経審の若手技術者加点とは?神奈川県の最新基準を専門家が解説

なぜ、若手技術者の確保が経審で重要視されるのか?

「ウチも若い人を採用したんだけど、これで経審の点数は上がるのかな?」
神奈川県で建設業を営む経営者様から、このようなご相談をいただく機会が年々増えています。

ご存知の通り、建設業界は今、深刻な「担い手不足」という課題に直面しています。この状況を打開し、業界全体の持続可能性を高めるため、国は若手人材の確保・育成を強力に後押ししています。この大きな流れの中で、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受審する経営事項審査(経審)もまた、その評価軸を大きく変化させているのです。

現在の経審は、工事実績や財務状況だけでなく、企業の社会性等も評価する仕組みです。企業の社会性や将来性、特に次世代の担い手を育てる姿勢が厳しく問われる場へと変わりました。その象徴とも言えるのが、今回テーマとする「若手技術者・若年技術者の雇用」に対する加点制度なのです。なお、若年技術職員を評価する制度自体は平成27年4月から導入されており、令和8年7月の経審改正でも引き続き評価項目として存続しています。

この記事では、経審の評点を少しでも上げたい、そして会社の未来を担う人材を育てたいと考える神奈川県の経営者様やご担当者様のために、若手技術者加点の具体的な条件、神奈川県での必要書類、そして戦略的な活用法を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。

参照:国土交通省「令和6年版 国土交通白書 第1節 1 直面する課題」

また、建設業界の担い手育成を支援する制度として、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録も重要です。

経審の若手技術者加点の全体像を理解する

まず、この加点制度が経審の中でどのような位置づけにあるのかを把握しましょう。若手技術者の雇用に関する評価は、評価項目「その他の審査項目(社会性等)」、通称「W点」の中で行われます。

そして、評価の軸は大きく分けて2つあります。

  1. 若年技術職員の継続的な育成・確保
  2. 新規若年技術職員の育成・確保

これは、今いる若手を大切に定着させているか(継続)、そして新たに業界の担い手を迎え入れているか(新規)という、2つの側面から企業の姿勢を評価しようという意図の表れです。もちろん、両方の条件を満たすことで、W点において最大2点の加点を得ることが可能になります。まずは審査基準日を意識しながら、それぞれの具体的な要件を見ていきましょう。

評価①:若年技術職員の継続的な育成・確保

こちらは、企業が若手人材を継続的に雇用し、定着させているかを評価する項目です。具体的な条件は以下の通りです。

審査基準日において、満35歳未満の技術職員数が、技術職員全体の15%以上であること。

この条件を満たすと、W点において1点加点されます。

計算の基礎となる「技術職員数」とは、経審で提出する「技術職員名簿」に記載されている全人数を指します。例えば、技術職員名簿に記載の技術者が合計10名いる場合、そのうち満35歳未満の方が2名(20%)いれば、この条件をクリアできる計算になります。

日頃から若手が働きやすい環境を整え、定着率を高める努力が、経審の評価に直接結びつくわけです。技術者の継続的な在籍は、企業の安定経営の証でもあるのです。

経審における若手技術者加点の2つの評価軸「継続的な育成・確保」と「新規の育成・確保」の条件と加点内容を比較した図解。

評価②:新規若年技術職員の育成・確保

こちらは、企業が新たに若手を業界に迎え入れ、育成しようとする積極的な姿勢を評価する項目です。条件を見てみましょう。

審査基準日までの1年間に、新たに技術職員名簿に記載された満35歳未満の技術職員数が、技術職員全体の1%以上であること。

この条件を満たすと、こちらもW点において1点加点されます。

ここでも計算の基礎は「技術職員名簿」の全人数です。例えば、技術職員が合計50名の会社であれば、審査基準日までの1年間に満35歳未満の技術者を1名(2%)新たに名簿に記載できれば、条件達成となります。

業界全体で新しい担い手を育てていこう、という国のメッセージが色濃く反映された評価項目と言えるでしょう。

【最重要】若年技術職員として評価されるための条件

さて、ここからが非常に重要なポイントです。「若い従業員を雇えば、それで加点される」と考えていると、要件を誤解したまま申請準備を進めてしまう可能性があります。実は、加点の対象となる「若年技術者」と認められるには、4つの厳しい条件をすべてクリアしなければなりません。

先日も、ある空調工事業の社長様からこんなご相談がありました。
「猪狩さん、うちも若い職人を一人採用したんだよ。これで経審の点、上がるよね?」
期待に満ちた表情の社長様に、私はこうお尋ねしました。
「素晴らしいですね!その方は、何か資格をお持ちですか?」
「いやいや、まだ若いからね。これから現場で経験を積んでいくんだよ」

この社長様のお気持ちは痛いほど分かります。しかし、私は心苦しくもお伝えしなければなりませんでした。
「…社長、申し訳ありません。その場合ですと、残念ながらすぐには加点の対象にならないんです」

なぜ、この若手社員は加点対象にならないのでしょうか。その理由は、以下の3つの条件にあります。

  1. 年齢:審査基準日において満35歳未満であること。
  2. 名簿掲載:経審の「技術職員名簿」に名前が載っていること。
  3. 新規性(新規雇用加点の場合):審査基準日までの1年間に、新たにその会社で技術職員として名簿に記載されたこと。
  4. 常勤・雇用関係:審査基準日時点で常勤であり、審査基準日から遡って6か月を超える恒常的な雇用関係があること

この社長様のケースで問題となったのが、2番目の「名簿掲載」です。
技術職員名簿に名前を載せるためには、単に社員であるだけでは不十分で、国が定めた技術者としての要件(国家資格の保有、一定期間の実務経験登録基幹技能者、またはCCUSの能力評価レベル3・4などを満たす必要があります。つまり、資格も実務経験もない未経験の若者を採用しただけでは、その時点では「技術職員」とは認められず、加点の対象にもならないのです。より詳しい専任技術者の実務経験証明もご覧ください。

