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「電気工事の許可で、通信工事も大丈夫?」業種区分の確認が必要です
「現在『電気工事』の許可を持っています。最近、オフィスビルの大規模なLAN配線や監視カメラ設置の案件が増えてきたので、『電気通信工事』の業種追加を考えています。うちの専任技術者は『第2種電気工事士』の資格を持っているのですが、この電気の資格で、電気通信工事の専任技術者も兼任できるのでしょうか?」
これは、当事務所によく寄せられるご相談の一つです。電気工事業を営む社長様にとって、事業の幅を広げるために電気通信工事への進出は自然な流れかもしれません。しかし、「ついでに」「同じ電気系だから」という判断だけで進めると、必要な許可業種を誤るケースがあります。
特に近年、LAN配線や防犯カメラ、インターホンといった工事は、電気工事と電気通信工事の判断が分かれやすく、必要な許可を確認しないまま請け負うと無許可営業に該当する可能性があります。建設業の許可は、会社の事業目的とも密接に関わる重要な要素です。
この記事では、電気工事業者の皆様が安心して事業を拡大できるよう、電気通信工事の業種追加で最もつまずきやすい「専任技術者」の要件について、専門家の視点から徹底的に解説します。業種追加を検討する際に確認すべきポイントを整理し、次に取るべき対応を判断しやすくします。
【境界線】電気工事と電気通信工事の主な違い
「LANケーブルを配線するのも、電気の線を引くのも、やることは似ているじゃないか」と感じるかもしれません。しかし、建設業法では「電気工事」と「電気通信工事」は明確に区別された、全く別の業種です。この違いを理解することが、コンプライアンス遵守の第一歩となります。この2つの業種は、管工事と消防施設工事のように、関連性が高くても許可は別々に必要となる関係にあります。
情報を送る「弱電」と電気を送る「強電」
両者の最も本質的な違いは、扱う電気の種類と目的にあります。
- 電気通信工事:インターネットの信号や映像・音声データなど、情報を伝達するための電気(弱電)を扱います。目的は「情報のやりとり」です。
- 電気工事:照明をつけたり、機械を動かしたり、エネルギーを供給するための電気(強電)を扱います。目的は「動力の確保」です。
このように、目的が「情報伝達」なのか「エネルギー供給」なのかで、必要な許可業種が根本的に異なるのです。

LAN配線・防犯カメラ設置はどちらの工事?
では、実務でよくある具体的な工事はどちらに分類されるのでしょうか。ここが最も判断に迷うポイントです。
LAN配線工事
パソコンやサーバーを繋ぐためのLANケーブルを配線する工事は、情報(データ)を伝達するための設備ですので、「電気通信工事」に該当します。
防犯カメラ設置工事
これもケースバイケースで注意が必要です。
- カメラ本体と録画装置を繋ぐ同軸ケーブルやLANケーブルの配線工事 → 電気通信工事
- カメラに電力を供給するため、新たに100Vの電源コンセントを増設する工事 → 電気工事
つまり、一つの防犯カメラ設置プロジェクトの中に、電気通信工事と電気工事の両方が含まれることが多々あるのです。両方の許可がなければ、法律上はすべての工程を自社で一貫して請け負うことはできません。
無許可営業のリスク|500万円未満でも注意が必要なケース
建設業法では、消費税込みで500万円以上の工事を請け負う場合に建設業許可が必要と定められています。無許可でこれに違反した場合、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という重い罰則が科される可能性があります。
「うちは500万円未満の軽微な工事ばかりだから大丈夫」と安心するのはまだ早いです。近年、元請企業はコンプライアンスを非常に重視しており、下請業者にも許可の取得を求めるケースが増えています。また、金融機関からの融資審査においても、適切な許可を持っているかは会社の信用力を測る重要な指標となります。
金額の大小にかかわらず、事業の信頼性と将来性を確保するためにも、行う工事内容に応じた許可を取得しておくことが不可欠と言えるでしょう。
専任技術者の要件|電気工事の資格では代用できない理由
電気通信工事の業種追加を目指す上で、重要な確認事項となるのが「専任技術者」の確保です。建設業許可では、営業所ごとにその業種の専門家である専任技術者を置くことが義務付けられています。そして、ここが最も誤解の多いポイントなのですが、電気工事の専任技術者が、そのまま電気通信工事の専任技術者を兼ねることは原則としてできません。
電気通信工事で認められる国家資格とは?
電気通信工事の専任技術者として認められる主な国家資格は以下の通りです。
| 資格区分 | 資格名 | 特定建設業 | 一般建設業 |
|---|---|---|---|
| 技術検定 | 1級電気通信工事施工管理技士 | ◯ | ◯ |
| 技術検定 | 2級電気通信工事施工管理技士 | – | ◯ |
| 技術士法 | 技術士(電気電子・総合技術監理) | ◯ | ◯ |
| 電気通信事業法 | 電気通信主任技術者 | – | ◯(資格取得後5年以上の実務経験が必要) |
※上記以外にも認められる資格があります。また、電気通信主任技術者のように、資格取得後に一定の実務経験が求められるケースもあるため注意が必要です。
なぜ「電気工事士」では専任技術者になれないのか?
冒頭の相談事例に戻りましょう。「第2種電気工事士の資格で、電気通信工事の専任技術者になれないか?」というご質問に対する答えは、明確に「なれません」です。
なぜなら、建設業法は、それぞれの専門工事分野における技術水準を担保するために、業種ごとに対応する資格を厳密に定めているからです。「電気工事士」は、あくまで強電を扱う「電気工事」の専門家としての技術を証明する資格です。一方で、弱電による情報伝達を扱う「電気通信工事」の技術力を証明するものではないため、専任技術者の資格要件として認められていないのです。
この事実を知らずに業種追加を進めようとしても、申請が認められない可能性が高くなります。まずはこの大原則をしっかりと理解することが重要です。

