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通勤1.5時間超で注意すべき建設業許可の「常勤性」
会社の役員や専任技術者のご自宅が営業所から遠く、通勤に片道1時間30分以上かかる。「こんな状況で、本当に建設業許可は取れるのだろうか?」と、不安に思われていませんか。
その直感は、残念ながら的を射ています。通勤時間が片道1.5時間を超えるケースは、建設業許可の審査において慎重な説明と追加資料の準備が求められやすい論点です。
なぜなら、行政の審査担当官は「本当に毎日、この人は営業所に通勤しているのだろうか?」「もしかしたら、名前だけを貸している『名義貸し』ではないか?」という強い疑念を抱くからです。建設業許可では、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者が「本当に毎日その営業所でフルタイムで働いているか(常勤性)」が厳しく審査されます。
もし「常勤性なし」と判断されれば、許可は下りません。一度そのような判断が下されると、後から覆すのは極めて困難になります。
しかし、諦めるのはまだ早いです。通勤時間が長くても、正しい知識と適切な準備さえすれば、許可を取得できる道はあります。この記事では、遠方通勤者の常勤性をどう証明し、名義貸しの疑いを晴らすのか、具体的なステップと注意点を専門家の視点から徹底的に解説します。この記事の全体像については、建設業許可の要件で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。
なぜ通勤時間が厳しく問われるのか?審査の裏側にある意図
そもそも、なぜ行政はこれほどまで通勤時間にこだわるのでしょうか。単なる意地悪で審査を厳しくしているわけではありません。その背景には、建設業法上の許可要件を確認するという重要な目的があります。
建設業許可の要件として、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者は、許可を受けようとする営業所に「常勤」していることが絶対条件とされています。この「常勤」とは、原則として始業時間から終業時間まで、その営業所で勤務している状態を指します。
行政が常勤性を厳しく問う最大の理由は、「名義貸し」という違法行為を防止するためです。名義貸しとは、資格や経験を持つ人が実際には勤務していないにもかかわらず、名前だけを貸して許可を取得させる行為を指します。これは、建設工事の品質や安全性を確保するという建設業法の趣旨に反する重大な違法行為です。

通勤時間が社会通念上、あまりにも長すぎる場合、審査担当官は「毎日この距離を通って、本当に常時勤務できるのか?」と疑問を抱きます。これが、常勤性の実態、ひいては営業所の実態そのものへの疑念につながるのです。彼らは、許可を与えた会社が実態のないペーパーカンパニーではないか、責任者が不在のまま無責任な工事が行われるリスクはないか、という視点で申請書をチェックしています。
つまり、通勤時間の証明は、単なる手続き上の問題ではなく、「私たちの会社は法令を遵守し、責任ある体制で事業を運営しています」という誠実な姿勢を示すための重要なプロセスなのです。建設業許可はバーチャルオフィスで取得できる?専門家が解説する営業所の実態も参考にしてください。
【ケース別】遠方通勤者の常勤性を証明する具体的ステップ
では、具体的にどのようにして遠方からの常勤性を証明すればよいのでしょうか。ここでは、私が実際に扱った事例をもとに、典型的な2つのケースに分けて、有効な証明方法を解説します。ただ書類を提出するのではなく、審査担当官が納得する「客観的な証拠」を揃えることが何よりも重要です。建設業許可の無料相談前に!準備すべき準備資料も参考にしてください。
ケース1:毎日遠距離を通勤している場合
まずは、住民票のある自宅から、毎日1時間30分以上かけて実際に通勤しているケースです。この場合、「本当に毎日通っている」という事実を客観的な証拠で裏付ける必要があります。
最も強力な証明書類となるのが、公共交通機関の定期券のコピーです。特に、1ヶ月や3ヶ月ではなく、6ヶ月定期など長期間のものであればあるほど、「継続的に通勤する意思と実態がある」と判断されやすくなります。
自動車で通勤している場合は、ETCカードの利用明細や、高速道路の領収書などが有効です。これらは、特定の日に特定の区間を走行した動かぬ証拠となります。可能であれば、数ヶ月分をまとめて提出すると、より説得力が増します。
これらの書類に加え、自宅から営業所までの通勤経路と所要時間を明記した「通勤経路図」を補足資料として作成するのも良いでしょう。Googleマップなどのルート検索結果を印刷し、具体的な駅名や道路名、乗り換え時間などを書き加えることで、通勤の現実味をアピールできます。
私が以前担当した案件で、こんなことがありました。営業所は川崎市にあるのですが、専任技術者の候補者の方の住民票が茨城県にあったのです。他に営業所技術者の要件を満たす方がいればよかったのですが、他の技術者の方はいずれも(証明できる)経験年数が10年未満でした。
正直なところ、茨城から川崎への通勤は、審査が非常に厳しくなることが予想される「微妙な案件」でした。しかし、ご本人に詳しくお話を伺うと、実際には電車で1時間40分くらいで毎日通勤されているとのこと。そこで、6ヶ月分の通勤定期券のコピーを申請書類に添付したのです。
結果として、この定期券のコピーが常勤性を説明する重要な資料となり、行政は常勤性を認めてくれ、無事に建設業許可申請は受理されました。客観的な証拠がいかに重要かを示す、象徴的な事例だったと言えます。
ケース2:住民票は実家のまま、近くに部屋を借りている場合
次に、単身赴任などで、住民票は実家に置いたまま、営業所の近くにアパートなどを借りてそこから通勤しているケースです。このパターンは、住民票の住所と実際に住んでいる場所(居所)が異なるため、より丁寧な証明が求められます。
