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新型コロナによる休校・休園で従業員が休んだ場合に使える助成金

2022-01-25

コロナ急拡大で臨時休校・休園数が急増

 令和4年1月から、オミクロン型の新型コロナウイルスが猛威を振るっています。

 昨年12月は陽性者数がかなり減っていたので少し油断していたのですが、この感染力は非常に脅威です。

 コロナの感染急拡大によって、学校や幼稚園、保育園などでも感染者が発生し、休園・休校するケースが報道されています。1月25日の報道によると、東京都内で全面休園の認可保育園は1週間前の4倍になっているとのことです。
 こうなると、子どもたちは家にいることになりますが、子どもを1人でおいておくわけにもいきません。お仕事をされている保護者は、やむなく会社を欠勤し、子どもの世話をすることになります。もちろん子どもの健康状態が一番心配ですが、それ以外にも、欠勤が続くと収入が減ってしまうのではないか、という不安を持つ従業員も当然いらっしゃると思います。

助成金で、働く保護者の収入をサポートできる

 こうした場合に有効なのが、「小学校休業等対応助成金」です。
 この助成金は、休校・休園等により、子どもの世話を保護者として行うためやむなく欠勤した従業員に対し、その休んだ日の給与を全額支給する特別な休暇を取得させた場合に、その給与を補填するために助成されるものです。

 支給額は、上記の休暇を取得させた日の分の給与全額ですが、上限額の定めがあり、一応、原則的な上限額は以下のとおりです。

  令和4年1月~2月については、1日当たり上限11,000円
  令和4年3月については、1日当たり上限9,000円

 ただし、まん延防止等重点措置が適用されている地域では、1日当たり15,000円です。1月25日現在、かなりの数の都道府県でまん防適用されており、日給15,000円であればほとんど全額が助成されると考えていいのではないでしょうか。

対象となる小学校等

(1)小学校、義務教育学校の前期課程、各種学校(幼稚園または小学校の課程に類する課程を置くものに限る)、特別支援学校(全ての部)
★障害のある子どもについては、中学校、義務教育学校の後期課程、高等学校、各種学校(高等学校までの課程に類する課程)なども含む。
(2)放課後児童クラブ、放課後等デイサービス
(3)幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子どもの一時的な預かりなどを行う事業、障害児の通所支援を行う施設など

一部を除き中学生、高校生は対象外なので、ご注意ください。

助成金申請に必要な書類

 小学校休業等対応助成金の申請にあたり準備が必要な書類は、主に次のものです。

(1)休暇を取得した月の賃金台帳、給与明細
(2)休暇を取得した月のタイムカード、出勤簿など
(3)休暇を取得した従業員の雇用契約書、労働条件通知書、シフト表など
(4)小学校等で配布された、臨時休校・休園に関するお知らせ文

年次有給休暇とは別の休暇を付与することが必要

 本助成金を受給するためには、労働基準法上の年次有給休暇(通常の有給)とは別に、特別の休暇を与えることが必要です。年次有給休暇を消化させた場合はこの助成金は支給されませんので、ご注意ください。

雇用調整助成金との違い

 臨時休校・休園による欠勤は、会社都合というよりは従業員の都合によるものと考えられます。そうすると、新型コロナによる休校・休園で従業員が休んだ場合、会社都合による休業が要件の「雇用調整助成金」を申請するのは妥当でなく、このようなケースでは小学校休業等対応助成金が適していると思われます。
 なお、雇用調整助成金と異なり、売上減などの要件はありません。

まとめ

以上、小学校休業等対応助成金についてご説明してきました。

・オミクロン株の急拡大で、小学校等の臨時休校・休園が増えている
・子どもの面倒を見る保護者は出勤できず、休んだ分の給与がもらえないのでは?と不安である
・まん延防止等重点措置の適用地域では、1日当たり15,000円を上限として、休暇日に支給した賃金全額が助成される

 この助成金は経済的に会社の利益になるという訳ではありませんが、こうした緊急時に従業員へ休暇を付与し収入も保障してあげることで、従業員にやさしい会社として従業員の満足度も上昇すると考えられます。賃金単価が高額な場合を除けば、会社の人件費負担は実質ありませんので、対象となる従業員がいれば、積極的にご活用いただければと思います。

