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「事務員が突然退職…」建設業許可の更新、間に合いますか?
「長年、事務も経理も全部任せていた担当者が、突然辞めてしまった…」
「労働局から何やら書類が届いているが、開けるのも怖い」
「年度更新?なにそれ?今まで全部やってもらってたから、さっぱり分からない」
「まずい、あと数ヶ月で建設業許可の更新期限が迫っているのに、どうすれば…」
これは、小規模な建設会社の社長から実際に寄せられるご相談の一例です。
現場を回し、お客様と打ち合わせ、資金繰りにも奔走する毎日。バックオフィス業務は信頼する事務員さんに任せきりだった、という社長は少なくありません。しかし、その担当者が突然いなくなってしまったら?これまで担当者に任せていた手続きの状況を、社長自身が急いで確認しなければならなくなります。
特に建設業の労働保険手続きは、他の業種にはない独特の複雑さがあります。放置すれば、行政からの指導はもちろん、万が一の労災事故の際には、事業主が遡及保険料や費用徴収などの重い負担を負うおそれがあります。
さらに、建設業許可の更新には社会保険への適正な加入が許可要件の一つです。手続きの遅れが、事業の存続そのものを揺るがす事態に直結してしまうのです。
この記事では、まさに今、あなたと同じように途方に暮れていた建設会社の社長が、どのようにして山積みの課題を乗り越え、無事に建設業許可の更新までたどり着いたのか、その具体的な道のりを一つの事例としてご紹介します。
もう一人で悩む必要はありません。現在の届出状況を確認し、必要な手続きを整理することで、対応方針を検討できます。
【解決事例】労働保険が不明な状態から、許可更新まで立て直したプロセス
「猪狩先生、もう何が何だか…さっぱり分からないんです。現場仕事で手一杯なのに、役所から次々と督促状みたいなものが届いて。正直、パニックです」
そう言って当事務所に相談されたのは、建設会社A社の社長でした。長年、会社の保険手続きなどを一手に担っていた事務員さんが突然退職。引き継ぎもままならず、気づけば労働局や年金事務所からの通知が山積みになっていたのです。
さらに、数ヶ月後には建設業許可の更新期限が迫っていました。
社長のお話をじっくり伺い、まずは未処理の手続きと提出期限を一つずつ確認することから始めました。A社が抱えていた課題は、大きく分けて以下の5つに整理できました。
<A社が抱えていた課題>
- 現場の労災保険の「年度更新」が未処理
- 事務所の労災保険が「未加入」状態
- 雇用保険の「年度更新」が未処理
- 社会保険の「算定基礎届」が未提出
- 建設業許可の更新期限が目前に迫っている
これらの課題を解決し、許可更新に間に合わせるため、私たちは次のようなステップで一つずつ手続きを進めていきました。

ステップ1:【現場労災】過去1年間の元請工事を洗い出し、年度更新
建設業特有の手続きの代表格が、現場の労災保険(一括有期事業)です。これは、元請業者が保険年度中に終了した一括有期対象の元請工事の実績をもとに、保険料を計算して申告・納付する「年度更新」という手続きが必要です。
A社の場合、この手続きが全く行われていませんでした。そこで、まずは社長にご協力いただき、前年度のすべての元請工事に関する請求書や契約書をご提供いただきました。
私たちはその膨大な資料から一件一件、工事ごとの請負金額や工事内容を整理・集計し、「一括有期事業報告書」と「一括有期事業総括表」という専門的な書類を作成。それに基づいて確定保険料を算出し、無事に年度更新を完了させました。
ステップ2:【事務所労災】見落とされていた「未加入」状態を解消
調査を進める中で、さらに深刻な問題が発覚しました。A社では、事務所で働く事務員さんや、資材置場で作業する従業員のための労災保険(継続事業)が、なんと「未加入」の状態だったのです。
多くの社長が「現場の労災保険に入っていれば、それで全部カバーされる」と誤解しがちですが、これは大きな間違いです。事務所などで行う業務は、別途、労災保険の成立手続きが必要になります。
私たちは直ちに「保険関係成立届」を提出。事務員さんの給与や、現場の従業員が工事以外の業務(資材の整理など)に従事する時間分の給与などを正確に把握し、適正な概算保険料を申告。万が一の事態に備える体制を整えました。
ステップ3:【雇用保険】全従業員の給与を集計し、年度更新
労災保険とは別に、雇用保険も年度更新が必要です。これは現場作業員、事務員を問わず、雇用保険の適用要件を満たす従業員が対象となります。