この場合に最も重要なのは、「生活の実態が営業所の近くにある」ことを証明することです。そのための有力な確認資料となるのが、以下の書類です。
- 本人名義の賃貸借契約書のコピー
- アパート宛の公共料金(電気・ガス・水道)の領収書や検針票
- アパート宛に届いた郵便物(消印のあるもの)のコピー
これらの書類は、その場所で継続的に生活していることの客観的な証拠となります。特に、賃貸借契約書は居住の事実を証明する上で欠かせません。

以前、こんなご相談がありました。専任技術者になろうとする方の住民票を取得してもらったところ、なんと住所が福岡市になっていました。会社は川崎市にありますから、これでは常勤性が認められるはずもありません。事情を詳しくお聞きすると、ご家族は福岡に残し、ご本人は川崎市内に借りたアパートから単身で通勤しているとのことでした。
この状況を説明するために、私たちは以下の3点を準備しました。
- ご本人名義のアパートの賃貸借契約書のコピーを添付する
- そのアパート宛に届いた公共料金の請求書のコピーを添付する
- 営業所技術者等証明書(様式第8号)の住所欄に、住民票上の住所と実際の居所の両方を併記する
(記載例)
(住民票の住所)福岡市〇〇町〇ー〇
(実際の居所)川崎市〇〇町〇ー〇
これらの書類によって「生活の拠点は川崎にあり、日々ここから通勤している」という実態を丁寧に説明した結果、審査をクリアし、無事に許可を取得することができました。たとえ住民票が遠方にあっても、生活の実態を証明できれば、常勤性が認められる可能性があります。
これらのケースのように、常勤性の証明には定型的な書類だけでなく、個々の状況に応じた戦略的な資料準備が不可欠です。単に住民票を出すだけでは通らず、通勤定期券のコピー、ETCの利用明細、通勤経路図など、「本当に毎日通っている客観的な証拠」を自力で集めて役所を納得させることの難しさを解説します。どのような資料を準備すべきか、ぜひ一度ご相談ください。
証明が難しい場合に検討すべき対応
「定期券もなければ、賃貸契約書もない…」
様々な事情で、これまでにご紹介したような客観的な証明書類を揃えるのが難しい場合もあるかもしれません。しかし、そこで許可取得を諦める必要はありません。専門家として、次なる現実的な選択肢をいくつかご提案します。
選択肢1:営業所の近くに転居してもらう
最も確実かつ根本的な解決策は、役員や専任技術者本人に、営業所の近くへ住民票ごと引っ越してもらうことです。通勤時間が社会通念上の範囲内(一般的には片道1時間〜1時間半以内)になれば、常勤性に関する疑念は根本から解消されます。もちろん、ご本人の生活環境が大きく変わるため、簡単な決断ではないかもしれません。しかし、会社の将来にとって建設業許可が不可欠なのであれば、最も検討すべき選択肢と言えるでしょう。
選択肢2:別の従業員を責任者・技術者にする
もし社内に、常勤性の要件を問題なく満たせる別の従業員がいるのであれば、その方を経営業務の管理責任者や専任技術者として立てることも一つの方法です。例えば、営業所の近くに住んでおり、かつ必要な経営経験や資格・実務経験をお持ちの方がいれば、その方に就任してもらうことで、遠方通勤の問題を回避できます。この場合、役員変更の登記や社内体制の見直しが必要になる可能性もあります。
どの選択肢が最適かは、会社の状況や関係者の協力度合いによって異なります。自己判断で進める前に、それぞれのメリット・デメリットを慎重に比較検討することが重要です。
申請前に専門家へ相談を。一度否認された場合の再申請リスク
遠方通勤者の常勤性証明は、建設業許可申請の中でも特に難易度が高い論点の一つです。ここで最もお伝えしたいのは、「自己判断で安易に申請に踏み切らないでほしい」ということです。
「役所で一度『常勤性なし』と判断されると、覆すのは非常に困難です」と警告します。万が一、準備不足のまま申請してしまい、行政から一度「常勤性なし」と判断されてしまうと、その記録が残ってしまいます。そうなると、後から追加の資料を提出したり、体制を立て直して再申請したりしても、過去の否認経緯を踏まえて確認され、審査のハードルが格段に上がってしまうのです。その判断を覆すのは、極めて困難と言わざるを得ません。
この問題は、単に書類を集めて提出すればよいというものではありません。申請書を窓口に提出する前に、「この書類で本当に常勤性を証明しきれるか」「もし突っ込まれたら、どう説明するか」「そもそも、この人で申請すべきか」といった、専門家としての戦略的な判断が何よりも重要になります。
不確かな状況でリスクを冒す前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。リスクを踏まえた現実的な申請方針を、一緒に検討いたします。ご相談から許可取得までの流れもご確認いただけます。
川崎市で建設業許可のお悩みは「いがり綜合事務所」へ
当事務所は、司法書士・行政書士・社会保険労務士の3つの国家資格を保有しており、単なる許認可手続きの代行に留まりません。建設業許可に関連して発生する会社設立や役員変更の登記、従業員の社会保険手続きといった法務・労務の問題まで、すべてワンストップで対応することが可能です。
特に、川崎市で建設業許認可を中心に取り扱う行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所として、地域の特性や行政の傾向を熟知した、きめ細やかなサポートを提供しています。複雑でデリケートな常勤性の問題も、豊富な経験とノウハウで乗り越えるお手伝いをいたします。当事務所の対応エリアもご確認ください。
「うちのケースでも許可は取れるだろうか?」
個別事情を確認したうえで、申請方針をご提案いたします。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
