このページの目次
建設業許可の電子申請になぜ「gBizIDプライム」が必要なのか?
「役所に行かなくても、いつでも申請できるなら便利そうだ」
建設業許可の更新や新規申請を控える事業者様から、電子申請についてご相談をいただく機会が増えてきました。
2023年1月から、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)の運用がスタートし、これまで窓口に出向いて行っていた手続きが、原則24時間365日、事務所のパソコンから行えるようになりました。これは、行政手続き全体のデジタル化という大きな流れの一環です。
ただし、この電子申請を利用するには、事前に準備しておくべきアカウントがあります。それが、今回テーマとなる「gBizIDプライム」アカウントの取得です。
gBizIDプライムは、法人代表者や個人事業主本人であることを確認した上で発行される、行政手続き用の厳格な認証アカウントです。紙申請における実印や本人確認書類に近い役割を、オンライン上で担うものと考えると分かりやすいでしょう。
従来の紙申請では、申請書類を作成し、必要な添付書類をそろえて窓口や郵送で提出していました。現在は、建設業許可申請等の多くの様式で押印が不要とされていますが、電子申請では、申請者を確認するための認証手段としてgBizIDプライムを利用します。電子申請では、申請者本人を確認するための認証手段としてgBizIDプライムを利用する、と考えると分かりやすいでしょう。
窓口での対面審査の手間や待ち時間を考えると、電子申請のメリットは大きいです。この記事では、その第一歩となるgBizIDプライムの取得方法を、専門用語が苦手な方にもご理解いただけるよう、丁寧にご説明していきますね。
gBizIDとは?3種類のアカウントの違いを理解しよう
まず、「gBizID(ジービズアイディー)」そのものについて、簡単にご説明します。
gBizIDとは、ひとつのIDとパスワードで、様々な行政サービスにログインできる共通の認証システムです。これさえあれば、補助金の電子申請(Jグランツ)や社会保険の手続き(e-Gov)など、対応する多くの行政手続きを同じIDで利用できます。
このgBizIDには、利用目的や権限に応じて3つの種類のアカウントがあります。建設業許可の電子申請でどのIDが必要になるのか、違いをしっかり押さえておきましょう。

| アカウント種類 | gBizIDプライム | gBizIDメンバー | gBizIDエントリー |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 法人代表者・個人事業主 | 従業員 | 法人・個人事業主 |
| 作成方法 | オンライン申請 or 書類郵送申請 | プライムアカウント所持者による招待 | オンラインで即時作成可能 |
| 建設業許可(JCIP)での利用 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 特徴 | 本人確認を経て作成する代表者・個人事業主向けのアカウント。各種手続きの起点となる。 | プライムの許可範囲内でサービスを利用。 | 手軽だが、利用できるサービスが限定的。 |
表を見ていただくと分かる通り、建設業許可の電子申請(JCIP)で利用できるのは「プライム」と「メンバー」の2つだけです。「エントリー」では申請ができませんのでご注意ください。
建設業許可申請で必要なのは「gBizIDプライム」
「メンバーでも申請できるなら、そっちでも良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、建設業許可の電子申請を始めるにあたって、最初に必ず取得しなければならないのは「gBizIDプライム」です。
なぜなら、従業員用の「メンバー」アカウントは、「プライム」アカウントを持つ代表者や個人事業主本人から招待されなければ作成できない仕組みだからです。また、後ほどご説明する行政書士への代理申請の委任も、「プライム」アカウントがなければ設定できません。
つまり、gBizIDプライムは、メンバーアカウントの作成や委任設定を行うための基礎となるアカウントです。建設業許可の要件を満たし、電子申請をお考えなら、まずは代表者様(または個人事業主様ご本人)のgBizIDプライムを取得することから始めましょう。
あなたはどっち?gBizIDプライムの最適な取得方法診断チャート
gBizIDプライムを取得する方法は、大きく分けて2つあります。
- オンライン申請:マイナンバーカードとスマートフォンを使って、最短即日で発行する方法
- 書類郵送申請:申請書と印鑑証明書を郵送し、1〜2週間程度で発行する方法
「どちらの方法で進めれば良いのだろう?」と迷われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、ご自身の状況に合った最適な方法がわかる、簡単な診断チャートをご用意しました。いくつかの質問に「はい/いいえ」で答えてみてください。

いかがでしたでしょうか?