資格がない場合の代替案と実務経験証明の注意点
「では、資格を持つ技術者がいなければ、もう諦めるしかないのか?」
いいえ、まだ道はあります。資格がない場合の唯一の打開策が「10年以上の実務経験」で専任技術者の要件を満たす方法です。ただし、この方法では、実務経験を客観的な資料で証明する必要があり、資料の内容によっては確認に時間がかかることがあります。
10年の実務経験で専任技術者になるための条件
原則として、電気通信工事に関する10年以上の実務経験があれば、専任技術者になることが可能です。また、大学や高校で電気通信工学に関する指定学科を卒業している場合は、必要な経験年数が3年や5年に短縮されるケースもあります。
ここで言う「実務経験」とは、LAN配線工事、電話設備工事、防犯カメラ設置工事など、客観的に見て「電気通信工事」に分類される工事に従事した経験を指します。
経験の証明はなぜ難しい?契約書・注文書だけでは不十分な理由
実務経験の証明は、申請時に確認すべき資料が多く、ご自身で申請される方が判断に迷いやすいポイントです。
なぜなら、行政の審査では、「その10年間の工事が、間違いなく電気通信工事であったこと」を客観的な資料で証明しなくてはならないからです。
例えば、過去の注文書や契約書を10年分集めたとします。しかし、その工事名が「電気設備工事一式」や「改修工事」といった曖昧な記載だった場合、その中にLAN配線工事が含まれていたとしても、審査担当者にはそれが電気工事なのか電気通信工事なのか判断できません。これでは、証明資料として認めてもらえないのです。
電気工事と電気通信工事を兼業してきた会社の場合、過去の資料の中から電気通信工事の実績を整理し、その内容を客観的に説明できる資料をそろえる必要があります。より具体的な証明方法については、専任技術者の実務経験10年証明に関する詳細記事をご覧ください。

専任技術者確保のための具体的なアクションプラン
では、資格者もおらず、実務経験の証明も難しい場合、どうすればよいのでしょうか。ここでは、現実的な2つの解決策を提案します。
解決策①:有資格者を採用する【当事務所の解決事例】
比較的早期に要件を整えやすい方法の一つが、専任技術者の要件を満たす有資格者(例:1級・2級電気通信工事施工管理技士)を新たに社員として採用することです。もちろん、採用にはコストがかかりますが、事業拡大のチャンスを逃さないための先行投資と考えることもできます。
【当事務所の解決事例】
まさに冒頭の相談者様と同じ状況だったある電気工事会社様。LAN配線工事の大型案件受注を目前に、電気通信工事の業種追加が急務となっていました。しかし、社内に資格者はおらず、実務経験の証明も難しい状況でした。
少し時間はかかりましたが、幸いにも2級電気通信工事施工管理技士の資格を持つ意欲的な技術者の方とのご縁があり、無事に正社員として採用。その後、業種追加申請を行い、許可を取得することができました。許可取得にかかる建設業許可取得にかかる期間を意識した申請に必要な期間を踏まえて早めに対応したことが、案件対応の準備につながりました。
解決策②:社員に資格取得を支援する
長期的な視点に立てば、既存の社員に資格取得を促すことも非常に有効な手段です。これは、会社の技術力を底上げし、社員のモチベーションや定着率の向上にも繋がります。
例えば、電気工事の経験が豊富な社員であれば、電気通信工事施工管理技士の受験資格を満たしている可能性が高いです。会社として受験費用の補助や、試験前の学習時間を確保するといった支援制度を設けることで、社員の挑戦を後押しすることができます。将来への投資として、人材育成に取り組む価値は十分にあるでしょう。
まとめ:その工事実績、認められますか?無料診断で確認を
今回は、電気工事業者が電気通信工事の業種追加を目指す際の「専任技術者」の問題について詳しく解説しました。
- 電気工事(強電)と電気通信工事(弱電)は、法律上まったく別の業種であること。
- 「電気工事士」の資格では、電気通信工事の専任技術者にはなれないこと。
- 資格がない場合、10年の実務経験で要件を満たせるが、その証明は非常に難しいこと。
これらのポイントからも分かる通り、「うちの会社でも大丈夫だろう」という自己判断は非常に危険です。特に、実務経験の証明は、専門家でなければ判断が難しいケースがほとんどです。
当事務所では、過去の工事契約書や注文書、図面などをお持ちいただければ、その実績で電気通信工事の業種追加が可能かどうかを無料で診断しています。また、逆に電気通信工事業を営む会社様から「通信機器を設置する際、電源を取るためのコンセント増設(電気工事)も頼まれることが多い。違法にならないよう電気工事の許可も取りたい」というご相談を受け、電気工事の実務経験者を採用して業種追加を成功させた事例もございます。
判断に迷う場合は、早めに資料を整理し、要件を確認することが重要です。ビジネスチャンスを逃す前に、まずは専門家の診断を受けてみませんか?ご相談から許可申請までの流れもスムーズにご案内いたします。
川崎市で建設業許認可をとり扱う「行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所」が、あなたの会社の事業拡大を全力でサポートします。建設業許認可を中心に扱う「行政書士・社会保険労務士いがり綜合事務所」へ、どうぞお気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
