Archive for the ‘技術者・実務経験’ Category
とび土工許可だけではダメ?平成28年以前の解体経験の証明法
「とび・土工の許可」だけでは解体経験を証明できない理由
「昔から解体工事をしており、当時はとび・土工工事業の許可も持っていました。解体工事業の実務経験としてそのまま使えますよね」と、業種追加のご相談がありました。
こうしたご相談は、建設業許可の現場で本当によく耳にします。しかし、この認識は、実務経験の証明方法を誤解している可能性があります。
結論から申し上げると、過去に「とび・土工工事業」の許可を持っていたという事実だけでは、解体工事の経験を自動的に証明することはできません。
平成28年5月31日以前の「とび・土工工事業」の許可期間を、現在の「解体工事業」の実務経験として使う場合には、許可を持っていたという事実だけでは足りません。当時、実際に解体工事を行っていたことを契約書や注文書、請求書などで裏付ける必要があります。
平成28年6月1日に改正建設業法が施行され、それまで「とび・土工工事業」に含まれていた解体工事は、独立した「解体工事業」という業種として新設されました。この法改正を境に、審査の考え方が大きく変わったのです。
「とび・土工工事業」の許可業者が行っていた工事の中には、もちろん解体工事もあれば、足場工事や掘削工事など、解体とは全く関係のない工事も含まれています。そのため、行政は許可の有無という形式的な事実だけでなく、当時の契約書や請求書といった裏付け資料によって、「確かに解体工事を継続して行っていた」という実態を証明するよう求めてくるのです。
平成28年5月31日以前の解体工事は、制度上、とび・土工工事と解体工事の双方の実務経験として扱える特例があります。ただし、とび・土工の許可を持っていたという事実だけで、解体工事の経験まで自動的に証明できるわけではありません。そこで、当時の契約書、注文書、請求書や工事経歴書などを確認し、実際に解体工事を継続して行っていたことを証明できる資料を整理しました。
この記事では、法改正前の古い解体工事の経験を、今まさに証明しようとしている事業者様のために、複雑な特例ルールや具体的な証明方法、さらには神奈川県独自のローカルルールまで、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。
平成28年以前の解体工事経験 特有の証明ルールとは
平成28年6月1日に施行された改正建設業法は、解体工事について、事故を防ぎ、工事の質を確保するため、建設業許可の業種区分に「解体工事業」を新設するものでした。しかし、それまで「とび・土工工事業」の一部として解体工事を真面目に行ってきた事業者が不利益を被らないよう、いくつかの経過措置(特例ルール)が設けられています。
この特例を正しく理解し、必要書類を整理することが、許可申請の準備では重要です。ここでは、制度の概要を確認します。
原則:契約書や請求書で「解体工事」の事実を証明
まず大原則として、実務経験の証明は、実際にその工事を行ったことを客観的に示せる資料で行います。具体的には、以下のような書類が求められます。
- 工事請負契約書
- 注文書・請書
- 請求書(入金確認ができる通帳などとセット)
これらの書類で重要なのは、「工事内容」の欄に「木造家屋解体工事」「内装解体工事」といった具体的な記載があることです。工事内容が「作業一式」など曖昧な表現になっていると、それが本当に解体工事であったかを判断できず、証明資料として認められない可能性があります。
行政は、申請内容が事実に基づいているかを厳しく審査します。安易な考えで書類を加工・偽造することは絶対に許されません。

特例①:とび・土工工事との経験期間の「重複」が認められる
通常、ある一定期間の実務経験は、一つの業種についてしか主張できません。例えば、令和5年4月から令和6年3月までの1年間は、「内装仕上工事業」の経験として主張したら、他の業種の経験として使うことはできないのが原則です。
しかし、平成28年5月31日以前の期間に限っては、「とび・土工工事業」と「解体工事業」の経験を、同じ期間で主張できるという大変有利な特例があります。
例えば、平成26年4月から平成28年3月までの2年間、とび・土工工事と解体工事の両方を請け負っていた実績があれば、その2年間を「とび・土工工事業の経験2年分」かつ「解体工事業の経験2年分」として、それぞれカウントすることが可能なのです。
これは、当時は解体工事がとび・土工工事の中に含まれていた、という歴史的な経緯を考慮した特別な措置です。ただし、この重複が認められるのは「とび・土工」と「解体」の組み合わせだけであり、平成28年6月1日以降は重複できません。また、5月31日以前であっても、他の業種との重複は認められない点に注意が必要です。
特例②:解体経験を「とび・土工」の経験としても利用可能
もう一つの重要な特例は、平成28年5月31日以前に行った解体工事の経験を、「解体工事業」だけでなく「とび・土工工事業」の実務経験としても利用できるという点です。
これは、当時は解体工事が「とび・土工工事」の中に含まれていたためです。過去にとび・土工工事業の許可取得時に実務経験として認められた解体工事の経験についても、現在の解体工事業の実務経験として用いることができます。
ここが重要です。とび・土工工事業の許可を持っていた期間であっても、その許可だけで「解体工事をしていた」とは証明できません。解体工事の経験として使うには、原則として契約書・注文書・請求書等による実態の裏付けが必要です。
この取扱いにより、一定の条件を満たす過去の解体工事経験を、新たな業種許可の申請にも活用できる場合があります。
【神奈川県】工事経歴書で証明する場合の「8割ルール」
契約書や請求書がなかなか見つからない…という事業者様も少なくありません。そうした場合でも、神奈川県では独自の証明方法が存在します。
神奈川県知事許可業者で、過去に「とび・土工工事業」の許可業者として毎年きちんと決算変更届を提出していた場合、その際に添付した「工事経歴書」の写しを、契約書等の代わりとして実務経験の証明に使える可能性があるのです。
これが、通称「8割ルール」と呼ばれるものです。このルールが適用されるには、以下の2つの条件をクリアする必要があります。
- 工事経歴書に記載された工事の8割以上が、誰が見ても明らかに解体工事であると確認できること
- それらの解体工事が、年間を通じて時期的に偏りなく行われていること
この条件を満たせば、決算変更届の副本の表紙と該当する工事経歴書のページを提出することで、証明資料として認められます。ただし、これはあくまで平成28年5月31日までに終了した事業年度分の工事経歴書に限られます。
この取扱いは神奈川県の手引きに定められた証明方法です。他の都道府県では必要資料や取扱いが異なる場合があるため、申請先の手引きや窓口で確認する必要があります。

経験年数が不足?他業種との「合算」で要件を満たす方法
「解体工事の経験は8年しかないので、10年に足りず許可は難しいでしょうか」と、業種追加のご相談がありました。
純粋な解体工事の経験年数が8年しかないため、許可取得を諦めかけていた事業者様がいらっしゃいました。
しかし、詳しくお話を伺うと、その方は解体工事のほかに、とび・土工工事の経験も4年お持ちでした。このケースでは、諦める必要はありません。建設業許可には、技術者要件を満たすための「経験年数の合算」という、もう一つの重要な緩和措置があるからです。
具体的には、以下の条件を満たすことで、解体工事業の営業所技術者等になることが認められます。
解体工事業の実務経験が8年以上あり、かつ、土木工事業、建築工事業またはとび・土工工事業の実務経験と合わせて12年以上になること
先ほどの事業者様の例で見てみましょう。
- 解体工事8年 + とび・土工工事4年 = 合計12年
この計算により、合計経験年数が12年以上となるため、解体工事業の技術者要件をクリアできるのです。もちろん、それぞれの期間の工事実績は、契約書などで客観的に証明する必要がありますが、10年に満たないからといってすぐに諦めるのではなく、他の業種の経験と組み合わせられないか検討することが重要です。
ただし、過去にとび・土工の許可を持っていたというだけでは足りません。契約書、注文書、請求書、工事経歴書などを確認し、実際にどの期間にどの工事を行っていたのかを整理して証明する必要があります。
この実務経験年数の考え方は複雑なため、ご自身の経歴で使えるかどうか、ぜひ一度専門家にご相談ください。

技術者資格で証明する場合の注意点【平成27年度以前の合格者】
実務経験ではなく、国家資格で営業所技術者等の要件を満たす方法もあります。しかし、ここにも法改正に伴う特有の注意点が存在します。
特に注意が必要なのは、土木施工管理技士(1級・2級)または建築施工管理技士(1級・2級)の資格をお持ちの方で、その合格年度が「平成27年度以前」の場合です。
これらの資格は、現在では解体工事業の営業所技術者等の資格要件として認められていますが、平成27年度以前の合格者に限っては、資格を持っているだけでは要件を満たせません。追加で以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 資格合格後、1年以上の解体工事に関する実務経験があること
- 国土交通大臣の登録を受けた「登録解体工事講習」を受講し、修了していること
「1級建築施工管理技士だから大丈夫だと思っていた」という方が、この追加要件を見落として申請準備を進めてしまうケースが後を絶ちません。ご自身の合格証明書に記載されている「合格年度」を必ず確認してください。これは資格と実務経験の組み合わせでも同様に、資格と実務経験の組み合わせが問われることがあるため、注意が必要です。
まとめ:複雑な経験証明は専門家にご相談ください
今回は、平成28年5月31日以前の解体工事経験を証明するための、複雑かつ特例的なルールについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 「とび・土工工事業」の許可を持っていた事実だけでは、解体工事の経験証明にはならない。
- 証明には、工事内容が明記された契約書や請求書などの客観的な裏付け資料が不可欠。
- 法改正前の経験には、「期間の重複」や「経験の再利用」といった申請者に有利な特例がある。
- 神奈川県には、工事経歴書を使える「8割ルール」という独自の救済措置が存在する。
- 解体経験が10年に満たなくても、他業種との「合算」で要件を満たせる可能性がある。
これらのルールは、ご自身の会社の経歴や保管されている書類の状況によって、どの方法で証明するのが最適かが大きく異なります。自己判断で申請準備を進めた結果、何度も役所に足を運ぶことになったり、最悪の場合、許可が取得できなかったりするリスクも考えられます。
いがり綜合事務所では、司法書士・行政書士・社会保険労務士という3つの国家資格を活かし、お客様一人ひとりの状況を多角的に分析し、許可申請に向けた進め方をご提案いたします。複雑な実務経験の整理や証明でお悩みの際は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご活用ください。状況に応じた進め方を一緒に確認します。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
消防施設工事の実務経験|無資格だと認められない?許可要件を解説
「消防施設工事10年」でも実務経験にならない?建設業許可の落とし穴
「消防設備の工事はもう10年以上やっている。だから消防施設工事業の許可を取りたい」
先日、ある事業者様からこのようなご相談を受けました。お話を伺うと、自動火災報知設備や消火設備など、豊富な施工実績をお持ちです。これなら実務経験での許可取得も問題ないだろう、そう思われるかもしれません。
しかし、建設業許可の審査、特に消防施設工事においては、注意すべき確認事項があります。
詳しくお話を伺っていくと、過去の工事の中に、消防法上、消防設備士でなければ行えない工事が含まれていました。しかし、その工事を実際に行った方が、当時必要な消防設備士免状を有していたかどうかを確認できない期間があったのです。
実は、これが許可取得の成否を分ける極めて重要なポイントなのです。消防施設工事は、単に「10年間工事をやってきた」という事実だけでは、実務経験として認められないケースが少なくありません。なぜなら、その経験が「法律を守って行われたものか」という点まで、厳しく問われるからです。
この記事では、なぜ消防施設工事の実務経験の証明が他の業種より難しいのか、その理由である「建設業法」と「消防法」の関係を整理します。そして、ご自身の経験が許可要件を満たすのかを確認するための具体的なチェックポイントから、もし証明が難しい場合の対処法まで、専門家の視点から詳しく解説していきます。
長年の経験を正しく評価してもらい、許可取得の可能性を高めるために、ぜひ最後までお読みください。
大原則:なぜ消防施設工事の実務経験に「消防設備士」資格が関係するのか
「建設業許可の話なのに、なぜ消防設備士の資格が出てくるんだ?」多くの方が、この点に疑問を感じるのではないでしょうか。これは、建設業許可を定める「建設業法」と、消防用設備の設置や工事を定める「消防法」という、二つの異なる法律が交差する、消防施設工事業特有の問題です。
この関係性を理解することが、実務経験の証明における重要なポイントとなります。
建設業法上の「実務経験」とは?
まず、建設業許可における「実務経験」の基本を確認しましょう。これは、許可を受けようとする建設工事に関する技術上の経験を指し、原則として10年以上の経験があれば、国家資格などがなくても営業所技術者等(旧・専任技術者)になることができます。しかし、重要なのは、この経験が「適法に行われた工事」であることが大前提となる点です。違法な状態で行われた工事の経験は、当然ながら技術上の経験として評価されません。
消防法が定める「消防設備士」の業務独占
次に、消防法の世界を見てみましょう。消防法第17条の5では、火災報知器やスプリンクラーといった特定の消防用設備等について、その工事や整備は「消防設備士」でなければ行ってはならないと定められています。これは、人の命を守る重要な設備だからこそ、専門知識と技能を持つ資格者だけに業務を独占させているのです。
つまり、消防設備士の資格を持たない人がこれらの工事を行うことは、それ自体が消防法に違反する行為にあたる可能性があるわけです。これは電気工事における電気工事業法などと同様の関係性と言えます。
結論:消防設備士が必要な工事を無資格で行った経験は認められない
ここまでの内容を整理します。この二つの法律を組み合わせると、以下の結論が導き出されます。
消防設備士でなければ行えない工事を、必要な免状を持たない者が行っていた場合、その施工は消防法上問題となり、その経験を建設業許可の実務経験として用いることもできません。
これが、「10年やっているのに経験として認められない」という事態が起こる根本的な理由です。建設業許可の審査を行う行政庁は、申請された工事経験が、建設業法だけでなく消防法などの関連法規も遵守した上で行われた「適法な経験」であるかを確認します。そのため、単に注文書や契約書があるだけでは不十分で、消防設備士の資格が必要な工事については、無資格で行った経験ではないことを確認する必要があります。
(参考:建設業界ガイドブック 消防施設工事業)
実務経験を証明するための3つのチェックポイント
では、ご自身の経験が実務経験として認められるか、具体的に何をチェックすればよいのでしょうか。ここでは、申請前に必ず確認すべき3つのポイントを解説します。ご自身の状況を客観的に確認する際の参考にしてください。

