管工事に消防施設工事を追加するメリットと許可要件を解説

Man in a light jacket smiling while reading a tablet in a cluttered engineering office surrounded by plans and files.

「ついでにこれも」その配管工事、消防施設工事では?

「いつもの配管工事、ありがとうございます。ついでに、このスプリンクラーの配管もお願いできますか?

空調や給排水設備を手がける管工事業者様なら、元請けからこんな風に声をかけられた経験が一度はあるかもしれません。普段の配管作業の延長線上にあるため、つい「分かりました」と引き受けてしまいがちです。しかし、その「ついで」の工事が、建設業許可上は別業種の工事に該当する可能性があります。

現場では一連の作業に見えても、建設業法上、一般的な配管工事は「管工事」、スプリンクラーや屋内消火栓などの消火設備の設置は「消防施設工事」と、明確に区別されています。もし消防施設工事の許可なくこれらの工事を請け負ってしまうと、たとえ軽微な工事に該当しない規模であれば、意図せず法令違反を犯してしまうことになりかねません。

「知らなかった」では済まされないコンプライアンス上の問題は、経営者様にとって重要なコンプライアンス上の課題です。しかし、この状況は裏を返せば、大きなビジネスチャンスの始まりでもあります。

この記事では、管工事の許可を持つ事業者様が消防施設工事の業種を追加することで、どのような事業上のメリットがあるのか、そしてそのためにクリアすべき許可要件、特に「専任技術者」のポイントについて、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。

管工事と消防施設工事。セット取得で生まれる3つのメリット

管工事と消防施設工事、この2つの許可を併せ持つことは、単に「できる工事が増える」というだけではありません。会社の競争力を高め、安定した経営基盤を築くための、経営上の有効な選択肢といえます。ここでは、セット取得によって生まれる具体的な3つのメリットをご紹介します。

管工事に消防施設工事を追加する3つのメリットを示した図解。売上向上、信頼向上、リスク回避のアイコンが並んでいる。

メリット1:工事一式をまとめて受注でき、売上が向上する

「配管部分はA社さんにお願いして、スプリンクラーヘッドの設置は許可を持っているB社さんに…」

これまでは、このように工事が分割発注され、受注機会を十分に取り込めなかったケースもあるかもしれません。消防施設工事の許可があれば、これまで他社に流れていた利益を自社で確保できるようになります。空調・給排水設備から消火設備まで、関連工事一式をまとめて元請けとして受注できるため、一件あたりの単価と利益率の大幅な向上が期待できるでしょう。

元請けから依頼される関連工事を継続的に受注できれば、消防施設工事が新たな事業分野として定着する可能性があります。ビジネスチャンスを逃さないためにも、建設業許可の取得はスピーディーに進めることが重要です。

メリット2:元請からの信頼が高まり、継続的な受注につながる

元請け企業の担当者の立場になって考えてみてください。複数の業者に分離発注する場合、それぞれの業者との契約、工程調整、現場での指示など、手間と時間がかかります。また、何かトラブルがあった際の責任の所在が曖昧になりがちです。

もし、管工事も消防施設工事も一手に引き受けてくれる業者がいればどうでしょうか。発注の手間は一度で済み、業者間の調整も不要、責任の所在も明確です。元請けにとって、これほど頼りになるパートナーはいません。

2つの許可を併せ持つことは、他社にはない強力なアピールポイントとなります。結果として、特命での受注や継続的な発注が増え、価格競争に巻き込まれることなく、安定した経営基盤を築くことにつながるのです。この信頼性の向上も、建設業許可を取得する実務上の価値の一つといえるでしょう。

メリット3:コンプライアンスを遵守し、経営リスクを回避できる

事業拡大のメリットだけでなく、法令遵守により経営リスクを回避できる点も重要です。

前述の通り、無許可で消防施設工事を請け負うことは建設業法違反となります。万が一、発覚すれば営業停止や許可の取消しといった監督処分、罰金などの刑事罰が科される可能性があります。そうなれば、会社の信用は失墜し、事業の継続すら危うくなるでしょう。

特に、500万円未満だから許可は不要と安易に判断するのは危険です。消費税の扱いや材料費の計算方法によっては、気づかぬうちに無許可営業とみなされるケースも少なくありません。消防施設工事の業種追加は、こうした「知らなかった」では済まされないリスクから会社を守り、法令違反のリスクを低減するための重要な対応策となります。

【事例紹介】消防設備士の資格を活かし、スムーズに業種追加へ

ここで、当事務所が実際にお手伝いさせていただいた事例をご紹介します。

川崎市川崎区 A社様のケース

管工事の許可をお持ちのA社様から、「最近、元請けからスプリンクラーや消火栓設備の工事も一緒にやってほしい、と頼まれることが本当に増えてきて…。このままだとまずいと思い、消防施設工事の業種追加を検討しているんです」というご相談をいただきました。

お話を伺うと、幸いにもA社には消防設備士の資格を持つ技術者様が在籍されていました。この方が専任技術者の要件を満たせる可能性が非常に高かったため、私たちがその証明をサポート。結果として、非常にスムーズに消防施設工事の業種追加申請を代行させていただき、A社様は大きなビジネスチャンスを掴むことができました。

このように、社内の資格者や過去の実務経験が、業種追加の要件確認において重要となるケースは少なくありません。自社だけで判断が難しい場合は、まず専門家に相談して確認することが有効です。

