の検討は必須条件といえます。
有給休暇で対応する
濃厚接触者である従業員から有給休暇取得の申出があればこれを取得させ、通常の賃金を支払うことになります。特に雇用調整助成金の要件を満たさない場合、この有休による対応も実務的にはよく見られるところです。
3 まとめ
従業員が新型コロナ陽性や濃厚接触者になった場合の対応方法についてご説明してきました。まとめると
・新型コロナ陽性者の場合、傷病手当金か有給休暇で対応
・濃厚接触者の場合、休業手当を支払い助成金を受給するか、有給休暇で対応
という方向性になると思います。
個別の事例ごとの判断や、傷病手当金支給申請、雇用調整助成金支給申請についてお悩みがあれば、お気軽に当事務所までご相談ください。
最後になりますが、1日も早い新型コロナの終息を心よりお祈り申し上げます。