防災協定で経審のW点アップ|所属業界団体への確認の方法

防災協定による経審のW点アップと業界団体経由の評価

公共工事の入札参加を目指す建設業者様にとって、経営事項審査(経審)の評点アップは大きな関心事ではないでしょうか。なかでも「その他の審査項目(社会性等)」として評価されるW点は、会社の体制づくりや地域貢献の取り組み次第で、着実にスコアを伸ばせる余地がある分野です。

そのW点のなかに、「防災協定の締結」によって評価される項目があります。「うちは小さな会社だから、市や県と直接協定なんて結んでいないよ」と最初から諦めてしまう社長さんも少なくありません。しかし、自社で直接締結していなくても、普段から所属している建設業協会や事業協同組合などの「業界団体」を通じて、すでに経審の加点対象になっているケースが多々あります。

まずは防災協定が経審の点数にどれほど影響するのか、そしてなぜ団体経由で評価されるのか、その仕組みから詳しく見ていきましょう。

防災活動への貢献(W3)の配点とP点への影響

経審の審査項目であるW点(社会性等)には、「防災活動への貢献の状況(W3)」という評価項目が設けられています。国や地方公共団体などと一定の防災協定を締結している場合、このW3において「20点」が加点されます。

この項目は「協定の締結あり(20点)」か「締結なし(0点)」かの二択で判定されます。近年の制度改正(令和8年改正など)の前後を通じても、この「20点」という配点基準は変わらず維持されており、地域社会の安全を守る建設業者の役割がいかに重視されているかが分かります。

ここで専門的な視点から1つ注意していただきたいのが、「20点加点される=総合評定値(P点)がそのまま20点上がるわけではない」という点です。経審のスコア計算には独自の換算式が用いられます。

具体的には、W点の各項目(W1〜W8)の合計点に対し、「×10×175÷200」という計算式を掛けて「W評点」を算出します。さらに、そのW評点が最終的な総合評定値(P点)に反映される際のウェイト(寄与度)は「15%(0.15)」と定められています。

  • W評点の増加分: 20点 × 10 × 175 ÷ 200 = 175点アップ
  • 総合評定値(P点)への反映: 175点 × 0.15(ウェイト) = 26.25点アップ

したがって、防災協定の加点が認められると、他の審査項目が同じであれば、総合評定値(P点)をおおむね26点程度押し上げる効果があります。経審においてP点を26点引き上げるというのは、売上高(完成工事高)や自己資本を短期間で増やそうとしてもなかなか達成できない、非常に大きな数値です。このテーマの全体像については、公共工事への第一歩!経営事項審査(経審)の仕組みを徹底解説で体系的に解説しています。

直接締結していなくても業界団体経由で対象になる理由

P点が約26点も上がるとなると、「なんとかうちも対象にならないか」と気になるところですが、ここで冒頭の「業界団体経由での評価」が大きな意味を持ってきます。

経審のルール上、防災協定による加点は「建設業者が直接、国や自治体と協定を結んでいる場合」だけでなく、「国や自治体と防災協定を結んでいる一般社団法人や事業協同組合などの団体に所属し、その構成員として防災活動に一定の役割を果たす場合」も対象として認められています。

私自身、日々の業務のなかでこの「団体経由の加点」がいかに見落とされやすいかを肌で感じています。実際の経営事項審査の準備で、社長さんに「防災協定は結んでいますか?」とお聞きしても、「うちは特に結んでいないと思います」と、ピンとこない様子で答えられることがあります。

そこで、「会社が直接協定を結んでいなくても、加入している業界団体を通じて、経審の加点対象になる場合があります。団体から証明書を出してもらっている会社さんもありますよ」とお伝えすると、「それなら、うちも確認してみます」と話が進むことがあります。実際、私が経審をお手伝いしてきた中でも、会社が自治体と直接協定を結ぶのではなく、所属する業界団体を通じて加点対象となっているケースをよく見かけます。

実際に、所属団体へ問い合わせたところ、経審に使用できる証明書を発行してもらえた例もあります。最初は「自社には無縁だ」と思っていた会社でも、確認してみると加点対象だったということがあります。防災協定はW3で20点の加点となるため、こうした既存の加点機会を見落とさないことは経審対策上とても重要です。