もし、代表者様のマイナンバーカードがあり、スマホでの読み取りも可能であれば、スピーディーに進めやすい「オンライン申請」を検討しやすいでしょう。一方で、マイナンバーカードをお持ちでない場合や、スマホ操作に不安がある場合は、従来通りの「書類郵送申請」を選ぶことになります。ご自身の状況に合わせて、次の解説へお進みください。
【最短即日】オンライン申請でのgBizIDプライム取得手順
診断チャートで「オンライン申請」がおすすめと出た方へ、具体的な手順をご説明します。審査がスムーズに進めば、申請したその日のうちにアカウントが発行されることもあり、非常にスピーディーです。
【オンライン申請で必要なもの】
- 代表者ご本人のマイナンバーカード(署名用電子証明書の暗証番号が必要です)
- マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン
- 専用アプリ「GビズID」(事前にインストールしておきましょう)
- 連絡用のメールアドレス
準備ができたら、以下のステップで進めていきましょう。
- GビズID公式サイトへアクセスし、申請ページへ進む
公式サイトの「gBizIDプライムを作成」ボタンから手続きを開始します。 - 必要情報を入力する
画面の指示に従い、法人情報(法人番号、所在地など)や代表者情報、連絡先メールアドレスなどを入力します。 - スマホアプリでマイナンバーカードを読み取る
入力が完了すると、申請用のQRコードが表示されます。スマートフォンの「GビズID」アプリを起動し、このQRコードを読み取ります。その後、アプリの指示に従ってマイナンバーカードの署名用電子証明書の暗証番号(6〜16桁の英数字)を入力し、カードをスマホにかざして電子署名を行います。 - 審査完了メールの受信とパスワード設定
マイナンバーカードの読み取り後、パソコン画面で申請内容を確認して申請します。申請内容に問題がなければ、パスワード設定などの案内に従って手続きを進め、gBizIDプライムアカウントとして利用できるようになります。
オンライン申請でつまずきやすいのは、マイナンバーカードの暗証番号を忘れてしまうケースです。もし忘れてしまった場合や、複数回間違えてロックがかかってしまった場合は、お住まいの市区町村の窓口で再設定の手続きが必要になります。
【カード不要】書類郵送申請でのgBizIDプライム取得手順
「マイナンバーカードがない」「スマホ操作は苦手」という方は、こちらの書類郵送申請で手続きを進めましょう。オンライン申請に比べると時間はかかりますが、着実にアカウントを取得できます。
【書類郵送申請で必要なもの】
- GビズIDプライム登録申請書
- 法人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内の原本)※個人事業主の場合は本人の印鑑証明書
- 登録する実印
- 連絡用のメールアドレス
- SMS(ショートメッセージ)を受信できるスマートフォンまたは携帯電話
書類郵送申請のステップは以下の通りです。
- 申請書作成サイトで情報入力・印刷
GビズID公式サイトの申請書作成ページで、法人情報や代表者情報などを入力します。すべて入力し終えたら、内容をよく確認して申請書を印刷してください。 - 申請書に実印を押印する
印刷した申請書の所定の箇所に、印鑑証明書と同じ実印を鮮明に押印します。かすれたり、欠けたりしないよう、慎重に押印しましょう。 - 申請書と印鑑証明書を運用センターへ郵送
押印済みの申請書と、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書(原本)を同封し、GビズID運用センターへ郵送します。 - 審査完了メールの受信とパスワード設定
書類がセンターに到着後、通常1〜2週間ほどで審査が行われます(最大1か月程度かかる場合もあります)。不備がなければ、登録したメールアドレスに審査完了のメールが届きます。メール内のURLからパスワードを設定すると、手続きは完了です。
書類申請で最も注意したいのが、申請書の押印と印鑑証明書の印影が一致しないという不備です。少しでもかすれていたり、違う印鑑を押してしまったりすると、差し戻しとなり、さらに時間がかかってしまいます。郵送前に、印影が完全に一致しているか、印鑑証明書の有効期限は切れていないか、必ず最終確認をしてください。
gBizIDプライム取得でよくある失敗談と専門家からのアドバイス
先日、ある建設会社の社長様からこんなお話を聞きました。
「建設業許可の電子申請をしようと思ってネットで調べたら、まずgBizIDプライムが必要らしい。でも、取得方法を見たら会社の印鑑証明書を取ってきて、書類を書いて…と書いてあってね。『面倒だな、更新は5年に1回だし、今まで通り窓口で並べばいいや』と思って、その時点で諦めてしまったんだよ」