厚生労働省が「シフト制」労働契約に関する留意事項を公表

2022-01-18

 パートやアルバイトを中心に、労働日や労働時間を確定的に定めず、勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定する、いわゆる「シフト制」と呼ばれる雇用形態があります。業種にもよりますが、飲食店やコンビニなどバイト社員が中心の業態では「勤務日、勤務時間はシフトによる」とだけ書かれている雇用契約書もよく見かけます。
 このシフト制に関する労働問題について、令和4年1月にトラブル予防に向けて厚生労働省が「留意事項」を公表しました。そこで、シフト制がもつメリットやデメリット、公表された 「留意事項」 の内容についてみていきたいと思います。

シフト制のメリット

 シフト制には、柔軟に労働日・労働時間を設定できる点で会社にも従業員にメリットがあります。会社としては繁忙期に多くシフトに入ってもらえますし、シフト制従業員としては大学の試験中はシフトを減らし、夏休みなど長期休暇中はたくさん働いてたくさん稼ぐといったことが可能になります。
 「柔軟性」がシフト制の最大のメリットといえます。

シフト制で起こりうるトラブル

 一方で、シフト制の契約内容のあいまいさによって、労働紛争が発生することもあります。

 この問題は、コロナ禍で休業を余儀なくされたケースで大きくクローズアップされることになりました。
 たとえば、ふだん平均して週3回ほどシフトが入っていたバイト社員について、緊急事態宣言中はシフトを0日とした飲食店がありました。バイト社員としては、この期間まったく収入を得ることができません。本来であれば、週3回分の休業手当(平均賃金の6割以上)を支払うべきですが、実際にはバイト社員に休業手当が払われなかったケースが多発していたと思われます。雇用調整助成金を使えば、休業手当はほぼ100%国が負担してくれたにもかかわらず、です。
 また、コロナ禍でなく平常時であっても、たとえば勤務態度のよくない社員のシフトを減らし退職に追い込もうといった事案が裁判になった例もあります。雇用契約書に「シフト制による」とか「週1日以上」などと書かれていても、過去の勤務実態によって勤務時間や勤務日数が認定できる場合は、その実態によって判断されています。一方、過去の実績から所定労働日数が認定できないケースでも、シフト日数を極端に減らしたことを「会社のシフトの決定権限の濫用」として賃金の差額の支払いを命じた裁判例もあります(シルバーハート事件。東京地裁令和2年11月25日)。

 「シフト社員には休業手当など払う必要はない」「お店がコロナ禍で苦しいのだからシフト社員も我慢してよ」といった理屈は、通用しないことが多いということです。

「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項

 このようなシフト制に関する労働慣行を受けて、令和4年1月7日、厚生労働省が、使用者が現行の労働関係法令等に照らして留意すべき事項を取りまとめました。

いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

 ここでは、特に重要と思われる雇用契約書の記載例について、ほんの一部ですがピックアップしてご紹介します。

【労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方】

 労働者の労働契約の内容に関する理解を深めるためには、シフトにより具体的な労働日、労働時間や始業及び終業時刻を定めることとしている場合で あっても、その基本的な考え方を労働契約においてあらかじめ取り決めてお くことが望まれます。例えば、労働者の希望に応じて以下の事項について、 あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが考えられます。

a. シフトが入る可能性のある最大の日数や時間数
 例 「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など
b. シフトが入る目安の日数や時間数
 例 「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
c. シフトが入る最低限の日数や時間数
 例 「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」 など

トラブル予防のために大切なこと

 大切なことは、シフト制のもつ柔軟性を維持しつつも、シフトの決め方についてあらかじめ労使間で話し合っておくこと。またその結果として、単に「シフト制による」などという曖昧な契約ではなく、できる範囲で上記のように具体的な取り決めをすることで、コロナ禍などでシフトの変動があっても、ある程度はお互いに納得できるような環境を作っておくことだと思います。