ポイント1:経験年数は10年以上あるか?
まず基本となるのが、経験年数です。原則として、消防施設工事業に関する実務経験が通算で10年以上必要になります。実務経験として認めてもらうためには、その期間に実際に勤務・在籍し、消防施設工事の技術上の経験を積んでいたことを客観的な資料で確認できる必要があります。
ただし、会社としては、単なる人工出し(応援)ではなく、消防施設工事の完成を請け負った実績であることが必要です。そのうえで、候補者本人がその工事について施工・技術上の業務に従事していたことを確認します。
ポイント2:工事内容は「消防施設工事」に該当するか?
次に、ご自身が経験してきた工事が、建設業法で定められている「消防施設工事」に正しく該当するかを確認する必要があります。具体的には、以下のような工事が消防施設工事にあたります。
- 屋内消火栓設置工事
- スプリンクラー設備工事
- 水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事
- 自動火災報知設備工事
- 非常警報設備工事
- 金属製避難はしご設置工事
- 救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事
ここで注意したいのが、関連する工事との区別です。例えば、消防設備の「点検」や「保守」は工事には該当しません。また、同じ避難設備でも、建物に固定された「避難階段」を設置する工事は、建築一式工事や鋼構造物工事と判断される場合があります。管工事と消防施設工事のように、業種の区分が難しいケースもあるため、過去の契約書や注文書で工事内容を正確に確認することが重要です。
ポイント3:【最重要】適法な資格体制で施工したことを証明できるか?
この点は、実務経験を確認するうえで特に重要です。
過去の消防施設工事を実務経験として用いるためには、その工事が消防法上適法に行われていたことを確認する必要があります。消防設備士でなければ行えない工事については、単に会社内や協力会社に有資格者がいたというだけでは足りず、実際にその工事を行った者が必要な資格を有していたかどうかが重要です。
このように、「消防関係の仕事をしていた」という大まかな経歴だけでは十分ではありません。過去に行った工事の内容を確認し、その工事が消防設備士でなければ行えない工事に該当する場合には、実際に施工した者が当時必要な種類・類の消防設備士免状を有していたかを確認する必要があります。
消防設備士には甲種と乙種がありますが、消防法上、消防用設備等の「工事」を行うことができるのは甲種消防設備士です。乙種消防設備士は、対応する類の整備等を行う資格です。
- 自動火災報知設備の工事なら → 甲種第4類
- スプリンクラー設備の工事なら → 甲種第1類
- 屋内消火栓設備の工事なら → 甲種第1類
- 消火器の整備・点検なら → 乙種第6類
このように、「消防関係の仕事をしていた」という大まかな経歴だけでは不十分です。
どの資料で適法性を確認するかは、工事内容や当時の資格状況によって異なります。消防設備士免状、資格取得時期が分かる資料、工事関係書類などを確認し、必要に応じて行政庁へ事前相談することが重要です。
これらの確認は、電話での初回確認の限界、手元の資料を一つひとつ丁寧に精査していく地道な作業が不可欠です。神奈川県の令和8年度版手引きでも、電気工事・消防施設工事について、無資格での実務経験は原則として認められない旨が示されています。
無資格期間が長い場合の対処法
ここまでのチェックポイントを確認し、「適法性を証明できる期間が10年に満たないかもしれない…」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、すぐに諦める必要はありません。ここからは、証明が難しい場合の具体的な対処法を2つご紹介します。

認められる期間だけで10年分を再計算する
まずは、過去の経験のすべてを諦めるのではなく、適法に施工したと確実に証明できる期間だけを拾い集め、合算して10年に達しないか再計算してみましょう。
例えば、過去の業務の中に、消防法上、消防設備士でなければ行えない「工事」には該当しない作業に従事していた期間がないか、また、本人が必要な消防設備士免状を取得した後に行った工事で証明できる期間がないかを確認します。現在の会社だけでなく、過去の勤務先での経験についても、適法な工事経験として証明できるものがあれば検討します。より具体的な手順については、他県での経験証明の方法も参考に、証明可能な期間を丁寧に洗い出すことが重要です。
今から消防設備士資格を取得する
実務経験の証明がどうしても難しい場合、有力な方法の一つが、ご自身で消防設備士の資格を取得することです。消防設備士の資格を取得すれば、実務経験の年数に関わらず、消防施設工事業の営業所技術者等(旧・専任技術者)になることができます。
「今から勉強するのは大変だ…」と感じるかもしれませんが、建設業許可という大きな目標のためには、許可取得に向けた選択肢の一つと言えるでしょう。
ここで注意!「建設業許可の資格要件」と「実際にできる消防設備工事」は別問題
消防設備士には甲種と乙種があり、建設業許可上はいずれも消防施設工事業の一般建設業許可における営業所技術者等の資格要件となり得ます。ただし、消防法上、実際に工事を行える範囲は資格区分によって異なります。将来どの消防用設備の工事を行うのかを踏まえて、取得する類や甲種・乙種を選ぶことが重要です。
まとめ:消防施設工事の実務経験証明は専門家にご相談ください
今回は、消防施設工事業の建設業許可を実務経験で取得する際の注意点について詳しく解説しました。
ポイントのまとめ
- 消防施設工事の実務経験は、単なる工事期間だけでなく「適法性」が問われる。
- その理由は、建設業法だけでなく「消防法」のルールも守られている必要があるから。
- 過去の工事を実務経験として用いるには、契約書などによる工事実績の証明に加え、消防設備士でなければ行えない工事については、実際に施工した者が必要な資格を有していたかを確認する必要がある。
- 証明が難しい場合は、期間の再計算や、今からの資格取得が有効な選択肢となる。
このように、消防施設工事の実務経験証明は、他の28業種と比べても特殊で、複雑な判断が求められます。ご自身で「たぶん大丈夫だろう」と判断して申請準備を進めても、行政庁との見解の相違から、多くの時間と労力が無駄になってしまう可能性があります。
過去の資料を精査し、膨大な経験の中から許可要件を満たす期間を正確に抽出する作業は、専門的な知識と経験が不可欠です。建設業許可申請の相談対応は、お客様の状況を丁寧にお伺いし、最適な許可取得の道筋をご提案します。少しでもご不安な点があれば、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
建設業許可で虚偽申請は厳禁|神奈川県の厳正対応から学ぶ注意点
神奈川県が「虚偽申請に厳正対応」と異例の発表
神奈川県が2026年9月28日、建設業許可の虚偽申請について異例ともいえる強い注意喚起を公表しました。これは、単なる形式的なお知らせではありません。今後の建設業許可申請、そして経営事項審査(経審)のあり方にも関わる、きわめて重要なメッセージです。
県の発表によれば、ある行政書士が建設業者の代理人として虚偽内容の書類を作成した事案について、県は建設業法違反の疑いで警察に告発し、2026年8月には横浜地方検察庁から起訴された旨の通知を受けたと公表しています。
注意喚起にとどまらない審査方針の明示
今回の発表で特に注目すべきは、「今後の対応」について具体的に言及している点です。県は、今後の建設業許可および経営事項審査において、以下の方針を明確に示しました。
- 厳格かつ慎重な審査を行う
- 申請内容の正確性・適法性を多角的・多段階で確認する
- 審査の過程で、追加の資料提出を求める場合がある
今回の発表は、新しい許可基準を設けたというものではありませんが、神奈川県が建設業許可申請や経営事項審査について、法令に則って厳格かつ慎重に審査し、必要に応じて複数回の追加確認や資料提出を求める方針を明確に示したものといえます。これまで以上に、申請内容の裏付けや法令適合性を確認する観点から、疑義のある点について慎重な確認が行われる可能性があります。特に、工事実績の証明や経営事項審査における完成工事高の確認など、あらゆる場面でより慎重な判断がなされることが予想されます。
「前回は通ったのに」が通用しなくなる理由
申請者の方から、「前回はこの書類で許可が取れたのに、なぜ今回はダメなんだ」という声を聞くことがあります。しかし、今回の県の発表は、そうした安易な考え方がもはや通用しないことを示唆しています。
神奈川県は、「前回は問題なかったのに、今回なぜ認められないのか」という質問が寄せられることにも触れています。そのうえで、申請事案によっては法令適合性を徹底して確認する必要があり、慎重な確認を要する場合があると説明しています。
したがって、過去に同様の資料で受理された経験があったとしても、今回の申請でも当然に同じ判断になるとは限りません。
また、行政庁ごとに独自のルール、いわゆる「ローカルルール」が存在することも事実です。例えば、他県で認められた経験証明の方法が、神奈川県では通用しないケースも珍しくありません。建設業許可の確認資料や運用には、許可行政庁ごとの手引きや取扱いの違いがあるため、申請先の最新手引きを確認することが重要です。

実務経験の証明で絶対にしてはいけないこと
建設業許可の要件の中でも、特に虚偽申請が起こりやすいのが「実務経験の証明」です。具体的には、経営業務の管理責任者や営業所技術者等になるための経験年数を、過去の請求書や注文書などで証明するケースです。今回の神奈川県の発表でも、この点が厳しく指摘されています。
「10年以上の経験があるのは事実なのに、証明する書類が少し足りない…」そんな状況に置かれたとき、軽い気持ちで書類に手を入れてしまう誘惑にかられるかもしれません。しかし、その行為は、許可取消しや刑事責任につながる可能性のある重大な問題です。
より詳しい実務経験の証明方法については、「営業所技術者等の実務経験10年証明に必要な書類」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なぜ請求書等の「加工」や「復元」は許されないのか?
神奈川県は公式サイト上で、「申請のために過去の書類を加工・復元することは認められない」と、きわめて明確に断言しています。
特に注意すべきなのは、申請者自身が当時存在しなかった書類を過去の日付で作成したり、既存書類の日付・工事内容・金額等を書き換えたりすることです。紛失した資料については、自己判断で「復元」するのではなく、取引先から正規の再発行を受けられるか、他の資料で代替できるかを確認する必要があります。
なぜこれほどまでに厳しく扱われるのでしょうか。
それは、申請に添付する請求書や注文書が、単なる紙切れではなく、「過去の取引の事実を確認するための重要な証拠資料」として扱われるからです。それを意図的に改変する行為は、審査を行う行政の判断を誤らせる、悪質な妨害行為と見なされます。たとえ「経験があったのは事実だ」と主張しても、証拠となる書類を偽造した時点で、その主張全体の信憑性が失われてしまうのです。
また、工事の請負契約に基づかない、いわゆる「人工出し」の経験は、原則として実務経験に認められません。この点を混同し、証明のために請求書の内容を「請負工事」であるかのように書き換える行為も、当然ながら虚偽申請にあたります。
「行政書士に任せたから」は通用しない事業主の責任
万が一、虚偽申請が発覚した場合、「専門家である行政書士にすべて任せていたので、中身は知らなかった」という言い訳は通用するのでしょうか。
結論として、そのような説明だけで責任を免れるとは限りません。
建設業許可の申請者は事業者自身であり、申請内容について十分に確認することが重要です。ただし、虚偽申請が発生した場合の行政上・刑事上の責任は、誰が虚偽を認識し、どのように関与したかなど、個別の事情によって判断されます。
「行政書士に任せていた」という事情だけで当然に責任を免れるとも、反対に事業者が必ず責任を負うとも一概にはいえません。だからこそ、提出前に申請内容を確認し、不自然な資料作成を求められた場合には、そのまま進めないことが重要です。

