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「家具を納品して設置するだけ」でも建設業許可は必要?
「オフィス移転に伴い、デスクや棚など一式で600万円の注文が入った。納品と設置もお願いしたいと言われている」
「工場に新しい機械を導入する。機械本体が1000万円で、据付費用は30万円だ」
オフィス家具店や文房具店、機械商社などを経営されている方にとって、このような高額な受注は大きなビジネスチャンスですよね。しかし、商品を販売するだけでなく、現場での「設置」や「据付」まで請け負う場合、建設業許可の要否を確認すべき場合があることをご存知でしょうか。
それは、建設業許可の問題です。
「うちは建設会社じゃないから関係ない」「設置費用だけなら少額だから大丈夫」——。そう思われるかもしれません。実際、先日ご相談に見えたある家具店の社長も、当初は「なぜうちが建設業許可?」と半信半疑でいらっしゃいました。
しかし、お話を伺うと、家具の代金と設置費用を合わせると500万円を優に超える案件を請け負おうとされていました。この場合、たとえ家具の販売がメインであっても、その「設置」が建設工事とみなされ、建設業許可が必要になるケースがあるのです。
この記事では、これまで建設業とは無縁だと思っていた事業者の方々に向けて、
- なぜ家具や機械の設置が「建設工事」にあたるのか
- 許可の要否を分ける「500万円」という金額基準の正しい考え方
- 請求書を分けても「抜け道」にはならない理由
- 自社の業務がどの工事業種に該当するのか
といった疑問を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。知らないうちに法律違反を犯してしまうリスクを避け、安心して事業を拡大していくために、ぜひ最後までお読みください。
建設業許可の基本:「建設工事」とは何か
そもそも、なぜ家具の設置が「建設工事」になる可能性があるのでしょうか。それを理解するために、まずは建設業法が定める「建設工事」の定義を見てみましょう。
法律の世界では、「建設工事」とは「土木建築に関する工事で、別表第一の上欄に掲げるもの」と定義されています。これだけでは少し分かりにくいですが、ポイントは「単なる物品の販売や運搬」と「建設工事」は明確に区別されるという点です。
例えば、完成品の家具をお客様のオフィスに運んで、指定の場所に「置くだけ」であれば、それは単なる納品(運送)であり、建設工事にはあたりません。一方、建築物への家具の据付けや、家具の材料を現場で加工・組み立てて据え付ける作業などは、作業内容によって内装仕上工事の「家具工事」に該当する可能性があります。
つまり、単に商品を売るだけでなく、その「工事の完成を請け負う」契約かどうかが、建設業許可を考える上での最初の分かれ道となります。
参照:国土交通省「建設業法等における定義」
判断基準は「請負代金500万円(税込)」
では、すべての設置作業に建設業許可が必要かというと、そうではありません。建設業法には「軽微な建設工事」という例外規定があり、この範囲内であれば許可は不要とされています。
その重要な基準となるのが「1件の請負代金が500万円未満(税込)」であるかどうかです。
ただし、ここで注意したいのは、「商品代金が500万円を超えたら、それだけで建設業許可が必要になる」という意味ではないことです。
まず、納品に伴う設置・据付作業が、建設業法上の「建設工事」に該当するかを判断します。そのうえで、商品・機器の供給を含めて、その工事の完成を一体として請け負っている場合には、設置費用だけを切り離して考えるのではなく、契約全体の金額を踏まえて500万円基準を判断する必要があります。
ここで多くの方が陥りがちなのが、「設置費用だけで判断してしまう」という誤解です。設置・据付部分が建設工事に該当し、商品・機器の供給を含めて一体としてその建設工事の完成を請け負っている場合には、商品・機器代を含む契約金額が500万円基準の判断対象となる可能性があります。工事費だけを切り出して判断することはできません。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 家具本体の価格:480万円(税抜)
- 設置費用:15万円(税抜)
- 合計:495万円(税抜)
この家具の納入と据付が一体として「内装仕上工事の完成を請け負う契約」と評価される場合には、税込544.5万円となるため、軽微な建設工事には該当せず、原則として建設業許可が必要になります。
設置費用がわずかであっても、商品代金と合わせることで500万円のラインを超えるケースは、十分に起こり得るということを覚えておいてください。
契約書や請求書の分割は「抜け道」にならない
「それなら、商品代金の請求書と、設置費用の請求書を別々に発行すれば問題ないのでは?」
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一体の建設工事であるにもかかわらず、500万円未満にする目的で工事契約を分割しても、原則として合算されます。単に請求書を分けただけで許可が不要になるわけではありません。
建設業法施行令第1条の2第2項には、「同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない」と定められています。
つまり、工事の実態が一つである限り、契約書や請求書をいくら分けても、それらを合算した金額で判断されるのです。「元請けから言われたから」「お客様の要望で」といった事情だけでは、直ちに「正当な理由」があるとはいえない可能性があります。
安易に契約を分割する行為は、意図的な許可逃れ(脱法行為)とみなされ、後述する厳しい罰則の対象となる可能性があります。法令遵守を徹底することは、事業を守る上で極めて重要です。契約形態は、工事の実態が請負契約にあたるかどうかで判断されることを、強く認識しておきましょう。
