建設業許可で虚偽申請は厳禁|神奈川県の厳正対応から学ぶ注意点

神奈川県が「虚偽申請に厳正対応」と異例の発表

神奈川県が2026年9月28日、建設業許可の虚偽申請について異例ともいえる強い注意喚起を公表しました。これは、単なる形式的なお知らせではありません。今後の建設業許可申請、そして経営事項審査(経審)のあり方にも関わる、きわめて重要なメッセージです。

県の発表によれば、ある行政書士が建設業者の代理人として虚偽内容の書類を作成した事案について、県は建設業法違反の疑いで警察に告発し、2026年8月には横浜地方検察庁から起訴された旨の通知を受けたと公表しています。

注意喚起にとどまらない審査方針の明示

今回の発表で特に注目すべきは、「今後の対応」について具体的に言及している点です。県は、今後の建設業許可および経営事項審査において、以下の方針を明確に示しました。

  • 厳格かつ慎重な審査を行う
  • 申請内容の正確性・適法性を多角的・多段階で確認する
  • 審査の過程で、追加の資料提出を求める場合がある

今回の発表は、新しい許可基準を設けたというものではありませんが、神奈川県が建設業許可申請や経営事項審査について、法令に則って厳格かつ慎重に審査し、必要に応じて複数回の追加確認や資料提出を求める方針を明確に示したものといえます。これまで以上に、申請内容の裏付けや法令適合性を確認する観点から、疑義のある点について慎重な確認が行われる可能性があります。特に、工事実績の証明や経営事項審査における完成工事高の確認など、あらゆる場面でより慎重な判断がなされることが予想されます。

「前回は通ったのに」が通用しなくなる理由

申請者の方から、「前回はこの書類で許可が取れたのに、なぜ今回はダメなんだ」という声を聞くことがあります。しかし、今回の県の発表は、そうした安易な考え方がもはや通用しないことを示唆しています。

神奈川県は、「前回は問題なかったのに、今回なぜ認められないのか」という質問が寄せられることにも触れています。そのうえで、申請事案によっては法令適合性を徹底して確認する必要があり、慎重な確認を要する場合があると説明しています。
したがって、過去に同様の資料で受理された経験があったとしても、今回の申請でも当然に同じ判断になるとは限りません。

また、行政庁ごとに独自のルール、いわゆる「ローカルルール」が存在することも事実です。例えば、他県で認められた経験証明の方法が、神奈川県では通用しないケースも珍しくありません。建設業許可の確認資料や運用には、許可行政庁ごとの手引きや取扱いの違いがあるため、申請先の最新手引きを確認することが重要です。

神奈川県の「虚偽申請に厳正対応」という発表を見て、建設業許可申請書類を前に頭を抱える経営者。

実務経験の証明で絶対にしてはいけないこと

建設業許可の要件の中でも、特に虚偽申請が起こりやすいのが「実務経験の証明」です。具体的には、経営業務の管理責任者や営業所技術者等になるための経験年数を、過去の請求書や注文書などで証明するケースです。今回の神奈川県の発表でも、この点が厳しく指摘されています。

「10年以上の経験があるのは事実なのに、証明する書類が少し足りない…」そんな状況に置かれたとき、軽い気持ちで書類に手を入れてしまう誘惑にかられるかもしれません。しかし、その行為は、許可取消しや刑事責任につながる可能性のある重大な問題です。

より詳しい実務経験の証明方法については、「営業所技術者等の実務経験10年証明に必要な書類」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

なぜ請求書等の「加工」や「復元」は許されないのか?

神奈川県は公式サイト上で、「申請のために過去の書類を加工・復元することは認められない」と、きわめて明確に断言しています。

特に注意すべきなのは、申請者自身が当時存在しなかった書類を過去の日付で作成したり、既存書類の日付・工事内容・金額等を書き換えたりすることです。紛失した資料については、自己判断で「復元」するのではなく、取引先から正規の再発行を受けられるか、他の資料で代替できるかを確認する必要があります。

なぜこれほどまでに厳しく扱われるのでしょうか。

それは、申請に添付する請求書や注文書が、単なる紙切れではなく、「過去の取引の事実を確認するための重要な証拠資料」として扱われるからです。それを意図的に改変する行為は、審査を行う行政の判断を誤らせる、悪質な妨害行為と見なされます。たとえ「経験があったのは事実だ」と主張しても、証拠となる書類を偽造した時点で、その主張全体の信憑性が失われてしまうのです。

また、工事の請負契約に基づかない、いわゆる「人工出し」の経験は、原則として実務経験に認められません。この点を混同し、証明のために請求書の内容を「請負工事」であるかのように書き換える行為も、当然ながら虚偽申請にあたります。

「行政書士に任せたから」は通用しない事業主の責任

万が一、虚偽申請が発覚した場合、「専門家である行政書士にすべて任せていたので、中身は知らなかった」という言い訳は通用するのでしょうか。

結論として、そのような説明だけで責任を免れるとは限りません。

建設業許可の申請者は事業者自身であり、申請内容について十分に確認することが重要です。ただし、虚偽申請が発生した場合の行政上・刑事上の責任は、誰が虚偽を認識し、どのように関与したかなど、個別の事情によって判断されます。
「行政書士に任せていた」という事情だけで当然に責任を免れるとも、反対に事業者が必ず責任を負うとも一概にはいえません。だからこそ、提出前に申請内容を確認し、不自然な資料作成を求められた場合には、そのまま進めないことが重要です。