虚偽申請が発覚した場合の2つの重大なリスク
虚偽申請は、発覚した場合に事業継続へ重大な影響を及ぼす可能性があります。事業者様を待ち受けているのは、「行政処分」と「刑事罰」という、きわめて重い2つのペナルティです。これは、無許可営業のリスクとは比較にならないほど深刻です。
リスク①:許可の取消しと5年間の許可取得制限(行政処分)
不正な手段で許可を取得したことが明らかになった場合、建設業法に基づき、その許可は取り消されます。
さらに重要なのは、許可取消し後の欠格要件です。虚偽又は不正の事実に基づいて許可を受けたことなどを理由に許可取消処分を受けた場合、その事業者は一定期間、再び許可を受けることができなくなります。また、法人の場合には、取消しに関係する一定の役員等も欠格要件の対象となる場合があります。欠格期間は原則として取消しの日から5年間です。
これは、5年間は建設業許可が必要となる工事を請け負えなくなることを意味します。許可が前提となる公共工事の入札参加にも、重大な支障が生じます。多くの建設業者にとって、許可を必要とする工事を受注できなくなることは、事業継続に大きな影響を及ぼします。役員の交代などで許可の継続性が途切れるだけでも大問題ですが、虚偽申請による取消処分は、事業の未来そのものを奪う行為なのです。
リスク②:拘禁刑または罰金、そして「告発」(刑事罰)
虚偽申請は、行政処分だけで終わるとは限りません。建設業法には厳しい罰則が定められており、悪質なケースでは刑事事件として立件される可能性があります。
建設業法上、虚偽申請に関する罰則は行為の内容によって異なります。
虚偽又は不正の事実に基づいて実際に建設業許可を受けた場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となり得ます。
一方、許可申請書や添付書類に虚偽の記載をして提出した場合にも、別途、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。
今回の神奈川県の事案のように、行政が警察に「告発」し、検察が「起訴」するという流れをたどれば、事業者様自身が刑事手続の対象となる可能性があります。
申請書類であっても、虚偽の内容を提出すれば、行政処分や刑事責任につながる可能性があります。建設業許可だけでなく、例えば電気工事業など他の法律が関わる業種では、さらに複雑な問題に発展する可能性もあります。
虚偽申請をしないための「3つの鉄則」
では、どうすればこのような最悪の事態を避け、安全に建設業許可を取得できるのでしょうか。神奈川県の厳格化方針を踏まえ、私たちが守るべきは、以下の「3つの鉄則」です。これは、許可申請における基本中の基本であり、事業者様と行政書士が必ず共有すべき心構えです。
鉄則①:証明できない事実は申請書に書かない
これが最も重要な大原則です。「長年この仕事をしてきたから、経験年数はクリアしているはずだ」という記憶や確信があったとしても、それを裏付ける客観的な資料(請求書、注文書、確定申告書など)で裏付けられない経験を、許可要件を満たす経験として無理に申請しないほうがよいです。
建設業許可の申請では、実際に経験があったとしても、許可要件として主張するためには、神奈川県が求める確認資料によってその期間や内容を裏付ける必要があります。資料が不足している場合は、別の資料で補えるかを確認し、それでも証明できない期間を無理に経験年数へ算入しないことが重要です。
鉄則②:不足している資料を後から「作らない」
証明に必要な書類がどうしても見つからない。そんな時、「パソコンで作り直せばいい」と考えてしまうのは非常に危険です。前述の通り、過去の日付の書類を後から作成する行為は「復元」ではなく「偽造」と見なされるリスクがきわめて高いです。
資料がないという現実を、まずは正直に受け止めましょう。その上で、他の資料で代替できないか、別の方法で経験を証明できないかを探るのが正しいアプローチです。例えば、確定申告書を紛失した場合の対処法のように、正当な手続きで代替書類を取得する方法も存在します。それでも要件を満たせない場合は、現時点での申請を見送る判断が必要です。
鉄則③:判断に迷う点は必ず行政に事前相談する
「この工事経験は、申請したい業種の実績として認められるだろうか」「この書類は、証明資料として通用するだろうか」など、申請実務では判断に迷うグレーゾーンが必ず出てきます。
こうした点については、自己判断だけで申請を進めることは避けるべきです。私たち専門家でさえ、判断に迷うケースでは、必ず申請先の行政窓口(神奈川県庁の建設業課など)に電話や訪問で事前相談を行います。これは、遠距離通勤者の常勤性など、個別の事情が絡む複雑なケースでは特に重要です。
行政の見解を事前に確認しておくことで、申請が受理されない、あるいは後から虚偽を疑われるといった無用なトラブルを未然に防ぐことができます。誠実な申請プロセスは、適正な審査を受けるための重要な前提です。もしご自身で判断に迷う場合は、専門家への相談も積極的にご活用ください。
まとめ:事実に基づく適法な申請が重要
今回の神奈川県の厳正対応は、決して他人事ではありません。これは、建設業界全体に対して、コンプライアンス遵守の重要性を改めて問いかける強いメッセージです。
許可を急ぐあまり、あるいは「これくらいなら」という軽い気持ちで事実に反する申請をしてしまう。その一瞬の過ちが、事業の停止、多額の罰金、そして刑事罰という取り返しのつかない結果を招く可能性があります。
遠回りに見えるかもしれませんが、事実に基づいて書類を一つひとつ集め、証明できないことは正直に認め、誠実に申請手続きを進めること。それこそが、建設業許可を適法に取得するために重要な進め方です。当事務所では、お客様の状況を丁寧にお伺いし、法令を遵守した上で許可取得の可能性を探るお手伝いをしています。ご不安な点があれば、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
解体工事の実務経験が認められない?無登録期間に要注意!
「10年解体工事をしてきた」その経験、本当に証明できますか?
「解体工事はもう10年以上やっている。だから、実務経験で建設業許可を取りたいんです」
先日、ある事業者様からこのようなご相談を受けました。お手元には過去の注文書や請求書もしっかりと保管されており、一見すると10年以上の経験を証明できそうに思えました。
しかし、詳しくお話を伺い、資料を拝見していくと、ある重大な点に気づきました。その10年以上の経験の中には、法令で定められた「解体工事業登録」をしていない期間が含まれていたのです。
「実際に工事をしていたんだから、問題ないのでは?」と感じるかもしれません。しかし、建設業許可の審査では、その経験が「法令を遵守した上で行われたものか」が厳しく問われます。たとえ事実として工事を行っていたとしても、その工事を行うために必要な登録をしていなかった期間は、残念ながら実務経験として認められない可能性が高いのです。
この事業者様のケースでは、どの期間が登録済みで、どの期間が無登録だったのかを時系列で整理し直し、証明可能な経験年数を再計算することから始めました。これは、解体工事業の許可申請において、事前確認が不足しやすいポイントの一つです。
この記事では、なぜ長年の解体工事の経験がそのまま実務経験として認められないケースがあるのか、その背景にある法律のルールと、ご自身の経験を確認するための具体的なステップについて、専門家の視点から詳しく解説していきます。建設業許可の全体像については、営業所技術者等の実務経験10年証明で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。
解体工事に関わる2つのルール:「建設業法」と「建設リサイクル法」
なぜ解体工事の実務経験証明は、他の建設工事の業種と比べて注意が必要なのでしょうか。その理由は、解体工事が「建設業法」と「建設リサイクル法」という2つの異なる法律によって規制されているからです。
多くの事業者の皆様は「建設業法」についてはよくご存知ですが、「建設リサイクル法」に基づく「解体工事業登録」の存在を見落としてしまうことがあります。この2つのルールの関係性を正しく理解することが、実務経験の問題を解決する第一歩となります。
500万円以上の工事に必要な「建設業許可」
まず、「建設業法」が定めるルールです。原則として、消費税込みで1件の請負金額が500万円以上の解体工事を請け負う場合には、「建設業許可」が必要となります。これは、大規模な工事を適正に施工できる技術力や財産的基礎などを備えていることを前提に、国または都道府県が行う許可制度です。
この許可を取得するためには、経営経験のある役員や、資格または10年以上の実務経験を持つ技術者の配置など、厳しい要件をクリアしなければなりません。皆様が目指しているゴールは、この「建設業許可(解体工事業)」の取得かと思います。しかし、500万円未満の軽微な工事だからといって、何の制約もないわけではないのが解体工事の難しいところです。
500万円未満でも必須の「解体工事業登録」
ここが最も重要なポイントです。建設業許可が不要な500万円未満の解体工事であっても、それを業として行う場合には、原則として「解体工事業登録」が必要になります(ただし、土木一式工事業・建築一式工事業・解体工事業のいずれかの建設業許可を受けている事業者は、別途解体工事業登録を受ける必要はありません。)。これは「建設リサイクル法」という法律で定められた義務です。
建設リサイクル法は、建設工事で発生するコンクリートがらやアスファルト、木くずなどの廃棄物を分別し、再資源化を促進するために制定されました。特に解体工事は大量の廃棄物を生むため、不法投棄などを防ぎ、適正な処理を確保する目的で、小規模な工事にも「登録」という形で行政の監督を及ぼしているのです。
つまり、解体工事を業として行う場合、500万円未満であれば原則として解体工事業登録が必要で、500万円以上の解体工事を請け負う場合には建設業許可が必要です。これは、例えば電気工事におけるみなし電気工事業者の届出のように、建設業法とは別の法律で規制が課されている特殊なケースなのです。

なぜ?「無登録」期間の工事が実務経験にならない理由
「500万円未満の工事に登録が必要なのは分かった。でも、実際に工事をしてきた事実に変わりはないのに、なぜ経験として認められないんだ?」と疑問に思われる方も多いでしょう。
その理由は、建設業許可における「実務経験」が、単なる作業経験ではなく、「法令を遵守した適正な工事経験」を指すからです。
500万円未満の解体工事を行うために解体工事業登録が必要であるにもかかわらず、その登録をせずに行った工事は、残念ながら法令に違反した状態での施工となります。行政庁の立場から見れば、法令違反の行為を「適正な経験」として評価することはできない、というわけです。
事実、神奈川県の「建設業許可申請の手引き」によれば、神奈川県では、建設リサイクル法上の登録が必要であったにもかかわらず、無登録で行われた解体工事は、建設業許可の実務経験として認められません(ただし、土木一式工事業・建築一式工事業・解体工事業の建設業許可を受けていたなど、そもそも解体工事業登録が不要であった期間は除きます)。
このように、実務経験の審査では、曖昧な工事内容の記載だけでなく、その工事を行った当時、法令上必要な許可や登録を備えていたかという点まで確認されます。
許可申請の前に!あなたの実務経験を確認する3つのステップ
では、ご自身の経験が建設業許可の要件を満たすかどうか、どのように確認すればよいのでしょうか。焦って申請書類の準備を始める前に、まずは以下の3つのステップでご自身の状況を冷静に整理してみましょう。この事前の資料確認が、スムーズな許可取得の鍵を握ります。
Step1:過去の工事実績を時系列で整理する
まずは、漠然とした「10年以上」という記憶を、具体的なデータに落とし込む作業から始めます。お手元にある契約書や注文書、請求書などを元に、過去に請け負った解体工事をできる限りリストアップしてください。
- いつからいつまでの工事か(工事期間)
- どのような建物の解体だったか(工事内容)
- 請負金額はいくらか
これらの情報を時系列で書き出すことで、ご自身の経験の全体像が明確になります。もし、古い確定申告書などの書類を紛失していても、まずは覚えている範囲で整理してみることが大切です。