このお話、とても「もったいない」と感じました。実は、この社長様のように、書類郵送申請の手間を考えて電子申請自体を諦めてしまうケースは少なくないのです。
私はその社長様にこうお伝えしました。
「社長、今は代表のマイナンバーカードとスマホさえあれば、印鑑証明書も郵送も不要で、最短即日でアカウントが作れるんですよ」
この言葉に、社長はとても驚かれていました。そこで、その場で一緒にオンライン申請の手続きをお手伝いしたところ、30分もかからずにgBizIDプライムの申請が完了しました。その後、無事にアカウントの取得まで進み、「これなら簡単だね。次回の更新の時は電子申請を手伝ってよ」と、前向きなお言葉をいただくことができました。
この事例のように、多くの方が「行政手続き=面倒で時間がかかる」という先入観をお持ちですが、デジタル化によって、一定の条件を満たす場合には手続きの負担を軽減できるようになっています。特にオンライン申請は、経営業務の管理責任者や専任技術者の確認資料を集める手間と比べても、はるかに手軽です。もしマイナンバーカードをお持ちなら、ぜひオンライン申請に挑戦してみてください。
行政書士に代理申請を依頼する場合の注意点
「手続きが難しそうだから、専門家である行政書士に全部任せたい」
そうお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここで非常に重要な注意点があります。
それは、gBizIDプライムアカウントの取得そのものを、行政書士が代行することはできない、という点です。gBizIDプライムは、前述の通り「実印」と同じ役割を持つ、極めて重要なデジタル上の身分証明です。そのため、必ず法人代表者様ご本人(または個人事業主様ご本人)が手続きを行う必要があります。
では、行政書士は電子申請においてどのように関わるのでしょうか?正しい流れは以下の通りです。
- 事業者様ご自身でgBizIDプライムを取得する
まずは、この記事で解説した方法で、代表者様がgBizIDプライムのアカウントを取得します。 - 取得したアカウントから行政書士へ「委任」の設定を行う
GビズIDの委任機能を利用して、事業者と行政書士との委任関係をシステム上で登録します。委任依頼は、現在では受任者である行政書士側から行うこともできます。 - 行政書士が代理でJCIPの申請操作を行う
委任設定が完了すると、行政書士は事業者様の代理人としてJCIPにログインし、申請書類の作成や送信といった操作を行えるようになります。
絶対にやってはいけないのは、取得したIDやパスワードを行政書士に教えてしまうことです。これはgBizIDの利用規約で禁止されているだけでなく、会社の重要な「実印」を他人に預けるのと同じで、セキュリティ上、非常に危険な行為です。
行政書士に依頼する場合は、この「委任」という正規の方法で手続きを進めることが基本です。電子申請のサポートを依頼する際は、この点を理解している専門家かどうかを見極めることも大切です。
まとめ:gBizIDプライムを取得して電子申請へ進もう
今回は、建設業許可の電子申請に不可欠な「gBizIDプライム」について、その必要性から具体的な取得方法までを解説しました。
最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 建設業許可の電子申請(JCIP)では、gBizIDプライムが「実印」の代わりとして必須。
- 取得方法は、マイナンバーカードがあれば便利な「オンライン申請」と、従来通りの「書類郵送申請」の2種類がある。
- オンライン申請なら最短即日、書類郵送申請でも1〜2週間で取得可能。
- 行政書士に申請を依頼する場合でも、アカウント取得は事業者様自身で行い、「委任」機能を使うのが正しいルール。
gBizIDプライムの取得は、便利な電子申請を利用するための第一歩に過ぎません。しかし、この最初のステップでつまずいてしまう方が多いのも事実です。この記事が、皆様の不安を解消し、スムーズな電子申請への移行を後押しできれば幸いです。
もちろん、gBizIDプライムを取得した後のJCIPでの申請手続きや、委任設定の方法など、ご不明な点が出てくることもあるかと思います。そのような時は、私たち専門家がサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。当事務所の料金体系はこちらでご確認いただけます。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