まとめ

 以上、シフト制の雇用契約にまつわる問題ついてご説明してきました。

・シフト制には、柔軟に労働日を決められる点で労使双方にメリットがある
・一方で、曖昧な契約内容なのでトラブルに発展するリスクもある(特にコロナ禍などの有事のとき)
・シフト制に伴うトラブル予防のため、厚生労働省が留意事項を発表した
・トラブル予防の意味では、シフトの決め方について、あらかじめ労働契約の基本である労使間の話し合いを持っておくことが重要  

 パート社員を多く採用する業態の企業には、今回公表された留意事項がトラブル予防の参考になると思います。全体で12ページほどのものですから、該当すると思われる会社の方は1度お読みになってみてはいかがでしょうか。

 よくわからない、という箇所があれば、当事務所までお気軽にご相談ください。

【令和4年1月法改正】健康保険の傷病手当金が充実します

2021-12-25

業務外の病気やケガ(私傷病)で会社を休んだとき、健康保険から支給される「傷病手当金」。

休んで給料が支給されない期間、所得補償として、だいたいですが給与の3分の2が支給されるものです。

(なお、仕事中や通勤途中での病気やケガは労災になりますので、傷病手当金は使いません)

最近、転倒による骨折などのケガによるもの以外にも、精神的な疾患(うつ病、自律神経失調症など)によりやむを得ず一時的に休職される従業員に関する傷病手当金申請のご相談が増えています。 今回の法改正は、療養が長期間にわたり、一定期間経過により再発するようなケースにおいては、所得補償をより充実させる方向での改正になります。

法改正の内容~「通算」1年6か月まで支給される

これまでは、傷病手当金の支給開始日から1年6か月経過すると、それ以降は受給できませんでした。

それが、令和4年1月からは、「通算して1年6か月」分、傷病手当金の支給がされることになりました。

これだけ聞くと「何が違うの?」という感じだと思うので、具体例を挙げてご説明します。

【改正前】

たとえば、

令和2年3月4日  傷病手当金の支給が開始

令和2年10月31日 いったん仕事復帰(治癒)

令和3年2月1日  同じ病気ケガが原因で再度欠勤

令和3年7月5日  傷病手当金の支給開始から1年6か月経過

令和3年10月1日 ふたたび仕事復帰(治癒) 

という場合、傷病手当金をもらえるのは令和2年3月4日~令和2年10月31日の242日間と、令和3年2月1日~令和3年7月5日の155日間、合計すると397日分だけでした。

1年6か月経過する令和3年7月5日で打ち切りなので、7月6日~9月30日は支給対象外でした。

【改正後】

それが令和4年1月の法改正後は、以下のようになります。

上の例と、日付をちょうど2年ずらした例で説明します。

令和4年3月4日  傷病手当金の支給が開始

令和4年5月31日 いったん仕事復帰(治癒)

令和5年2月1日  同じ病気ケガが原因で再度欠勤

令和5年7月5日  傷病手当金の支給開始から1年6か月経過

令和5年10月1日 ふたたび仕事復帰(治癒)

この場合、令和4年3月4日から通算1年6か月経過する令和5年9月3日までの日数分、具体的には549日分までは傷病手当金を受給することができます。令和5年7月5日を過ぎても関係ありません。

令和2年3月4日~令和2年10月31日の242日間と、令和3年2月1日~令和3年9月30日の242日間、合計して484日分(<549日)の傷病手当金を受給することができます。受給できる期間が増えたということですね。

まとめ

以上、傷病手当金の改正内容(令和4年1月)についてご説明しました。

最初に述べた通り、精神的疾患での休職事例が増えており、かつ精神的疾患はいったん治癒しても再発しやすいという傾向があります。

会社としては、充実した傷病手当金の申請により当該従業員の所得補償をはかることが望まれます。また、仮に復職できずそのまま退職となった場合も、会社が適切にこのような申請をしてあげていれば、円満な退職につなげやすくなるとも言えます。 当事務所では、傷病手当金の申請代行はもちろんのこと、私傷病休職制度を就業規則に規定したり、実際の休職事例における運用する場合などのご相談をお受けしていますので、お気軽にご相談ください。

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