Step2:工事期間と「登録・許可の有無」を照合する
次に、Step1で作成した工事リストと、自社の「解体工事業登録」や「建設業許可」の状況を照らし合わせます。ここが最も重要なプロセスです。
それぞれの工事を行っていた期間に、以下のいずれかの資格を有効に保有していたかを確認してください。
- 解体工事業登録
- 建設業許可(土木一式工事業、建築一式工事業、解体工事業)
お手元にある「登録通知書」や「許可通知書」で有効期間を確認しましょう。もし書類が見当たらない場合は、登録や許可を受けた都道府県の担当部署に問い合わせることで確認できる場合があります。他県での経験がある場合は、その県の状況も確認が必要です。
ここで注意したいのは、解体工事業登録は工事を行う都道府県ごとに必要だという点です。例えば、神奈川県の登録しか受けていない期間に東京都で解体工事を行っていた場合、その東京都内の工事については別途東京都の登録状況を確認する必要があります。
Step3:証明可能な実務経験年数を正確に算出する
最後に、Step2の照合作業で「適法な状態(登録・許可あり)」で行われたと確認できた工事期間だけを抜き出して、合計年数を算出します。
この結果、ご自身が想定していた年数よりも大幅に短くなってしまうケースも少なくありません。「12年やっていたつもりが、登録期間を計算したら7年しかなかった…」ということも現実に起こり得ます。
もし、この時点で経験年数が10年に満たないことがわかっても、決して無駄ではありません。現状を正確に把握することで、資格取得など他の方法を検討したり、あと何年経験を積めばよいのか具体的な計画を立てたりすることができます。まずは正確な現状把握が不可欠なのです。
まとめ:実務経験の証明は専門家への相談が有効です
ここまで見てきたように、解体工事業の建設業許可を実務経験で取得しようとする場合、他の業種にはない特有の注意点が存在します。建設業法と建設リサイクル法という2つの法律が関わるため、手続きが複雑になりがちです。
ご自身の思い込みで申請を進めてしまい、後から無登録期間を指摘されて不許可になってしまうと、時間も労力も無駄になってしまいます。そうしたリスクを避けるためにも、申請書類を準備する前に、一度専門家に相談することをお勧めします。
当事務所では、行政書士として建設業許可申請をサポートするだけでなく、司法書士・社会保険労務士の資格も保有しております。許認可の取得はもちろん、その後の会社運営や労務管理まで、事業の成長を多角的にサポートすることが可能です。
「自分の場合はどうなんだろう?」と少しでも不安に感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。ご相談の際に完璧な資料は不要です。一緒に状況を整理し、許可取得に向けた現実的な進め方を一緒に整理していきましょう。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
資格を持っていても専任技術者になれない?「常勤性」で止まった建設業許可の事例
資格を持っていても営業所技術者になれない?標準報酬月額9.8万円から判明した「常勤性」の問題
「資格を持っている親戚がいるので、この人を営業所技術者にして建設業許可を取りたいんです」
ある建設会社の社長から、新規の建設業許可申請についてご相談をいただいたときのことです。お話を伺うと、親族の中に申請予定業種に必要な資格を持つ方がおり、その方を営業所技術者等(旧・専任技術者)として申請したいとのことでした。
そこで、常勤性を確認するため、社会保険関係の資料を拝見しました。すると、標準報酬決定通知書に記載されたその方の標準報酬月額は「98千円」。
標準報酬月額98千円は、実際の月給が必ず98,000円という意味ではありません。しかし、通常のフルタイム勤務をしている従業員として見ると、かなり低い水準です。
「この方は、普段どのくらい会社に来ていますか?」
詳しく事情を伺ってみると、社長から返ってきたのは、
「資格を持っている親戚なので給与は払っていますが、実際にはたまに会社に来るくらいなんです」
というお話でした。
ここで問題となるのは、資格の有無ではなく「常勤性」です。営業所技術者等は、原則としてその営業所に常勤し、専らその職務に従事する必要があります。資格を持っていても、たまにしか出勤しない状態では、営業所技術者等として認めてもらうことは難しくなります。
この事例では、標準報酬月額「98千円」という一つの数字がきっかけとなり、営業所技術者として申請できる勤務実態なのかを改めて確認することになりました。標準報酬月額98千円という資料を見れば、「本当に営業所で常勤しているのか」「短時間勤務ではないのか」と確認すべき事情になります。そのため、「他に本業があるのではないか?」「名前を借りているだけ(名義貸し)ではないか?」といった疑念を持たれてしまうのです。
この記事では、なぜ給与額が低いと常勤性が問題になるのか、実際の相談事例を交えながら、その理由と具体的な解決策を専門家の視点から詳しく解説していきます。建設業許可の全体像については、建設業許可の要件で体系的に解説しています。
なぜ標準報酬月額が低いと「常勤性」を確認されるのか?
建設業許可の審査において、行政庁が専任技術者の給与額、特に社会保険の標準報酬月額に注目するのはなぜでしょうか。それは、標準報酬月額が「常勤性」、つまりその会社で恒常的に勤務しているという実態を客観的に示す、極めて重要な指標だと考えられているからです。
建設業法では、営業所技術者等を営業所ごとに専任で設置することが求められ、その営業所に常勤している必要があります。これは、見積、入札、請負契約締結等が各営業所で行われることを踏まえ、許可を受ける業種について専門的知識を有する者を営業所ごとに配置し、請負契約の適正な締結・履行を確保するための重要なルールです。
もし、専任技術者がごくたまにしか出勤せず、給与もお小遣い程度だとしたらどうでしょう。その人は本当に会社の技術的な責任を担っていると言えるでしょうか。行政庁は、このような「名義貸し」に近い状態を防ぐため、給与額と勤務実態の整合性を厳しく審査するのです。
社会保険加入だけでは不十分!標準報酬月額の意味
「社会保険にはちゃんと加入しているから大丈夫ですよね?」というお声もよく聞きます。しかし、社会保険に加入しているという事実だけで、営業所技術者等の常勤性まで当然に認められるわけではありません。
建設業許可では、社会保険の適用事業所について適切な加入が求められますが、営業所技術者等については、それとは別に、その営業所に常勤している実態を確認する必要があります。
その常勤性を確認する資料の一つが「標準報酬月額」です。
標準報酬月額とは、基本給や各種手当などを含む報酬月額を一定の等級に区分した、社会保険料を計算する基礎となる金額です。通常は毎年4月から6月までに支払われた報酬をもとに定時決定されます。
したがって、標準報酬月額が98千円だからといって、「実際の月給がちょうど98,000円」という意味ではありません。ただし、98千円の等級は報酬月額93,000円以上101,000円未満に対応しており、通常のフルタイム従業員として見ると、かなり低い水準です。
今回のケースでも、標準報酬月額が98千円だったことから、「本当にこの方は営業所で常勤しているのだろうか」「短時間勤務ではないのか」と勤務実態を詳しく確認するきっかけになりました。
例えば単純計算として、神奈川県で月170時間勤務すると仮定すれば、2026年9月時点の最低賃金1,225円でも、170時間分の賃金は約20万8千円となります。実際の最低賃金の判定では、所定労働時間や賃金の内訳をもとに個別に確認する必要がありますが、標準報酬月額98千円という数字は、通常のフルタイム勤務を想定した場合には大きな違和感があります。
社会保険労務士の視点から見ても、このような数字が確認できた場合には、標準報酬月額だけで結論を出すのではなく、実際の勤務時間、給与額、賃金台帳、勤怠記録などを確認し、勤務実態との整合性を確かめる必要があります。
出勤簿や賃金台帳との整合性が問われる
常勤性は標準報酬決定通知書など所定の確認資料で審査されますが、勤務実態に疑義がある場合には、賃金台帳や出勤簿など追加資料による確認を求められることがあります。そのため、社会保険の記録、給与、勤怠の内容が実態と整合していることが重要です。
例えば、以下のようなケースは虚偽申請を疑われる典型例です。
- 標準報酬月額は98,000円なのに、出勤簿上は毎日8時間、週5日勤務していることになっている。
- 賃金台帳の支給額と、社会保険料の計算基礎となる報酬額に大きな乖離がある。
これらの矛盾は、「書類上だけフルタイム勤務に見せかけているのではないか」という疑念に直結します。許可を取得するためには、社会保険の記録、給与の支払い記録、そして日々の勤怠記録という3つの情報が、「当社の営業所で常勤しており、その勤務実態に見合った給与が支払われている」という一貫して確認できる必要があります。適切な給与計算と勤怠管理は、許可申請の土台とも言えるでしょう。
また、言うまでもありませんが、営業所技術者等の兼務が問題となるケースため、その点も厳しく確認されます。
(参考:建設業法(昭和二十四年法律第百号))
【実例】資格を持つ親族を専任技術者にしようとした失敗談
抽象的な説明だけでは、実際のリスクを把握しにくい場合があります。ここで、私が実際に経験した相談事例をご紹介します。この話は、多くの経営者が陥りがちな「思い込み」の危うさを教えてくれます。
発覚のきっかけは「標準報酬決定通知書」の報酬月額
それは、ある建設会社の社長から新規の許可申請についてご相談いただいた時のことでした。一通りの資料を拝見する中で、私は一枚の書類に目を留めました。専任技術者候補となる方の「標準報酬決定通知書」です。
そこに記載されていた標準報酬月額は「98千円」でした。標準報酬月額は実際の給与額そのものではありませんが、98千円の等級は月々の報酬が概ね10万円前後であることを示します。
この数字を見て、私は勤務実態を詳しく確認する必要があると感じました。仮に月170時間程度のフルタイム勤務であれば、この水準は神奈川県の最低賃金から計算される賃金額を大きく下回るからです。
私は社長に、その方の勤務状況について詳しくお話を伺うことにしました。
「実は、資格を持っている親戚がいまして。普段は別の仕事をしているんですが、名前を借りる形で籍を置かせてもらっているんです。給与も、まあお礼程度ということでこの金額で…」
社長のお話は、私が懸念していた通りの内容でした。悪気はないのです。しかし、この「資格を持っているから大丈夫だろう」という安易な考えが、許可取得が困難になるところでした。

ヒアリングで判明した「たまに来るだけ」という勤務実態
さらにヒアリングを進めると、「会社にはたまに顔を出す程度」という、常勤とは到底言えない勤務実態が明らかになりました。社長は、社会保険に加入し、給与を支払っていれば問題ないと考えていらっしゃったのです。
私は、この状態が建設業法で固く禁じられている「名義貸し」と判断されかねない、非常に危険な状態であることを丁寧にご説明しました。専任技術者は、文字通りその営業所に「常時」いて「専ら」その業務に従事する人でなければなりません。たまにしか出勤しない勤務実態では、建設工事に関する技術的な管理責任を継続的に担っているとは説明しにくくなります。
このまま申請すれば、許可が下りない可能性が高く、事情によっては虚偽申請として問題視されるおそれもありました。表面的な書類だけでなく、その背景にある実態までしっかりと確認すること。それが私たち専門家の重要な役割なのです。
常勤性を満たすための2つの具体的な解決策
「では、うちはもう許可が取れないのでしょうか…」
事実をお伝えすると、社長は不安そうな表情を浮かべられました。しかし、問題点を整理したうえで、対応策を検討しました。私は、この状況を打開するための具体的な解決策を2つご提案しました。
選択肢1:常勤可能な別の技術者を専任にする
一つ目の方法は、問題となっている親族の方ではなく、社内にいる別の方や、新たに採用する方を専任技術者にするという選択肢です。
例えば、他に国家資格や実務経験の要件を満たす正社員の方がいれば、その方を専任技術者として申請します。この方法のメリットは、常勤性の要件について説明しやすくなり、申請上の不安要素を減らせることです。
一方で、デメリットとしては、社内に適任者がいない場合は新たに人材を採用する必要があり、採用コストや人件費が増加する可能性が挙げられます。今回のケースのように、親族の方の勤務形態をどうしても変えられない事情がある場合には、有効な選択肢となります。許可の維持には、役員や技術者の交代時に空白期間を作らないよう注意が必要です。
選択肢2:勤務実態と給与を常勤に見合う形へ変更する
二つ目の方法は、その親族の方自身の働き方と処遇を、常勤の実態に見合う形へ変更するという、より本質的な解決策です。

社長とご親族に事情を説明し、ご納得いただいた上で、私たちはこの選択肢を取りました。具体的には、以下のステップを踏みました。
- 勤務実態の変更:「たまに来るだけ」の状態から、営業所の営業時間内は常時勤務する、いわゆるフルタイム勤務(例:1日8時間、週40時間)へと勤務実態を改めていただきました。
- 給与額の変更:実際の所定労働時間に応じて最低賃金法を満たし、かつ勤務実態に見合った適正な給与水準に変更しました。
- 社会保険手続き:固定的賃金の変動後、随時改定の要件(継続3か月の報酬、支払基礎日数、2等級以上の差など)を満たすことを確認したうえで、社会保険労務士として年金事務所へ「月額変更届」を提出し、標準報酬月額を実態に合わせました。
重要なのは、申請の直前に給与額だけを形式的に変更するのではなく、勤務、給与、社会保険の届出という3つの実態をすべて整合させ、実際に「常勤している状態」を作ってから申請に臨むことです。この一連の手続きを正確に行うことで、私たちは無事に建設業許可を取得することができました。当事務所の社会保険労務士顧問サービスでは、こうした労務管理の適正化もサポートしています。
まとめ:許可申請前に技術者の給与と勤務実態の確認を
建設業許可を取得できるかどうかは、単に資格を持った人がいるかどうかだけでは決まりません。その人が「常勤の専任技術者」として、勤務実態、給与水準、社会保険の記録、そのすべてにおいて矛盾なく証明できるかが重要です。
特に、親族や高齢のOB社員に技術者をお願いしようとお考えの場合、申請準備を始める前に、必ず以下の点を確認してください。
- 標準報酬月額は、常勤の従業員として不自然なほど低くないか?
- 出勤簿やタイムカードで、恒常的な勤務実態を客観的に示せるか?
- 他に本業を持っていたり、他社の役員を兼任していたりしないか?
「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断が、後で申請手続き上の大きな支障となります。もし少しでも不安な点があれば、ぜひお早めに専門家にご相談ください。
当事務所は、行政書士(許可申請)、社会保険労務士(労務管理・社会保険)、司法書士(登記)の各分野に対応しています。許可申請のことから、それに伴う社会保険の手続き、役員変更の登記まで、ワンストップで貴社をサポートいたします。まずは、お気軽に無料相談をご利用ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
専任技術者の兼任は不可!転職時の登録抹消忘れトラブル事例
【トラブル事例】良かれと思った営業所技術者等(旧・専任技術者)の届出が行政からストップ!
事業拡大を目指す建設会社のB社は、経験豊富なAさんを迎え入れました。Aさんは以前、建設会社X社で専任技術者を務めていたベテランです。B社はAさんを新たに専任技術者として登録するため、早速、行政庁へ変更届を提出しました。
変更届はいったん収受されました。B社の社長も一安心。これで新しい体制で事業を加速できる、そう考えていました。
しかし、その数週間後、事態は急変します。行政庁の担当者から、一本の電話がかかってきたのです。
「B社さんですか?先日ご提出いただいたAさんの専任技術者登録の件ですが、Aさんはまだ前職のX社で専任技術者として登録が残っている状態です。このままでは二重登録になってしまうため、この状態ではB社の営業所技術者等として認めることができません。まずX社側の届出状況を整理してください。」
突然の連絡に、B社の社長は対応に戸惑いました。Aさんに確認すると、「X社はもう解散したと聞いているのですが…」とのこと。良かれと思って進めていた建設業許可の手続きが、思わぬ形で一時的に進められなくなったのです。
実は、このような「登録抹消忘れ」のトラブルは、決して珍しい話ではありません。幸い、このケースではX社の廃業届が未提出だったことが判明し、そちらの手続きを進めることでAさんの登録は無事に抹消され、B社での専任技術者登録を完了できました。しかし、一歩間違えれば、許可の維持に関わる重大な問題に発展しかねない状況でした。
なぜ、このような事態が起きてしまうのでしょうか。この記事では、その根本的な原因から具体的な対処法、そして未然に防ぐためのチェックポイントまで、専門家の視点から詳しく解説していきます。
なぜ専任技術者は2社で兼任できないのか?「常勤性」の原則を解説
今回のトラブルの根底にあるのは、建設業法が定める「常勤性の原則」という非常に重要なルールです。建設業許可を維持するためには、常勤役員等(経営業務管理責任者等)や営業所技術者等(旧・専任技術者)が、申請会社で常勤し、営業所技術者等については勤務を要する営業所で専らその職務に従事している必要があります。このテーマの全体像については、建設業許可の要件で体系的に解説しています。
なぜ法律は、ここまで厳格に「常勤」であることを求めるのでしょうか。それは、建設業許可が、国民の生活や安全に直結する重要なインフラを担う事業者に対して与えられる、社会的信用の証だからです。許可業者は、常に適正な経営と確かな技術力を保持し、責任ある施工体制を維持する義務があります。
そのためには、経営や技術の責任者が、片手間ではなく、その会社に腰を据えて日々の業務に専念していることが大前提となります。もし、一人の技術者が複数の会社を掛け持ちできてしまうと、責任の所在が曖昧になり、建設工事の品質や安全性の確保が難しくなる恐れがあるのです。「常勤性の原則」は、建設業許可制度の信頼性を支える重要なルールと言えるでしょう。神奈川県の手引きでも、他の建設業許可業者の常勤役員等、補佐者、営業所技術者等、令3条使用人と重複している場合や、他で常勤している場合は許可できないと明記されています。