社長からお預かりした給与資料をもとに、雇用保険の対象となる賃金を正確に集計。労働保険の「概算・確定保険料申告書」を作成し、滞っていた年度更新手続きを完了させました。この申告書の控えと納付書のコピーは、建設業許可の更新申請に欠かせない重要な添付書類となります。
ステップ4:【社会保険】算定基礎届を提出し、許可更新の準備
社会保険(健康保険・厚生年金保険)についても、年に一度、全被保険者の報酬月額を届け出る「算定基礎届」が未提出でした。役員と従業員の皆さんの給与明細をお預かりし、算定基礎届を作成して年金事務所へ提出。これにより発行される「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が発行されました。
建設業許可の更新では、社会保険への加入状況を確認する資料だけでなく、常勤役員等や営業所技術者等の常勤性を確認する資料が必要になる場合があります。その確認資料の一つとして、この「健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書」等が添付書類になります。
ステップ5:期限後申告にも柔軟に対応
ご相談いただいた時点で、労働保険の年度更新期間(通常6月1日~7月10日)はとっくに過ぎていました。電子申請で年度更新の手続きを試みましたが、期限後申告であることから申請が返戻されてしまいました。
そのため、管轄の行政窓口に確認し、紙の申告書を作成して期限後申告として手続きを進めました。私たちは行政の担当窓口と直接やり取りをしながら、紙の申告書を作成し、期限後の申告として手続きを進めました。普段は電子申請が主流なので、久しぶりに紙の申告書を前にして、少し懐かしい気持ちになったのを覚えています。
このように、放置されていた手続きを一つずつ整理して対応することで、無事に建設業許可の更新申請に必要な書類をすべて揃えることができました。もちろん、役員の重任登記など、許可更新で他に問題となりうる点も併せてチェックし、万全の体制で申請を迎えられました。
A社のように、長年手続きを任せていた担当者が退職すると、社内の誰も状況を把握していないという事態は、決して珍しいことではありません。しかし、何が未処理なのかを専門家が正しく診断し、必要な資料を整理すれば、解決に向けた対応方針を整理できる可能性があります。
もし許可更新が迫っているのに手続きが分からずお困りでしたら、手遅れになる前に、ぜひ一度ご相談ください。
なぜ建設業の労働保険は複雑なのか?3つのポイントを解説
A社の事例を見て、「なぜ建設業の手続きはこんなにややこしいんだ?」と感じた方も多いのではないでしょうか。その通り、建設業の労働保険は他の業種と比べて非常に複雑な構造をしています。その理由は、大きく分けて3つの異なる保険制度を、それぞれ個別に管理しなければならないからです。
この仕組みを理解することが、混乱から抜け出す第一歩となります。詳しくは顧問社労士の労働保険業務でも解説していますが、ここでは要点を絞ってご説明しますね。

ポイント1:元請工事にかかる「現場の労災保険」
建設業の労働保険の最大の特徴が、この「現場の労災保険(一括有期事業)」です。工事現場という特殊な環境で働く人々を守るための制度で、元請業者が、自社の従業員だけでなく、下請け業者の従業員も含めた現場全体の労災保険料を負担する仕組みになっています。
そのため、年に一度の「年度更新」では、A社の事例であったように、保険年度中に終了した一括有期対象の元請工事の請負金額を正確に集計し、「一括有期事業報告書」という書類を作成して申告する必要があります。工事の請求書を一枚一枚めくり、金額を拾い出す作業は、非常に手間と時間がかかります。これが、建設業の労働保険手続きが煩雑と言われる一番の理由です。
ポイント2:見落としがちな「事務所の労災保険」
次に注意が必要なのが、「事務所の労災保険(継続事業)」です。「現場の労災保険に入っているから、それで万全だ」というのは、よくある大きな誤解です。
現場の労災保険は、あくまで「工事現場での業務」を対象としています。そのため、本社や営業所の事務員、あるいは資材置場で資材の管理や加工作業を行う従業員などは、この保険の対象外となります。
これらの従業員を守るためには、別途、一般の会社と同じように事務所を単位とした労災保険に加入しなければなりません。A社のように、この手続きが漏れているケースは意外と多く、もし未加入のまま事務所で事故が起きてしまうと、労働者への労災保険給付は行われる場合がありますが、会社には遡及保険料や費用徴収などの重い負担が生じるおそれがあります。
ポイント3:全従業員に関わる「雇用保険」
最後に、労災保険とは別に管理が必要なのが「雇用保険」です。これは、現場作業員や事務員といった職種に関わらず、雇用保険の適用要件を満たす従業員が対象となります。