この現実は、多くの経営者様にとって厳しいものかもしれません。しかし、がっかりする必要はありません。ここからは、採用後の育成計画と経審上の要件を整理して考えることが重要です。次の章では、この「採用したばかりの資格のない若手」を、いかにして会社の宝であり、経審の加点対象となる人材へと育てていくか、その具体的なロードマップをご提案します。

資格のない若手を採用した場合の加点獲得ロードマップ

「採用=即加点」ではないという現実を踏まえ、ここからは中長期的な視点に立った戦略、つまり人材投資と企業成長を結びつける育成プランを考えていきましょう。これは単なる経審対策ではなく、会社の未来を創るための重要な経営戦略です。

ステップ1:キャリアプランの策定と資格取得支援

最初のステップは、採用した若手社員本人と向き合うことから始まります。数年後、彼らがどのような技術者になっていたいのか、会社としてどのような役割を期待しているのか、具体的なキャリアプランを共有しましょう。その上で、技術職員として認められるための目標を設定します。

例えば、「3年後に2級建築施工管理技士の資格を取得する」といった具体的な目標を立て、会社としてその挑戦を全面的にバックアップする体制を整えるのです。

  • 講習会や受験費用の補助
  • 試験前の学習時間の確保(業務調整など)
  • 社内の先輩技術者によるOJTや勉強会の実施

こうした制度を設けることで、社員のモチベーションは大きく向上します。

建設会社のオフィスで、ベテラン技術者からマンツーマンで指導を受ける若手社員。企業のOJTや技術承継の様子を表現。

ステップ2:実務経験証明のための記録と管理

資格取得には時間がかかります。しかし、その間も時間は無駄にはできません。将来、資格ではなく「実務経験」で技術者要件を満たす可能性も視野に入れ、日々の業務記録をきちんと管理しておくことが極めて重要になります。

具体的には、以下のような情報を工事ごとに記録し、いつでも証明書類として提出できる状態にしておくのです。

  • 工事名、工事場所、工期
  • 請負金額
  • 具体的な担当業務内容、役職

こうした記録と併せてCCUSに就業履歴を蓄積しておくことは、若手社員がどの現場で経験を積んできたかを継続的に把握するうえでも有効です。なお、建設業許可や経審における実務経験の証明については、行政庁が指定する確認資料を別途準備する必要があります。

経審の申請(行政書士業務)と、日々の労務管理や記録(社会保険労務士業務)は、このように密接に繋がっています。一貫した視点で管理体制を構築することが、将来の加点獲得に向けた準備として有効です。

【神奈川県版】若年技術者加点の申請に必要な証明書類

次に、神奈川県での申請に必要な書類を確認します。神奈川県で若年技術者加点を申請する際に、具体的にどのような書類が必要になるのか、県の「経営事項審査の手引き」に基づいて解説します。書類の不備は審査の遅れや、最悪の場合加点が認められない事態にも繋がりかねませんので、慎重に準備を進めましょう。

主に必要となるのは、以下の書類です。

書類名証明する内容準備のポイント
技術職員としての資格確認資料加点対象者を含む、全技術職員の情報資格証明書、実務経験関係資料、登録基幹技能者・能力評価結果通知書等、該当する区分に応じた資料。
年齢を証明する書類対象者が満35歳未満であること社会保険の標準報酬決定通知書の写し、資格確認書の写しなど、公的機関が発行した生年月日を確認できる資料が必要です。
常勤性を証明する書類対象者が常勤の従業員であること社会保険の標準報酬決定通知書、住民税の特別徴収税額通知書の写し、礎届提出後に雇用した場合の社会保険資格取得確認通知書など

特に注意したいのが、「常勤性」の証明です。審査基準日時点で常勤であることに加え、審査基準日から遡って6ヶ月を超える恒常的な雇用関係があることが求められます。また、書類に記載された氏名や生年月日が、他の提出書類と完全に一致しているかどうかも、厳しくチェックされるポイントです。

こうした書類を一つひとつ正確に揃えるのは、多忙な経営者様やご担当者様にとっては大きな負担となり得ます。専門家にご相談いただくことで、書類不備のリスクを抑えながら申請準備を進めやすくなります。

まとめ:若手の育成は、未来への投資であり重要な経審対策

ここまで見てきたように、経審における若手技術者加点制度は、単なる評点アップのためのテクニックではありません。それは、建設業界の未来を担う人材をいかに育て、業界全体を活性化させていくかという、国からの強いメッセージが込められた制度なのです。

資格のない若手を採用し、一人前の技術者へと育成する道のりは、決して平坦ではないかもしれません。しかし、そのプロセスは、経審の点数を上げるだけでなく、技術の承継、組織の活性化、そして企業の持続的な成長そのものに繋がります。そのため、若手育成は中長期的な人材投資として位置づけることができます。

目先の1点、2点を追い求めるだけでなく、この制度をきっかけに、自社の人材育成戦略を根本から見直してみてはいかがでしょうか。それは、数年後、中長期的には、経審対策だけでなく、会社の技術力や採用力の向上にもつながる可能性があります。建設業の事業拡大においても、人材は核となる資産です。

経審対策、助成金の活用、日々の労務管理、そして人材育成計画の策定。これらはすべて、密接に絡み合っています。当事務所では、司法書士・行政書士・社会保険労務士の3つの視点から、これらの課題をワンストップでサポートすることが可能です。どんな些細なことでも構いません。「ウチの場合はどうだろう?」と思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。共に、会社の未来を築くお手伝いができれば幸いです。

 

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0447426194 問い合わせバナー