「常勤」とは?具体的な判断基準
では、法律上の「常勤」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。これは単に「毎日会社に来ている」というだけでは不十分で、行政庁は以下の要素を総合的に見て判断します。
- 勤務場所と時間: 許可を受けようとする営業所の営業日・営業時間において、常時勤務していること。
- 勤務実態: 役員・従業員などの立場に応じて、申請会社で継続して勤務している実態が確認できること。
- 社会保険等の加入状況: 適用事業所に該当する場合は、勤務先で健康保険や厚生年金保険、雇用保険に適切に加入していること。適用除外に該当する場合もあります。
- 他の職務との関係: 他の法人で常勤の役員であったり、個人事業主であったりしないこと。
特に注意が必要なのは、他社での役職や事業です。たとえ名目上だけであっても、他社の代表取締役などに就任している場合は、「その会社での職務に専念している」と見なされ、常勤性が否定される可能性が非常に高くなります。
退職しても登録は自動で消えない!行政手続きの仕組み
多くの経営者が誤解しがちな点ですが、従業員が会社を退職したからといって、行政庁に登録されている専任技術者としての情報が自動的に消えることはありません。
建設業許可に関する情報は、すべて許可業者からの「届出」に基づいて管理・更新されています。つまり、専任技術者が退職した場合、会社側が「この人が辞めたので、登録から外してください(または後任のこの人に交代します)」という変更届を提出しない限り、データ上はその人が在籍し続けていることになってしまうのです。
冒頭の事例でB社が直面した問題の核心は、まさにこの点にあります。X社がAさんの退職(あるいは会社の解散)に伴う手続きを行っていなかったため、Aさんの登録情報が行政庁の記録上に残っていた、というわけです。
専任技術者の登録が残っていた場合の具体的な対処法
もし採用した人材に前職の登録が残っていることが判明した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。慌てずに、以下のステップで進めていきましょう。
ステップ1:前職の登録状況を確認する
まずは、情報の正確性を担保するために、管轄の行政庁(都道府県の建設業課など)に問い合わせ、登録状況を正式に確認することが第一歩です。「〇〇という人物が、以前△△という会社で専任技術者として登録されていたか、またその登録が現在も有効か確認したい」といった形で問い合わせます。
自治体によっては電話で回答してくれる場合もありますが、個人情報保護の観点から、書面での閲覧申請が必要になることもあります。不確かな情報で動く前に、まずは公的な記録を確認し、現状を正確に把握することが重要です。
ステップ2:前職の会社に「変更届」の提出を依頼する
前職の会社が現在も営業している場合は、その会社に連絡を取り、専任技術者の削除または交代の「変更届」を提出してもらうよう依頼するのが最も基本的な解決策です。
その際、ただ「手続きをしてください」と伝えるだけでなく、採用したご本人から事情を説明してもらのがスムーズでしょう。会社としては、退職した元従業員のために手間をかけることになるため、丁寧なコミュニケーションが求められます。場合によっては、変更届の作成に必要な情報をこちらで準備するなど、協力的な姿勢を示すことも円満な解決につながります。神奈川県など一部の自治体では、届出の郵送が可能なケースもありますので、前職の会社の負担を軽減する方法を一緒に考えてあげるのも一つの手です。
【特殊ケース】前職の会社が解散・廃業している場合
冒頭のB社の事例のように、前職の会社がすでに存在しない場合は話が少し複雑になります。この場合、確認すべきは「変更届」ではなく、「廃業届」が提出されているかどうかです。
会社が法的に事業を辞めた場合、建設業許可についても廃業届を提出する義務があります。X社が建設業を全部廃業するのであれば廃業届を提出し、許可業者としての登録を整理する必要があります。一部業種のみの廃業であれば、営業所技術者等の変更届等も必要になります。
もし、会社は解散しているのに廃業届が未提出という状況であれば、清算人など、法令上届出を行える立場にある人に連絡し、廃業届を提出してもらう必要があります。しかし、連絡先が不明であったり、協力を得られなかったりすることも少なくありません。このような困難なケースでは、行政庁と相談しながら対応を進める必要があり、必要に応じて行政書士へ相談することも有用です。
トラブルを未然に防ぐ!採用時に確認すべきチェックポイント
一度トラブルが起きてしまうと、解決までに時間も労力もかかります。最も賢明なのは、こうした問題を未然に防ぐことです。採用活動の段階で、以下のポイントをチェックする習慣をつけましょう。

面接時:建設業許可に関する経歴のヒアリング
専任技術者や経営管理責任者としての採用を検討している候補者には、面接の段階で建設業許可に関する経歴を具体的にヒアリングすることが重要です。以下の質問は必ず確認するようにしましょう。
- 「過去に、他の会社で専任技術者や経営管理責任者として登録されていた期間はありますか?」
- 「もし登録されていた場合、その会社を退職される際に、ご自身の登録を抹消する手続き(変更届の提出)が行われたか把握していますか?」
候補者本人が手続きの詳細まで把握していないケースも多いですが、この質問をすることで、会社として「常勤性」や「二重登録」の問題を重要視しているという姿勢を示すことができます。また、実務経験の証明など、他の要件を確認する上でも重要な情報となります。
内定後:前職での登録抹消手続きの確認
面接で過去の登録歴が判明した場合は、内定を出した後、入社日までの間に具体的なアクションを取ってもらうことが肝心です。
候補者本人から前職の会社に連絡してもらい、自身の登録が現在どうなっているかを確認し、もし残っているのであれば、速やかに変更届を提出してもらうよう依頼してもらいましょう。
そして、可能であれば「変更届の控え」など、手続きが完了したことを証明する書類のコピーを提出してもらうようお願いするのが最も確実です。口約束だけでなく、書面で確認することで、入社後の手続きをスムーズに進めることができます。
【よくある質問】他社の代表取締役でも専任技術者になれる?
専任技術者の兼任問題に関連して、非常によくいただく質問の一つが「自社の役員が、別の会社で代表取締役もやっているんだけど、専任技術者になれる?」というものです。
原則は不可!常勤性の証明が極めて困難な理由
結論から言うと、他社の代表取締役を兼務している方が専任技術者になるのは、原則として認められません。その理由は、やはり「常勤性の原則」にあります。
代表取締役は、その会社を代表して業務を執行する法律上の重い責任を負っています。社会通念上、代表取締役は「その会社に常勤している」と見なされるのが一般的です。そのため、別の会社で「専らその職務に従事する」専任技術者になることは、論理的に両立が難しいと判断されてしまうのです。
行政庁によっては、非常勤であることの証明書などを提出すれば認められる可能性もゼロではありません。他社に代表取締役等が複数おり、その会社では非常勤であることが客観的に確認できる場合など、例外的に認められるケースがあります。神奈川県の手引きでも、他社の代表取締役等である場合の取扱いが明示されています。
【事例】複数社の兼任が認められないケース
以前、当事務所にご相談いただいた事例で、この原則を痛感する出来事がありました。
すでに建設業許可をお持ちの小規模なC社の社長から、「事業ごとに会社を分けたくて、別会社を設立してそちらでも許可を取りたいんだよね」というご相談でした。私はすぐにこうお伝えしました。
「社長、新しい会社でも許可を取るとなると、そちらにも専任技術者と経営業務の管理責任者が、それぞれもう一人ずつ必要になりますが、ご準備は大丈夫ですか?」
すると、社長は少し驚いた様子でこう返されました。
「え、そうなの?2社とも事務所は同じ場所にするつもりなんだけど、それでもダメなのかい?」
「はい、たとえ場所が同じでも、法律上は別々の法人格(会社)になります。ですから、それぞれの会社に、専任の要件を満たす方が必要になるんです。社長がお一人で両社の責任者を兼ねることはできません」
この説明に、社長は深く納得されたようでした。結局、新たな人材を確保するハードルが高いことから、新会社の設立と許可取得は断念されることになりました。この事例が示すように、営業所技術者等は、原則として申請会社に常勤し、他社で常勤することはできません。たとえ経営者が同一人物であっても、法人格が異なれば厳格に適用されます。ただし、同じ会社内で複数の業種の専任技術者を兼任することは、一定の要件を満たせば可能です。
まとめ:専任技術者の採用は登録状況の確認が不可欠
今回は、専任技術者の転職・採用時に起こりがちな「登録抹消忘れ」トラブルについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 兼任は不可: 専任技術者は「常勤性の原則」により、複数の会社で同時に登録することはできません。
- 自動抹消はされない: 従業員が退職しても、会社が変更届や廃業届を提出しない限り、行政庁の登録は残ったままになります。
- 事前確認が重要: トラブルを避けるため、採用活動の段階で候補者の過去の登録状況を確認し、必要であれば入社前に抹消手続きを促すことが不可欠です。
建設業許可の手続きは、単純な書類作成だけでなく、こうした目に見えないリスクが潜んでいます。手続きの遅れは、事業計画そのものに影響を与えかねません。「うちの会社は大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じたら、行政書士に相談することで、必要な手続きや確認事項を整理しやすくなります。当事務所では、無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
「10年分の注文書を集めるの?」社員の学歴を調べたら実務経験3年で済んだ建設業許可の事例
「10年分の注文書、本当に必要?」ある空調工事会社の成功事例
「500万円以上の工事を請け負うには、建設業許可が必要ですよ」
このルールはご存知でも、許可取得の具体的なステップで頭を抱える経営者様は少なくありません。
特に、社内に国家資格を持つ従業員がいない場合、営業所技術者等(旧・専任技術者)の要件を満たすためには、原則として10年以上の実務経験を証明する必要があります。これは、10年分の注文書や請求書、契約書などを探し出し、整理するという、相当な時間と手間がかかる作業です。
先日、ご相談にいらした空調工事会社A社の社長も、まさに同じ課題を抱えていました。
「管工事の許可を取りたいのですが、資格者が社内にいなくて…。10年分の書類を集めるしかないと覚悟はしているんですが、正直、途方に暮れています」
必要書類の多さに負担を感じている社長に、私は別の確認方法を提案しました。
「社長、工業系の高校や大学、専門学校を卒業された従業員さんはいらっしゃいませんか?」
すぐには思い当たらなかった社長でしたが、会社に戻って従業員名簿を確認してくださったところ、一人の従業員Bさんが土木工学科を卒業していることが判明したのです。
結果、どうなったか。
A社は、たった3年分の実務経験を証明するだけで、無事に管工事の建設業許可を取得できました。10年分の書類集めという重労働を回避し、スムーズに申請準備を進めることができたのです。
「まさか社員の学歴でこんなに楽になるとは…」。社長の安堵した表情は、今でも忘れられません。この記事を読んでいるあなたも、A社と同じように、別の確認方法が見つかるかもしれません。これから、そのための具体的な方法を詳しく解説していきます。諦める前に、ぜひ一度、従業員の方の経歴を確認してみてください。
より詳しい実務経験の証明方法については、「営業所技術者等(旧・専任技術者)の実務経験証明に必要な書類」のページで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
実務経験期間を短縮できる「指定学科」とは?基本ルールを解説
なぜ、A社は10年ではなく3年の実務経験で許可が取れたのでしょうか。その鍵が「指定学科」制度です。
これは、建設業許可の要件で求められる営業所技術者等(旧・専任技術者)について、国が定めた特定の学科を卒業していれば、建設工事に関する一定の知識があると見なされ、実務経験の証明期間を大幅に短縮できるというものです。
10年分の書類集めに比べれば、従業員の卒業証明書を取り寄せる手間は、はるかに少ないはずです。まずは、この基本ルールをしっかりと押さえておきましょう。