年度更新の際には、雇用保険に加入する全従業員に支払った1年間の給与総額を集計して保険料を計算します。ここでの注意点は、労災保険の保険料算定の基礎となる賃金と、雇用保険の保険料算定の基礎となる賃金の範囲が、必ずしも一致しない場合があることです。例えば、役員兼務者、同居親族、出向者などについては、個別に適用関係を確認する必要があります。
A社の事例でも、現場作業員と事務従業員の給与資料をそれぞれ確認し、雇用保険の対象となる賃金を正確に集計しました。建設業許可の更新では、この雇用保険の申告書控えの提出が求められるため、正確な手続きが不可欠です。家族経営の会社などでは、誰が雇用保険の対象になるのか判断が難しいケースもあります。
このように、建設業では「現場労災」「事務所労災」「雇用保険」という3つの異なる制度を正しく理解し、それぞれ適切に手続きを進める必要があるのです。これらを専門知識のない方が一人で管理するのは、至難の業と言えるでしょう。
(参考:厚生労働省|労働保険の成立手続)
手続きが分からない…専門家に相談する前に社長ができること
「専門家に相談した方がいいのは分かった。でも、何から手をつけて、何を準備すればいいかすら分からない…」
そう感じて、相談すること自体をためらってしまう社長もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。すべてを完璧に整理しておく必要は全くありません。むしろ、状況を整理し、何が必要かを見極めるのが専門家の仕事です。
とはいえ、ご相談をスムーズに進めるために、いくつかご準備いただけると非常に助かるものがあります。以下の3点だけ、お手元に集めてみていただけますでしょうか。
<ご相談前に準備しておくとスムーズなもの>
- 労働局や年金事務所から届いた書類一式
封筒に入ったままのもので構いません。そこに書かれている内容が、現状を把握するための最も重要な手がかりになります。 - 過去の元請工事の請求書や契約書
年度更新に必要となります。完璧に揃っていなくても大丈夫ですので、見つけられる範囲でご用意ください。 - 従業員の給与台帳や名簿
雇用保険や社会保険の手続きに必要です。手書きのものでも、会計ソフトから出力したものでも構いません。
これだけです。たとえ書類がバラバラでも、何が何だか分からなくても、まずはそのままの状態でお持ちください。私たちが一つひとつ内容を確認し、社長に必要な情報をお伺いしながら、解決に向けた対応手順をご提案します。詳しい準備については、建設業許可を行政書士に依頼する際の準備でも解説していますが、まずは「専門家に丸ごと見てもらう」という気持ちで、お気軽にご連絡いただければと思います。

労働保険から許可更新までワンストップで解決する専門家とは
今回のA社の事例のように、事務担当者の退職が引き金となる問題は、複数の専門分野にまたがることがほとんどです。
- 労働保険・社会保険の手続き → 社会保険労務士の領域
- 建設業許可の更新 → 行政書士の領域
通常であれば、社長は社会保険労務士と行政書士、それぞれの事務所を探し、別々に連絡を取り、同じような説明を何度も繰り返さなければなりません。多忙な社長にとって、これは大きな負担です。
しかし、当事務所の代表は、社会保険労務士と行政書士、両方の国家資格を保有しています。そのため、A社が直面したような複数分野にまたがる問題に対しても、窓口を一本化し、労働保険・社会保険の手続きと建設業許可更新に関する主な手続きを一貫してサポートすることが可能です。
<ワンストップで依頼する3つのメリット>
- 手間と時間の削減
別々の専門家に依頼する手間を軽減できます。窓口が一本化されることで、社長の負担を最小限に抑えます。 - 迅速でスムーズな情報共有
情報伝達のミスやタイムラグを減らし、スムーズな対応につなげやすくなります。 - 許可更新を見据えた最適な手続き
建設業許可の更新要件を熟知した上で、社会保険・労働保険の手続きを進めます。「許可更新のために、どの書類が、いつまでに必要なのか」を逆算して、必要書類と提出期限を踏まえたスケジュールを立てることができます。
「事務員が辞めて、バックオフィスが完全に止まってしまった…」
「労働保険も、許可更新も、もう何から手をつければいいか分からない…」
労働保険や建設業許可更新の手続きでお困りの場合は、早めにご相談ください。私たち専門家は、そんな社長の「困った」を解決するために存在しています。
まずは状況をお聞かせください。現在の状況を確認したうえで、必要な手続きと進め方を整理します。
労働保険・建設業許可の更新でお困りなら、今すぐご相談ください

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