業種追加で重要となる「専任技術者」。兼任の条件を解説

ここからは、業種追加で確認すべき「許可要件」について解説します。特に経営者様が悩まれるのが、「専任技術者」の要件でしょう。建設業許可では、営業所ごとにその業種の専門家である専任技術者を置くことが義務付けられています。

では、「一人の技術者が、管工事と消防施設工事の両方の専任技術者を兼ねることはできるのか?」

結論から申し上げますと、一定の条件を満たせば可能です。これにより、新たに技術者を採用することなく、現在の人員で業種追加ができる可能性があります。そのための具体的な条件を、ケース別に見ていきましょう。

管工事と消防施設工事の専任技術者を兼任するための2つのケース。資格で兼任する場合と実務経験で兼任する場合の違いを比較した図。

ケース1:資格で要件を満たす場合

資格を使って専任技術者の要件を満たすのが、最も証明しやすく確実な方法です。29種類ある建設業の業種ごとに、認められる国家資格などが定められています。

業種認められる主な国家資格
管工事・1級/2級 管工事施工管理技士・技術士(機械「流体工学」または「熱工学」/総合技術監理)・技能検定(建築板金、冷凍空気調和機器施工など)
消防施設工事・甲種/乙種 消防設備士
専任技術者(一般建設業)の資格要件例

例えば、1級管工事施工管理技士と甲種消防設備士の両方の資格を持つ技術者がいれば、その方が一人で両方の業種の専任技術者になることができます。

また、どちらか一方の資格しか持っていない場合でも、もう一方の業種について後述する「実務経験」の要件を満たすことで、兼任が認められるケースもあります。

ケース2:実務経験で要件を満たす場合

専任技術者になるための国家資格がない場合でも、10年以上の実務経験を証明することで要件を満たすことができます。ただし、管工事と消防施設工事の両方を実務経験で証明しようとすると、ハードルは一気に上がります。

原則として、それぞれの業種で10年ずつ、つまり単純計算で合計20年分の経験が必要になる可能性があります。さらに、ここには大きな注意点があります。

それは、消防法との関連です。スプリンクラー設備などの消防用設備等については、消防法令上、消防設備士でなければ行えない工事があります。ただし、電源・水源・配管部分など一部の扱いは設備の種類や工事内容によって異なるため、消防法令上の資格要件と建設業許可上の業種区分を分けて確認する必要があります。そのため、無資格者のまま「消防施設工事の実務経験を積んできた」と主張しても、行政庁から「その工事はそもそも法令に則って行われたものですか?」と厳しく問われ、経験として認められないケースが非常に多いのです。

契約書や注文書、請求書といった書類で経験を証明する手続きも複雑です。より詳しい証明方法については、「専任技術者の実務経験を10年分証明する方法」で解説していますので、あわせてご覧ください。

【要注意】工事内容の判断は専門家でも難しい

「この配管は、スプリンクラーにつながっているから消防施設工事。あちらの配管は給水管だから管工事」

このように、現場で行う作業は似ていても、その配管が何の目的で設置されるかによって、建設業法上の工事区分は変わってきます。この判断は非常に微妙で、専門家でなければ正確に見分けるのが難しいグレーゾーンが存在します。

もしこの判断を誤り、管工事のつもりで請け負った工事が実質的に消防施設工事であった場合、意図せず法令違反となってしまうリスクがあるのです。許可申請の準備や日々のコンプライアンス管理では、工事内容に応じた慎重な確認が重要です。

参照:国土交通省「監理技術者等の専任義務の合理化・営業所における専任技術者の兼務の明確化等について」

自社は要件を満たせる?まずは専門家による無料診断を

ここまで読んでいただき、「うちの会社のあの技術者なら、兼任の要件を満たせるかもしれない」「この工事経験は、実務経験として証明に使えるだろうか?」といった、具体的な疑問や期待が湧いてきたのではないでしょうか。

しかし、これらの疑問に正確にお答えするには、個別の状況を詳しくヒアリングさせていただく必要があります。過去の工事契約書や技術者様の資格証などを拝見し、総合的に判断しなくてはなりません。ご自身で「たぶん大丈夫だろう」と判断して手続きを進めた結果、申請が受理されず、時間と労力が無駄になってしまうケースも少なくないのです。

そこで当事務所では、業種追加が可能かどうかを無料で診断するサービスを行っております。ご相談の際に完璧な資料を揃える必要はありません。まずはお客様の状況をお聞かせいただき、業種追加に向けた最適な道筋を一緒に考えさせていただきます。

下のボタンから、まずはお気軽にお問い合わせください。

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まとめ|業種追加は、事業拡大と法令遵守のための重要な選択肢です

管工事の許可に、消防施設工事の許可を追加すること。それは、単に手続きを一つ増やすということではありません。会社の競争力を高め、受注機会を広げ、経営リスクを低減するための重要な選択肢です。

この記事では、その具体的なメリットから、鍵となる専任技術者の兼任要件、そして工事区分を判断する際の注意点までを解説してきました。

業種追加という次の一歩は、時に複雑な判断を伴います。しかし、専門家と協力することで、そのステップを確実かつスムーズに進めることが可能です。当事務所では、司法書士・行政書士・社会保険労務士の3つの視点から、お客様の事業成長をサポートしています。詳しくは対応業務一覧をご覧ください。

業種追加をご検討中の方は、自社の資格者や実務経験が要件を満たすかどうか、早めに確認することをおすすめします。

 

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