大学・高専卒業なら3年、高校卒業なら5年に短縮
学歴によって、短縮される期間は異なります。具体的には、以下の表のように定められています。
| 学歴 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学・短期大学・高等専門学校の指定学科を卒業 | 3年以上 |
| 高等学校の指定学科を卒業 | 5年以上 |
| 専門学校の指定学科を卒業(専門士・高度専門士) | 3年以上 |
| 専門学校の指定学科を卒業(専門士・高度専門士に該当しない場合) | 5年以上 |
| 上記以外の場合 | 10年以上 |
このように、大学や高専で指定学科を卒業していれば3年、高校であれば5年の実務経験で済むことになります。これは、取得したい建設工事の種類に対応した専門知識を学校で学んでいることが評価されるためです。
対象は「学校教育法」に定められた学校のみ
ここで非常に重要な注意点があります。それは、「建設系の学校なら何でも良い」というわけではない、という点です。
この制度の対象となるのは、建設業法上の要件に該当する学校区分に限られます。具体的には、学校教育法による高等学校・中等教育学校、大学・高等専門学校、専修学校の専門課程(いわゆる専門学校)などが該当します。
一方で、職業訓練校や各種学校は、学校教育法上の指定学科卒業ルートにそのまま当てはまらない場合があります。また、海外の大学についても国内大学と同じ扱いになるとは限りませんが、学歴や履修内容により国土交通大臣の認定を受けられる場合があります。特に「専門学校」については注意が必要です。学校教育法上の「専修学校の専門課程」の指定学科を卒業していることが前提となり、専門士または高度専門士の称号がある場合は3年以上、称号がない場合は5年以上の実務経験が必要です。
「うちの社員が卒業した学校は対象になるのだろうか?」と少しでも疑問に思ったら、自己判断で進める前に、卒業証明書などを取り寄せて確認することが大切です。
要注意!学科名だけで判断してはいけない理由
「よし、うちの社員は工業高校卒だ!これで5年に短縮できるぞ!」
そう確信するのは、まだ少し早いかもしれません。実は、指定学科の判断は、皆さんが思っている以上に複雑で、専門的な知識が求められます。ここで多くの経営者様がつまずいてしまうのです。
行政が発行する手引きには、指定学科の例が記載されていますが、その学科名と卒業証明書の学科名が完全に一致していなくても認められるケースもあれば、逆に、似たような名前でも認められないケースも存在します。この微妙な判断が、申請の成否を分けることになるのです。
手引きの学科名と完全一致しなくても認められるケース
まず、認められる可能性があるケースを確認します。卒業証明書に書かれた学科名が、手引きの例と一言一句同じでなくても、諦める必要はありません。
例えば、学科名が完全一致しなくても、指定学科として整理されている学科名との関係や、学校・学科の認定状況によって認められる場合があります。また、時代の変化とともに学科名も多様化しています。「土木環境科」や「建築デザイン科」のように、「環境」や「デザイン」といった現代的な名称が含まれている学科でも、その中身が実質的に「土木工学」や「建築学」に関するものであれば、指定学科として認められる可能性は十分にあります。
曖昧な記載の工事経験を証明するのと同じように、学科名もその実態が重要になるのです。
判断の決め手は「履修科目証明書」にあり
では、学科名だけでは判断が難しい場合、行政庁の担当者は何を基準に判断するのでしょうか。
その判断材料となるのが、「履修科目証明書」または「成績証明書」です。
これは、その学生が在学中にどのような専門科目を学び、単位を取得したかを詳細に記録した書類です。担当者は、卒業証明書の学科名と併せてこの証明書を確認し、「土木工学概論」や「建築構造力学」といった具体的な科目名から、申請する工事の種類と関連性があるかを判断します。判断に迷う場合は、事前に申請先の行政庁に照会するとよいでしょう。

冒頭のA社の事例では、Bさんの学科名は「土木工学科」でした。管工事業の指定学科には土木工学が含まれているため、卒業証明書や必要に応じた履修科目証明書を確認することで、指定学科に該当する可能性を検討できました。
単に「請負契約」で働いていただけでは実務経験として認められないケースがあるのと同様に、学歴の証明も表面的な名称だけでは不十分なのです。行政庁ごとのローカルルールも存在するため、この判断は非常に専門的です。
卒業校に証明書を請求する際は、「建設業許可申請に利用するため、履修した専門科目が分かる証明書を発行してください」と明確に伝えることをお勧めします。
自分で確認するのは難しい?専門家に相談する3つのメリット
ここまでお読みいただき、「指定学科」制度の可能性と、同時にその判断の難しさもお分かりいただけたのではないでしょうか。
- うちの社員の学歴は、本当に指定学科に該当するのか?
- 卒業校への証明書の請求や、行政庁への事前確認はどう進めればいい?
- もし該当しなかった場合、やはり10年分の書類を集めるしかないのか?
こうした不安や疑問を抱えながら、不確かな情報をもとに手探りで進めるのは、時間的にも精神的にも大きな負担となります。申請準備のやり直しや、予定していた許可取得時期が遅れる可能性があります。
そんな時こそ、私たち専門家にご相談ください。司法書士・行政書士・社会保険労務士が在籍する当事務所にご依頼いただくことで、お客様には3つの大きなメリットがあります。
- 該当性の丁寧な調査
これまでの経験と専門知識に基づき、お客様の従業員の方の学歴が指定学科に該当するかを確認します。履修科目証明書を精査し、行政庁の見解も踏まえた上で、申請に適した方法をご提案します。 - 面倒な書類取得と作成の代行
卒業校への証明書請求のサポートから、複雑な申請書類一式の作成まで、面倒な手続きをすべて代行します。お客様は本業に集中していただけます。 - 行政との事前協議によるスムーズな申請
判断が分かれるような微妙なケースでは、正式な申請前に当事務所が行政庁の担当者と事前協議を行います。論点を整理し、認められる可能性を高めることで、円滑な許可申請につながるよう準備します。
10年分の実務経験証明が必要と思われるケースでも、専門家が要件を確認することで、指定学科や資格など別の方法を検討できる場合があります。当事務所の相談から許可申請までの流れは明確です。まずは「もしかしたらうちも…」と思われたその直感を、ぜひお聞かせください。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
とび・土工だけではもったいない!2級土木施工管理技士で8業種を同時取得した事例
2級土木施工管理技士、とび・土工の許可だけで満足ですか?
「うちの会社には2級土木施工管理技士がいるから、まず『とび・土工・コンクリート工事』の許可を取ろう」
今まさに、このように考えて建設業許可の準備を進めていらっしゃらないでしょうか。もちろん、事業に直結する許可を取得することは非常に重要です。しかし、その資格で要件を満たせる業種を一つだけに限定して申請すると、将来必要になる業種を後から追加する手間や費用が発生する可能性があります。
多くの経営者様が、目の前の「特定の業種許可」という課題に集中するあまり、その資格が持つ本当の価値、つまり取得可能な他の業種について見落としてしまいがちです。
実は、2級土木施工管理技士の資格は、「とび・土工・コンクリート工事」以外にも複数の業種で専任技術者の要件を満たせる場合があります。そして何より重要なのは、最初の新規申請のタイミングであれば、複数の業種を同時に申請しても、行政に支払う手数料は1業種の場合と変わらないケースがほとんどだという事実です。
この記事では、その「もったいない」状況を回避し、将来的な追加費用や手続負担を抑え、事業展開の選択肢を広げるための具体的な方法を、実際の事例を交えながら解説します。建築一式工事以外で税込500万円以上の工事を請け負う場合など、建設業許可が必要となる場面で知っておくべき知識を解説します。
【事例】とび・土工の相談が、追加費用なしで8業種同時取得につながった話
先日、川崎市で事業を営むA社の社長から、こんなご相談をいただきました。
「とび・土工工事業の許可を、なるべく早く取得したいんです」
お話を伺うと、社内には2級土木施工管理技士の資格を持つ従業員の方がいらっしゃるとのこと。これは心強いお話です。早速、その方の資格証を拝見させていただきました。記載されていた種別は「土木」。この資格があれば、A社がご希望の「とび・土工・コンクリート工事」の専任技術者になるための要件は、問題なくクリアできます。
しかし、私の仕事は、ただ言われた通りの書類を作ることではありません。お客様の未来の事業展開まで見据え、その可能性を最大限に引き出すご提案をすることです。私はA社の社長に、こう問いかけました。
「社長、この資格で、とび・土工以外にも追加で申請できる業種があります。解体工事業については、合格年度等によって登録解体工事講習の修了または解体工事に関する実務経験が必要になる場合がありますが、要件を満たせば合計8業種を同時に申請できます。」
社長は、本当に驚かれた様子でした。「え、本当ですか?」と。
私は、その資格が持つポテンシャルを丁寧にご説明しました。2級土木施工管理技士(土木)の資格は、とび・土工・コンクリート工事のほかに、土木一式工事、石工事、鋼構造物工事、舗装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、そして解体工事業という、合計8つの業種で営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。ただし、解体工事業については、合格年度等によって登録解体工事講習の修了または解体工事に関する実務経験が必要になる場合があります。
そして、最も重要なポイントをお伝えしました。
「新規で許可を申請する場合、1業種でもこの8業種すべてでも、神奈川県に支払う審査手数料は9万円で変わりません。もちろん、当事務所の報酬も8倍になるわけではありません。もし将来、他の業種が必要になってから追加しようとすると、その都度、県の審査手数料5万円と申請の手間がかかってしまいますよ」
このご提案に、社長は即決されました。「ぜひ、全部お願いします!」と。

結果として、A社は当初の目的だった「とび・土工・コンクリート工事」だけでなく、将来の事業拡大に活用できる合計8業種の許可を、追加の審査手数料なしで一度に取得されました。これは、お客様の状況を深くヒアリングし、資格の価値を最大限に引き出す視点があったからこそ実現できた事例です。
2級土木(種別:土木)で同時取得できる8業種の一覧と工事内容
A社の事例でご紹介したように、2級土木施工管理技士の資格者証の種別が「土木」の場合、一般建設業許可において以下の8業種の専任技術者になることができます。建設業許可の29業種ありますが、この資格一つでこれだけの範囲をカバーできるのは大きな強みです。
具体的にどのような工事がそれぞれの業種に含まれるのか、将来の事業展開をイメージしながら確認してみましょう。
| 業種名 | 工事内容の例 |
|---|---|
| 土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(例:道路工事、河川工事、橋梁工事など) |
| とび・土工・コンクリート工事 | 足場の組立て、掘削、コンクリート打設、基礎工事、くい打ちなど |
| 石工事 | 石材の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事(例:石積み、コンクリートブロック積みなど) |
| 鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事(例:鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事など) |
| 舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
| しゅんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 |
| 水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事、又は公共下水道の処理設備を設置する工事 |
| 解体工事業 | 工作物解体工事 |
これらの業種は、一見すると無関係に思えるかもしれません。しかし、例えば「とび・土工」の現場で基礎工事を行っていれば、将来的に元請けとして「土木一式」の工事を受注する道が開ける可能性があります。また、道路工事に関連して「舗装工事」や「水道施設工事」のニーズが生まれることも十分に考えられます。
「今は関係ない」と思っていても、数年後には主要な事業の一つになっている可能性があります。その時に慌てて業種追加をするのではなく、可能性のある業種をあらかじめ取得しておくことこそ、ビジネスチャンスを逃さないための賢明な経営判断と言えるでしょう。
なぜ同時申請は費用面で有利なのか?費用と手間を比較
「将来必要になったときに追加すれば良いのでは?」という疑問も、もっともです。しかし、そこには明確なコストの差が生まれます。「費用」と「手間」という2つの観点から、なぜ新規申請時にまとめて業種を取得すべきなのかを具体的に見ていきましょう。当事務所の料金体系と合わせてご検討いただくことで、より具体的なイメージが掴めるはずです。