このテーマの全体像については、建設業許可の基礎知識で体系的に解説しています。
あなたの業務はどの工事に該当?具体的な業種分類
「自分の会社のやっている設置作業が、建設工事に当たるかもしれないことは分かった。では、もし許可を取るなら、29種類ある建設業種のうち、どれに該当するのだろう?」
ここからは、家具店や機械商社の業務で特に可能性の高い業種について、具体的なケースを交えながら解説していきます。
ケース1:家具の据付は「内装仕上工事業」

オフィス家具や店舗の造作家具などを、建築物に固定する作業は「内装仕上工事業」に分類される可能性が高いです。
国土交通省が公表している「建設業許可事務ガイドライン」によると、内装仕上工事業には「家具工事」が含まれており、その例として「建築物に家具を据え付ける工事」が挙げられています。
ここでのポイントは、「据え付ける」という言葉です。単に床に置くだけの家具は該当しませんが、
- 壁や床にアンカーボルトで固定する造り付けの収納棚
- 現場で組み立てて設置するカウンター
- オフィスを区切るパーテーションの設置
といった作業は、内容に応じて「家具工事」または「内装間仕切り工事」などの内装仕上工事に該当する可能性があります。こうした作業が内装仕上工事に該当し、家具の供給を含めて一体として工事の完成を請け負う契約で、その請負代金が500万円(税込)以上となる場合には、原則として内装仕上工事業の許可が必要になります。
参照:国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」
ケース2:機械の取付けは「機械器具設置工事業」
工場で使う生産設備、立体駐車場の設備、舞台装置など、現場で組み立てが必要な機械を設置する工事は「機械器具設置工事業」に該当することがあります。
この業種は判断が非常に難しいことで知られています。ポイントは、「他のどの専門工事にも分類されない、現場での組立て・設置を伴う複合的な機械」が対象となる点です。
例えばポンプ設備であれば、配管設備の一部として設置する内容なら管工事に該当する場合があり、単純に「機械器具設置工事」と決めることはできません。一方で、現地の状況に合わせて複数の機械や部品を組み合わせ、一つのシステムとして機能するように組み立て・設置するような工事は、機械器具設置工事と判断される可能性が高くなります。
このように、同じ機械を設置する場合でも、その作業内容によって該当する業種が変わることがあります。特に他業種との区別がつきにくく、専門的な判断が求められるため、自己判断は非常に危険です。
無許可営業のリスクと正しい対処法
もし、建設業許可が必要な500万円以上の工事を、許可がないまま請け負ってしまったらどうなるのでしょうか。
無許可で請け負った場合、法令違反として罰則等の対象になる可能性があります。建設業法では、無許可営業に対して「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という重い罰則を定めています。
法的な罰則はもちろんですが、事業上も次のようなリスクが考えられます。
- 信用の失墜:コンプライアンス違反が発覚すれば、取引先や金融機関からの信用に影響する可能性があります。
- 事業機会の損失:行政処分や発注機関の措置等により、公共工事への参加や取引に影響が生じる可能性があります。
- 将来の許可取得への影響:無許可営業について刑に処せられた場合、その内容によっては建設業許可の欠格要件に該当し、その後の許可取得に重大な影響が生じる可能性があります。
「うちの業務、もしかしたら許可が必要かも…」と少しでも感じたら、見て見ぬふりをせず、すぐに行動を起こすことが重要です。まずは、見積書や契約書を締結する前に、その契約が建設業許可を必要とするものかどうかを確認すること。そして、その判断に迷う場合は、許可取得の準備を進める、あるいは専門家に相談するというステップを踏むことが、リスクを回避し、事業を安心して成長させるための賢明な対処法と言えるでしょう。
まとめ:その契約、本当に大丈夫?専門家にご相談ください

今回は、家具店や機械商社の方々が見落としがちな「納品+設置」業務における建設業許可の必要性について解説しました。
この記事のポイントを改めて整理しましょう。
- 家具や機械の「設置・据付」は、その内容によって「建設工事」に該当する場合がある。
- 設置・据付が建設工事に該当し、商品・機器の供給を含めて一体として工事の完成を請け負っている場合には、設置費だけでなく契約全体の金額を踏まえて500万円基準を判断する。
- 契約書や請求書を分割しても、実質的に一つの工事であれば合計額で判断され、抜け道にはならない。
- 家具の据付は「内装仕上工事業」、機械の取付けは「機械器具設置工事業」などに該当する可能性があるが、判断には専門知識が必要。
- 無許可営業には「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という重い罰則がある。
「うちの会社は建設業じゃないから」という思い込みが、気づかぬうちに大きな経営リスクを招いてしまうかもしれません。特に、高額な商品を扱う事業者の方ほど、その危険性は高まります。
「この見積書、許可なしで契約して大丈夫だろうか?」「自社のこの作業は、どの業種にあたるのだろう?」
少しでも疑問や不安を感じたら、ご自身で判断せずに、私たち建設業許可業務を中心に取り扱う行政書士にご相談ください。契約前の段階でご相談いただければ、リスクを未然に防ぎ、安心してビジネスチャンスを掴むためのお手伝いができます。当事務所の相談から許可申請までの流れをご確認いただき、まずはお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