建設業許可の虚偽申請が発覚した場合の2つの末路。「行政処分(許可取消・5年間の再申請禁止)」と「刑事罰(懲役・罰金)」を比較した図解。

虚偽申請が発覚した場合の2つの重大なリスク

虚偽申請は、発覚した場合に事業継続へ重大な影響を及ぼす可能性があります。事業者様を待ち受けているのは、「行政処分」と「刑事罰」という、きわめて重い2つのペナルティです。これは、無許可営業のリスクとは比較にならないほど深刻です。

リスク①:許可の取消しと5年間の許可取得制限(行政処分)

不正な手段で許可を取得したことが明らかになった場合、建設業法に基づき、その許可は取り消されます。

さらに重要なのは、許可取消し後の欠格要件です。虚偽又は不正の事実に基づいて許可を受けたことなどを理由に許可取消処分を受けた場合、その事業者は一定期間、再び許可を受けることができなくなります。また、法人の場合には、取消しに関係する一定の役員等も欠格要件の対象となる場合があります。欠格期間は原則として取消しの日から5年間です。

これは、5年間は建設業許可が必要となる工事を請け負えなくなることを意味します。許可が前提となる公共工事の入札参加にも、重大な支障が生じます。多くの建設業者にとって、許可を必要とする工事を受注できなくなることは、事業継続に大きな影響を及ぼします。役員の交代などで許可の継続性が途切れるだけでも大問題ですが、虚偽申請による取消処分は、事業の未来そのものを奪う行為なのです。

リスク②:拘禁刑または罰金、そして「告発」(刑事罰)

虚偽申請は、行政処分だけで終わるとは限りません。建設業法には厳しい罰則が定められており、悪質なケースでは刑事事件として立件される可能性があります。

建設業法上、虚偽申請に関する罰則は行為の内容によって異なります。
虚偽又は不正の事実に基づいて実際に建設業許可を受けた場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となり得ます。
一方、許可申請書や添付書類に虚偽の記載をして提出した場合にも、別途、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。

今回の神奈川県の事案のように、行政が警察に「告発」し、検察が「起訴」するという流れをたどれば、事業者様自身が刑事手続の対象となる可能性があります。

申請書類であっても、虚偽の内容を提出すれば、行政処分や刑事責任につながる可能性があります。建設業許可だけでなく、例えば電気工事業など他の法律が関わる業種では、さらに複雑な問題に発展する可能性もあります。

虚偽申請をしないための「3つの鉄則」

では、どうすればこのような最悪の事態を避け、安全に建設業許可を取得できるのでしょうか。神奈川県の厳格化方針を踏まえ、私たちが守るべきは、以下の「3つの鉄則」です。これは、許可申請における基本中の基本であり、事業者様と行政書士が必ず共有すべき心構えです。

鉄則①:証明できない事実は申請書に書かない

これが最も重要な大原則です。「長年この仕事をしてきたから、経験年数はクリアしているはずだ」という記憶や確信があったとしても、それを裏付ける客観的な資料(請求書、注文書、確定申告書など)で裏付けられない経験を、許可要件を満たす経験として無理に申請しないほうがよいです。

建設業許可の申請では、実際に経験があったとしても、許可要件として主張するためには、神奈川県が求める確認資料によってその期間や内容を裏付ける必要があります。資料が不足している場合は、別の資料で補えるかを確認し、それでも証明できない期間を無理に経験年数へ算入しないことが重要です。

鉄則②:不足している資料を後から「作らない」

証明に必要な書類がどうしても見つからない。そんな時、「パソコンで作り直せばいい」と考えてしまうのは非常に危険です。前述の通り、過去の日付の書類を後から作成する行為は「復元」ではなく「偽造」と見なされるリスクがきわめて高いです。

資料がないという現実を、まずは正直に受け止めましょう。その上で、他の資料で代替できないか、別の方法で経験を証明できないかを探るのが正しいアプローチです。例えば、確定申告書を紛失した場合の対処法のように、正当な手続きで代替書類を取得する方法も存在します。それでも要件を満たせない場合は、現時点での申請を見送る判断が必要です。

鉄則③:判断に迷う点は必ず行政に事前相談する

「この工事経験は、申請したい業種の実績として認められるだろうか」「この書類は、証明資料として通用するだろうか」など、申請実務では判断に迷うグレーゾーンが必ず出てきます。

こうした点については、自己判断だけで申請を進めることは避けるべきです。私たち専門家でさえ、判断に迷うケースでは、必ず申請先の行政窓口(神奈川県庁の建設業課など)に電話や訪問で事前相談を行います。これは、遠距離通勤者の常勤性など、個別の事情が絡む複雑なケースでは特に重要です。

行政の見解を事前に確認しておくことで、申請が受理されない、あるいは後から虚偽を疑われるといった無用なトラブルを未然に防ぐことができます。誠実な申請プロセスは、適正な審査を受けるための重要な前提です。もしご自身で判断に迷う場合は、専門家への相談も積極的にご活用ください。

まとめ:事実に基づく適法な申請が重要

今回の神奈川県の厳正対応は、決して他人事ではありません。これは、建設業界全体に対して、コンプライアンス遵守の重要性を改めて問いかける強いメッセージです。

許可を急ぐあまり、あるいは「これくらいなら」という軽い気持ちで事実に反する申請をしてしまう。その一瞬の過ちが、事業の停止、多額の罰金、そして刑事罰という取り返しのつかない結果を招く可能性があります。

遠回りに見えるかもしれませんが、事実に基づいて書類を一つひとつ集め、証明できないことは正直に認め、誠実に申請手続きを進めること。それこそが、建設業許可を適法に取得するために重要な進め方です。当事務所では、お客様の状況を丁寧にお伺いし、法令を遵守した上で許可取得の可能性を探るお手伝いをしています。ご不安な点があれば、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。

 

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