新規申請なら同じ許可区分で複数業種を同時申請しても手数料は9万円
建設業許可を初めて取得する「新規申請」の場合、知事許可であれば、都道府県に支払う法定手数料は9万円です。
そして、ここが重要なポイントですが、この手数料は申請する業種が1つであっても、今回ご紹介した8業種をまとめて申請しても、金額は一切変わりません。
つまり、取れる業種をまとめて申請した方が、1業種あたりの法定手数料負担は小さくなります。同じ9万円を支払うのであれば、将来の可能性まで含めて最大限の業種を取得しておくことが、いかに経済合理的であるかお分かりいただけると思います。
より詳しい区分については、知事許可と大臣許可の違いをご覧ください。
後からの「業種追加」は1回5万円と大きな手間がかかる
一方、「とりあえず、とび・土工だけでいいや」と1業種だけで許可を取得したとします。その数年後、事業が拡大し、「やはり舗装工事の許可も必要だ」という状況になったらどうなるでしょうか。
この場合、「業種追加」という手続きが必要になり、1回の申請ごとに5万円の法定手数料がかかります。
もし、2級土木施工管理技士(土木)で取得できたはずの残り7業種を、将来的に1業種ずつ7回に分けて追加していくとすれば、
5万円 × 7回 = 35万円
もの追加手数料が発生してしまう計算になります。これは非常にもったいない出費です。
さらに、コストは手数料だけではありません。その都度、申請書類を作成し、役所の窓口へ提出するという手間と時間がかかります。もし専門家に依頼すれば、その分の報酬も申請のたびに必要です。業種追加は、目先の判断が将来的な大きなコスト増につながる典型的な例と言えるでしょう。
注意!専任技術者になるためには「常勤性」が必要
ここまで、2級土木施工管理技士の資格で多くの業種が取得できるメリットをお伝えしてきましたが、一つ重要な注意点があります。それは、専任技術者になるための「常勤性」という要件です。
単に資格を持っているだけでは不十分で、その技術者が許可を受けようとする営業所に常時勤務していることが必要条件となります。いわゆる「名義貸し」が固く禁じられているのはこのためです。

常勤性は、申請先自治体の手引きに基づき、健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写しなど、所定の確認資料で証明します。そのため、専任技術者になる方については、社会保険の加入状況や雇用関係を確認できる資料を、申請先自治体の手引きに沿って準備する必要があります。
あなたの会社の可能性を最大化するために、今すぐ専門家へ
この記事を通じて、「欲しい業種」だけを見るのではなく、「持っている資格で取得できる業種は何か?」という視点を持つことの重要性をご理解いただけたのではないでしょうか。
新規申請というタイミングは、将来の事業展開の可能性を、最小限のコストで最大限に広げる絶好の機会です。このタイミングで取得可能な業種を確認しておくことが重要です。
「うちの技術者が持つ他の資格では、他にどんな業種が取れるんだろう?」
「このまま1業種だけで申請して、本当に損はないだろうか?」
もし少しでもそう感じられたなら、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。私たちの役割は、ただ言われた通りの申請書を作成することではありません。お客様の会社の状況を丁寧にヒアリングし、そのポテンシャルを最大限に引き出すための最適な許可取得プランをご提案することです。
御社に在籍されている技術者の方の資格情報をお教えいただければ、取得可能な建設業許可の業種をすべて洗い出し、無料で診断いたします。まずは許可申請までの流れをご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
「リフォーム工事一式」では建設業許可の実務経験を証明できない?神奈川県の確認資料を解説
「リフォーム工事」だけでは建設業許可の経験証明が難しい理由
「長年リフォーム工事を請け負ってきたから、そろそろ建設業許可を取りたい」とお考えの事業主様は多いのではないでしょうか。しかし、いざ過去の書類を見返してみると、注文書や請求書に「〇〇邸リフォーム工事一式」としか書かれていない…そんなケースは決して珍しくありません。
ここで確認しておきたい重要な点があります。実は、建設業法上の建設工事は2つの一式工事と27の専門工事の計29種類に分類されており、その中に「リフォーム工事」や「改修工事」という業種は存在しません。
これは、建設業許可の審査において、単に「リフォーム工事を10年やっていました」と主張しても、どの専門工事の経験を積んできたのかが全く伝わらないことを意味します。審査行政庁は、あなたが申請したい業種(例えば、内装仕上工事業や大工工事業など)の経験を、客観的な書類で10年以上積んでいるかを確認したいのです。
神奈川県の建設業許可申請の手引きでも、契約書等の工事名が「増築」「改築」「改修」「リフォーム工事」などとなっていて、業種を判別しにくい場合には、見積書、内訳書、工程表、図面など工事内容を確認できる資料の追加提出を求めています。
そのため、「リフォーム工事」としか記載のない書類だけでは、申請したい業種の工事であったことを確認できず、実務経験の裏付け資料として十分でないと判断される可能性があります。
「まさか、これまでの経験が無駄になるのか…」と不安に思われたかもしれません。ただし、書類の記載が曖昧な場合でも、内訳書や図面、写真などから工事内容を補足できることがあります。この記事では、私たち専門家がどのようにして「リフォーム工事」という曖昧な経歴を、許可取得に必要な「専門工事」の実績へと整理していくのか、その具体的な手順を解説していきます。
【相談事例】曖昧な工事経歴をどうやって証明したのか?
工事内容を具体的に整理することで、許可申請に必要な実務経験として説明できる可能性が見えてくる場合があります。先日、当事務所にいらっしゃったお客様も、まさに同じ悩みを抱えていました。
「10年以上、住宅や店舗のリフォーム工事をしてきたので、建設業許可を取りたいんです」
ご相談の際、お客様はそう力強くおっしゃいました。しかし、お持ちいただいた過去の注文書や請求書を確認すると、そのほとんどに「〇〇邸リフォーム工事」「店舗改修工事」としか書かれていませんでした。この記載だけでは、申請したい業種の実務経験として審査で説明することが難しい状況でした。
そこで、提出可能な資料を確認し、工事内容を具体的に整理することにしました。リフォーム工事と一口に言っても、その中身は専門工事の集合体です。造作工事や木製設備の取付けであれば「大工工事」、建具の取付けであれば「建具工事」、給排水設備の交換であれば「管工事」、屋根の葺き替えであれば「屋根工事」といったように、施工内容に応じて該当業種を整理していきます。
そこで、お客様と一緒に、保管されていた見積書や内訳書、現場の写真、図面を一つひとつ確認しました。さらに、工事内容を具体的にヒアリングさせていただき、どの作業がどの業種に該当するのかを一件ずつ丁寧に整理していったのです。この地道な作業が、許可申請で実務経験を説明するための重要な準備になります。単に「リフォームをしていた」という事実を、「申請したい業種の専門家としての実務経験があった」という客観的な証明へと再構築していくのです。
このお客様のケースのように、書類の工事名が曖昧であっても、その中身を分析・整理することで、実務経験として説明できる可能性があります。過去の経験を証明する上で、他県での経験証明が必要な場合など、より複雑なケースにも対応してきました。大切なのは、最初から諦めないことです。

行政書士はこう見る!工事経歴を業種に振り分ける3ステップ
では、具体的にどのようにして曖昧な工事経歴を整理していくのでしょうか。ここからは、私たち専門家が実務で行っている思考プロセスを、3つのステップに分けて具体的にご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
Step1:書類の仕分けと内訳の確認
最初に行うべきは、とにかく手元にある関連書類をすべて集めることです。注文書や請求書はもちろんのこと、見積書、内訳書、図面、現場写真など、工事内容の裏付けとなりそうなものは、どんな些細なものでも構いません。
特に重要なのが「内訳書」や「見積書」です。工事名が「リフォーム工事一式」となっていても、内訳を見れば「クロス張替」「キッチン設備交換」「間仕切り壁設置」「ユニットバス組立」といった具体的な項目が記載されているはずです。これらの項目は、経験を専門業種に分類するための重要な手がかりになります。
まずは、申請したい業種に関連しそうな項目にマーカーを引くなどして、情報を可視化していく作業から始めましょう。この段階では、まだどの業種に該当するか完璧に判断できなくても大丈夫です。まずは、ご自身の経験を客観的な「事実」として洗い出すことに集中してください。どのような資料を準備すべきか、具体的なリストも参考にしてみてください。
Step2:工事内容から業種を特定する判断基準
Step1で洗い出した具体的な工事項目を、建設業法上の29業種のどれに振り分けるか。ここが最も専門的な判断が求められる部分です。同じ工事項目でも、施工の範囲や内容によって該当する業種が変わることがあるため、注意深く見極める必要があります。

いくつか代表的な例を見ていきましょう。
- キッチンの交換工事:
システムキッチンの交換は、それだけで一つの建設業種に決まるわけではありません。給排水管やガス管の接続工事であれば「管工事」、電気配線やコンセント工事であれば「電気工事」、壁・床などの内装仕上げを伴えば「内装仕上工事」、造作工事を伴えば「大工工事」など、実際に施工した内容を確認して業種を判断します。 - 間仕切り壁の設置:
木材で下地を組む工事は「大工工事」、クロス張りや内装間仕切り工事は「内装仕上工事」、塗装は「塗装工事」、コンセントの増設などがあれば「電気工事」として整理する必要があります。 - ユニットバスの設置:
ユニットバスの設置では、給排水設備の接続は「管工事」、照明や電源の接続は「電気工事」など、施工内容ごとに複数の業種が関係します。ユニット本体の組立・固定についても、内訳や施工内容を確認したうえで業種を判断する必要があります。
このように、一つのリフォーム工事の中には、複数の専門工事が含まれているのが通常です。どの部分がどの業種の経験として主張できるのかを、工事内容に応じて的確に切り分ける作業が不可欠です。特に、みなし登録電気工事業者の届出が必要な電気工事のように、建設業許可とは別の手続きが関わるケースもありますので、慎重な判断が求められます。
業種区分の考え方については、国土交通省が公表しているガイドラインも参考になります。
Step3:経験年数を証明するための資料整理術
業種の振り分けができたら、最終ステップとして、申請したい業種の経験が10年以上(またはそれに準ずる期間)あることを証明するための資料整理を行います。
まず、申請したい業種ごとに、該当する工事の注文書・請求書をセットにして、時系列に並べていきます。そして、最初の工事資料から最後の工事資料までの期間が必要な実務経験年数を満たしているかを確認します。実務経験を証明する資料の求められ方は許可行政庁によって異なるため、申請先の手引きに沿って、必要な期間分の資料を整理することが重要です(神奈川県では、その間について原則として各年1件以上の契約書・注文書・請求書等による裏付けが必要です)。
もし、特定の月の請求書だけが見つからない、といった書類の不足がある場合でも、すぐに諦める必要はありません。例えば、取引先に保管されている注文書や契約書の控えを確認してもらうなど、他に客観的な裏付け資料が残っていないかを探します。取引先作成の証明書などが補足資料となる場合もありますが、それだけで実務経験の裏付けとして認められるとは限らないため、申請先への事前確認が重要です。
また、個人事業主の方であれば、毎年の確定申告書の控えが、その期間事業を営んでいたことの強力な裏付け資料となります。申告書の事業種目欄から申請する工事業種が明確に確認できるかどうかが重要です。
最終的には、審査官が一目見て「この人は、この業種の経験をこれだけの期間、継続して積んできたのだな」と理解できるように、整理されたファイルを作成することがゴールです。必要であれば、工事経歴の一覧表や、工事内容を補足する説明資料を別途作成することも有効な手段と言えるでしょう。
それでも証明が難しい場合の最終手段
ここまでご紹介した3つのステップをご自身で試みてみたものの、「やはり書類が足りない」「この工事がどの業種になるのか判断できない」といった課題が残ることもあります。
特に、10年という長期間の書類をすべて完璧に揃えるのは、簡単なことではありません。また、業種の判断は非常に専門的で、微妙なケースも多々あります。もし、ご自身での整理に行き詰まりを感じたなら、それは専門家へ相談するタイミングかもしれません。
私たちのような専門家は、日々多くの許可申請に携わる中で、様々なケースに対応してきた経験と知識があります。どの書類が決定的な証拠になるのか、不足している場合にどのような代替手段があるのか、行政の審査官がどこを重視するのかを熟知しています。
無理に不確かな情報で申請を進めてしまい、不許可という結果になってしまっては、時間も労力も無駄になってしまいます。そうなる前に、一度建設業許可に関する相談窓口で、許可取得への道が拓ける可能性は十分にあります。当事務所の相談から許可申請の流れもご確認いただき、ぜひお気軽にご状況をお聞かせください。
まとめ:曖昧な工事経歴も整理次第で許可取得を目指せる場合がある
「リフォーム工事」や「改修工事」という経歴は、一見すると建設業許可の取得には不利に思えるかもしれません。しかし、本記事で解説したように、内訳書や図面、写真などを確認して工事内容を具体化することで、専門工事の実務経験として整理できる場合があります。
重要なポイントをもう一度振り返ってみましょう。
- 書類をすべて集め、内訳から具体的な工事内容を洗い出すこと。
- 洗い出した工事内容を、専門的な基準で適切な業種に振り分けること。
- 業種ごとに資料を整理し、経験年数が途切れていないかを確認すること。
この3つのステップを丁寧に行うことで、これまで積み上げてきた経験を、建設業許可申請で説明しやすい形に整理できます。
もちろん、この作業は根気のいる地道なものです。しかし、このプロセスを経ることで、ご自身の事業の強みを再確認し、今後の事業展開を考える良い機会にもなるはずです。この記事が、あなたの建設業許可の申請についての第一歩を後押しできれば、これほど嬉しいことはありません。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
建設業許可だけでは違法?みなし電気工事業者の届出を解説
「許可を取ったのに…」元請に指摘され発覚する“みなし登録”とは
「苦労して電気工事業の建設業許可を取得したから、これでどんな電気工事も自由にできる」…そう思っていませんか?実は、それだけでは十分ではないかもしれません。
先日、ある会社の社長が慌てた様子で当事務所にご相談に来られました。許可を取得して一安心していた矢先、大手元請け会社からこう言われたそうです。
「電気工事業の建設業許可があるのは承知していますが、『みなし登録の番号』を教えてください」
社長は「みなし登録…?なんだそれは?」と、すぐには状況を理解できなかったと言います。許可を取ったのになぜ別の手続きが必要なのか、もしかして今まで気づかないうちに法律違反をしていたのではないかと、大きな不安を感じていらっしゃいました。
もし、あなたも同じような状況なら、ご安心ください。これは多くの社長が陥りがちな落とし穴であり、決して特別なことではありません。当職がご相談に乗ったこの社長のケースでは、建設業許可を取得済みだったため、主任電気工事士や備付け器具など電気工事業法上の要件も満たしていれば、登録申請ではなく開始届という形で手続きを進めることができました。
では、なぜ建設業許可だけでは電気工事業を自由に営めないのでしょうか。その理由は、「建設業法」と「電気工事業法」という、目的が異なる2つの法律によって規制されているからです。
- 建設業法:建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することが目的です。いわば、工事全体の品質や会社の経営能力を担保するための法律といえます。
- 電気工事業法:電気工事の欠陥による危険や障害の発生を防止し、保安を確保することが目的です。
つまり、建設業許可は「会社として一定規模以上の工事を請け負う資格」を証明するもの、電気工事業者の届出は「電気工事の安全性を確保する体制」を証明するもの、とそれぞれ役割が分かれているのです。
電気工事業者の4分類|あなたの会社はどれに該当する?
それでは、元請けから求められた「みなし電気工事業者」とは一体何なのでしょうか。この点を理解するために、まずは電気工事業者が法律上どのように分類されるのかを見ていきましょう。
電気工事業者は、大きく分けて「建設業許可の有無」と「取り扱う電気工作物の種類」という2つの軸で、以下の4つに分類されます。
- 登録電気工事業者:建設業許可を持たず、一般用電気工作物等のみ、または一般用電気工作物等と自家用電気工作物の工事を行う事業者。
- 通知電気工事業者:建設業許可を持たず、自家用電気工作物の工事のみを行う事業者。
- みなし登録電気工事業者:建設業法に基づく建設業許可を受けた建設業者で、一般用電気工作物等の電気工事を行う事業者。
- みなし通知電気工事業者:建設業法に基づく建設業許可を受けた建設業者で、自家用電気工作物の電気工事のみを行う事業者。
この記事を読んでくださっているあなたの会社は、すでに建設業許可をお持ちのはずですから、3番か4番の「みなし」がつく事業者に該当することになります。
「みなし」とは?建設業許可を持つ事業者への特例制度
「みなし」という言葉は少し分かりにくいかもしれませんが、これは建設業許可を持つ事業者に関する特例制度と考えると理解しやすいでしょう。
「みなし」制度は、建設業法に基づく建設業許可を受けた建設業者について、電気工事業法上の登録との二重規制を避けるために設けられた「建設業者に関する特例」です。
本来、電気工事業を営むには電気工事業法に基づく「登録」が必要ですが、建設業許可を取得している事業者は、すでに建設業法の要件によって技術力や経営基盤が審査されています。そのため、改めて電気工事業法で厳格な「登録」審査を求めるのは二重規制となってしまいます。
そこで、法律は合理的な配慮として、建設業許可業者については簡便な「届出」または「通知」で済ませることを認めているのです。これを「登録電気工事業者とみなす」「通知電気工事業者とみなす」ことから、「みなし」制度と呼ばれています。
「みなし登録」と「みなし通知」どちらの手続きが必要?
では、あなたの会社は「みなし登録」と「みなし通知」のどちらの手続きをすればよいのでしょうか。これは、請け負う工事の種類によって決まります。
- みなし登録(届出)が必要なケース
一般家庭や小規模な店舗の配線工事など、電力会社から600V以下の電圧で受電する場所の工事(一般用電気工作物等)を扱う場合です。これに加えて、工場やビルのような自家用電気工作物の工事も行う場合もこちらに該当します。
(例:一般住宅のコンセント増設、店舗の照明設備工事など) - みなし通知(通知)が必要なケース
工場やビルなど、電力会社から高圧で受電する設備の工事(自家用電気工作物)のみを扱い、一般用電気工作物の工事は一切行わない場合です。
(例:工場の変電設備工事、ビルの幹線設備工事など)
一般用・小規模事業用・自家用の区分は電気事業法上の定義によって決まるため、単に建物が「住宅かビルか」だけで判断するものではありません。
多くの電気工事業者は一般住宅や店舗の工事も手掛ける可能性があるため、「みなし登録」の届出が必要になるケースがほとんどです。なお、これらの手続きは、電気通信工事の許可とは根拠法や手続きが異なるため注意が必要です。
混同注意!「営業所技術者等」と「主任電気工事士」の決定的違い
建設業許可と電気工事業届出で、担当者の方が最も混同しやすいのが「人」に関する要件です。建設業許可で求められる「営業所技術者等(旧:専任技術者)」と、みなし登録電気工事業者の届出で求められる「主任電気工事士」。この2つは、同じ人物が兼任することも可能ですが、法律上の役割は全く異なります。
この違いを理解しないまま手続きを進めると、思わぬ不備につながる可能性があります。ここで、両者の違いを明確にしておきましょう。
- 営業所技術者等:建設業法に基づき、営業所に常勤して、請負契約の適正な締結や履行を技術面から確保する責任者です。
- 主任電気工事士:電気工事業法に基づき、一般用電気工作物等に係る電気工事を行う営業所ごとに置かれ、工事の危険や障害が発生しないよう、作業の管理・監督を行う責任者です。
特に重要なのは、求められる資格の違いです。例えば、1級電気工事施工管理技士は、一定の場合に電気工事業の営業所技術者等の資格要件を満たしますが、それだけでは主任電気工事士にはなれません。主任電気工事士になるには、原則として第一種または第二種電気工事士の資格が必須となるのです。
主任電気工事士の要件|第二種電気工事士は実務経験が必須
主任電気工事士になるための資格要件は、次のいずれかを満たす必要があります。
- 第一種電気工事士であること
- 第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事に関し3年以上の実務経験を有すること
第一種電気工事士であれば資格取得後すぐに要件を満たしますが、第二種電気工事士の場合は「免状交付後3年以上の実務経験」が必須である点に注意が必要です。この実務経験は、届出の際に証明書類の提出を求められる重要なポイントです。この要件をクリアしているかどうかが、手続きがスムーズに進むかの分かれ道になります。
みなし登録電気工事業者の届出実務|必要書類と手続きの流れ
それでは、実際に「みなし登録電気工事業者」の届出を行う際の手続きについて、具体的に見ていきましょう。ここでは、当事務所がある神奈川県を例に、一般的に必要とされる書類を解説します。(※自治体によって様式や必要書類が異なる場合がありますので、必ず管轄の窓口にご確認ください。)
【主な必要書類リスト(神奈川県の例)】
- 電気工事業開始届出書
- 主任電気工事士に関する誓約書
- 備付器具調書
- 主任電気工事士の電気工事士免状の写し
- 主任電気工事士等の実務経験証明書(主任電気工事士が第二種電気工事士の場合)
- 主任電気工事士の雇用証明書(建設業許可証に記載された申請者以外が主任電気工事士となる場合)
- 登記事項証明書(建設業許可証記載の住所と申請者住所が異なる場合など)
- 建設業許可証のコピー
手続きの流れは、これらの書類を準備し、電気工事業を開始した場合には、遅滞なく管轄の窓口へ提出するというものです。書類に不備がなければ、神奈川県では「電気工事業開始届受理書」が交付され、届出受理番号が付与されます。元請会社から「みなし登録番号」などと求められた場合、通常はこの届出受理番号を確認することになります。
より詳しい手続きについては、経済産業省が公開している手引きも参考になります。
参照:経済産業省のみなし登録電気工事業者の開始届出に関する手引き
【要注意】建設業許可と電気工事業届出の窓口は別です
ここで非常に重要な注意点があります。それは、申請の窓口です。建設業許可の申請は「建設業主管課」などで行いますが、みなし電気工事業者の届出は、全く別の部署が担当していることがほとんどです。
例えば、当事務所のある川崎市の事業者の場合、建設業許可の窓口は神奈川県県土整備局事業管理部建設業課、みなし登録電気工事業者の開始届は神奈川県くらし安全防災局防災部消防保安課が窓口となります。
なお、電気工事業法の届出先は、建設業許可が知事許可か大臣許可かではなく、電気工事業を営む営業所の所在地・区域によって決まります。神奈川県内でも営業所の所在地によって提出窓口が異なるため、事前に管轄窓口を確認することが重要です。
営業所に備えるべき測定器具一覧
電気工事業法では、適正な工事を行うために、営業所ごとに特定の測定器具を備え付けることが義務付けられています。届出の際に、これらの器具が揃っているか確認されることがあります。
【一般用電気工作物等のみの工事を行う営業所】
- 絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
- 回路計(抵抗および交流電圧を測定できるもの)
【自家用電気工作物の工事も行う営業所】
上記3点に加えて、以下の器具も必要です。
- 低圧検電器
- 高圧検電器
- 継電器試験装置
- 絶縁耐力試験装置
※継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、必要な時に使用できるよう借用等の措置が講じられていれば備え付けは不要です。
これらの器具は、電気工事の安全性を確認するために不可欠なものです。法律上の義務ですので、必ず営業所に備えておくようにしてください。

届出を忘れるとどうなる?罰則と見過ごせない事業リスク
もし、みなし電気工事業者の届出をしないまま事業を行ってしまった場合、どうなるのでしょうか。電気工事業法上の登録を受けずに電気工事業を営んだ場合には、1年以下の拘禁刑若しくは10万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。また、建設業許可を受けた事業者が「みなし登録」の開始届や「みなし通知」の開始通知を行わなかった場合には、2万円以下の罰金が定められています。
しかし、罰金以上に深刻なのは、事業そのものへの影響です。今回の相談事例のように、元請会社から届出受理番号等の提示を求められるケースは少なくありません。コンプライアンス(法令遵守)を重視する大手企業ほど、この傾向は強いでしょう。
届出を怠っていることが発覚すれば、
- 元請会社のコンプライアンス審査で問題となり、取引継続に影響する可能性がある
- 発注者から法令遵守体制を疑われる可能性がある
- 公共工事等においても、法令違反の内容によっては事業上の不利益につながる可能性がある
といった、ビジネスに直結する大きなリスクにつながりかねません。「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない事態になる可能性があります。なお、請負金額が500万円未満で、建設業法上「軽微な建設工事」に該当する電気工事であっても、それだけを理由に電気工事業法上の手続きが不要になるわけではありません。
【最重要】建設業許可の更新時、みなし登録の変更届も忘れずに!
最後に、専門家として最もお伝えしたい、非常に見落としがちな重要ポイントです。それは、建設業許可を5年ごとに更新した際には、みなし電気工事業者の変更届も必要になるということです。
みなし登録は、有効な建設業許可があることが大前提です。そのため、建設業許可を更新した場合には、その旨を届け出なければなりません。この届出を忘れてしまうと、古い許可情報に基づいた不正確な状態が続き、いざという時に「届出情報が現状と違う」というコンプライアンス上の問題になりかねません。
建設業許可の更新手続きに追われ、こちらの変更届を失念してしまうケースは後を絶ちません。許可更新とみなし登録の変更届は、必ずセットで行うものだと覚えておいてください。これは、役員変更などの変更届と同様に重要な手続きです。
既に登録電気工事業者だった会社が建設業許可を取った場合も注意
以前から登録電気工事業者として事業を営んでいた会社が、新たに建設業許可を取得した場合も注意が必要です。
この場合、従来の登録のまま続けるのではなく、建設業許可の取得に伴い、みなし登録電気工事業者への手続きが必要となります。神奈川県も「既に電気工事業の登録をしている登録電気工事業者が建設業許可を取得した場合も、開始届が必要」と明示しています。
まとめ|複雑な手続きは専門家への相談が近道です
今回は、建設業許可を持つ電気工事業者が行うべき「みなし電気工事業者」の届出について解説しました。
【この記事のポイント】
- 建設業許可だけでは不十分。電気工事の安全を守る「電気工事業法」に基づく届出等が必須。
- 建設業許可があれば、簡便な「みなし」制度(届出または通知)が適用される。
- 建設業法の「営業所技術者等」と電気工事業法の「主任電気工事士」は役割も資格要件も異なる。
- 届出等を怠ると、罰金だけでなく、信用失墜など大きな事業リスクにつながる。
- 建設業許可の更新時には、必ずみなし登録等の変更届もセットで行うこと。
ここまでお読みいただき、二重規制の理由や手続きの概要はご理解いただけたかと思います。しかし、実際に書類を準備し、異なる管轄窓口へ申請するのは、思った以上に手間と時間がかかるものです。
社長やご担当者様が本業に集中し、一日も早く安心して事業に取り組めるよう、こうした複雑な許認可手続きは専門家にご相談いただくのが有力な選択肢です。
「うちの場合はどの書類が必要?」「主任電気工事士の要件は満たしている?」など、少しでもご不安な点があれば、お気軽にお声がけください。まずは、無料相談から状況をお伺いし、必要な手続きや対応方法をご提案いたします。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。