経営事項審査の防災協定について専門家と打ち合わせをする建設会社の社長

経審の加点対象になる防災協定の条件と団体加入の注意点

業界団体を通じて加点されるケースが多いとお伝えしましたが、ここで誤解してはいけない重要なポイントがあります。それは、「業界団体に加入して会費を払っているだけで、自動的に全会員が加点されるわけではない」ということです。

経審でW3の加点を受けるためには、審査基準に照らしてクリアしなければならない明確な条件が3つあります。申請の段階で「実は対象外だった」と慌てないために、それぞれの適用条件を正確に押さえておきましょう。

対象となる協定の相手方と防災活動の内容

1つ目の条件は、「誰と」「どのような内容の」協定を結んでいるかです。経審で評価の対象となる防災協定の相手方は、法令等によって以下の公的機関に限定されています。

  • 国(国土交通省の各地方整備局など)
  • 特殊法人等(独立行政法人水資源機構、都市再生機構(UR)、高速道路会社(NEXCO)など、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第2条第1項および同法施行令第1条で定められた法人)
  • 地方公共団体(都道府県、市区町村)

たとえば、地域の自治会や町内会、あるいは民間の大企業や病院などと独自に災害時の支援協定を結んでいたとしても、相手方が上記の「国・特殊法人等・地方公共団体」でなければ、経審上の加点対象にはなりません。また、民間企業同士の単なる相互応援協定も対象外となります。

さらに、協定の内容自体も「災害時における建設業者の防災活動について定めたもの」である必要があります。地震や風水害などが発生した際に、道路の啓開(通行障害物の除去)や公共施設の応急復旧、災害対策用の資機材・重機の提供、オペレーターの派遣など、建設業者としての専門性を活かした具体的な防災活動を行う協定でなければなりません。単なる義援金の拠出や、一般的な防犯・見守り活動に関する協定はW3の対象とは区別されます。

団体への加入だけでなく防災活動での役割が必要

2つ目の条件は、団体経由で申請する場合に最も引っかかりやすい「構成員としての役割」に関する要件です。

会社が自治体等と直接協定を結んでいる場合は、協定書に自社の社名が明記されているため、防災活動の義務を負っていることが一目瞭然です。しかし、建設業協会や協同組合などの「団体」が自治体と協定を結んでいる場合、その団体に所属するすべての会員企業が災害時に出動するとは限りません。

そのため、経審の審査においては、単にその業界団体の会員名簿に名前が載っているだけでは加点を認めないという厳格な運用がなされています。加点対象となるためには、「災害時に自社が防災活動に一定の役割を担うこと」が客観的に確認できなければなりません。

具体的には、団体内部で策定された「防災活動計画書」や「災害時緊急出動編成表」「連絡体制表」などの書類において、自社が特定の出動班に編成されていたり、担当区域が割り当てられていたりするなど、協定に基づく実働部隊としての義務・役割を負っていることが確認できる必要があります。団体によっては、一般会員とは別に「防災部会」や「災害協力隊」といった組織を設けており、そこに登録している企業のみを証明対象としているケースもあります。

審査基準日(決算日)時点で協定と役割が有効であること

3つ目の条件は、「いつの時点でその状態にあるか」というタイミングのルールです。この防災活動への貢献(W3)における協定の締結や団体への所属・役割の有無については、「審査基準日(直前の営業年度末=決算日)」時点の状況によって評価が行われます。

したがって、防災協定による加点を受けるためには、直前の決算日の時点で以下のすべてが満たされている必要があります。

  • 団体と国・自治体等との間で防災協定が有効に締結されていること
  • 自社がその団体に正式に加入していること
  • 自社が団体の防災活動において一定の役割を担う体制(名簿や編成表など)に組み込まれていること

たとえば、3月31日が決算日の会社が、5月に経審の準備を始めて「防災部会に入っていなかったから、今すぐ登録しよう」と手続きをしたとします。この場合、5月に無事登録が完了したとしても、直前の審査基準日である3月31日時点では役割を担っていなかったことになるため、今回の経審では加点を受けられません。加点が反映されるのは、来期の決算(翌年3月31日)を迎えた後の経審からとなります。

このように、防災協定をはじめ審査基準日時点で判定される項目は、決算日を迎えた瞬間に評価が確定してしまいます。決算後に気づいてもその期の申請には間に合わないため、経審の点数アップに向けた年間スケジュールをあらかじめ把握し、決算日の前に所属団体での登録状況を確認しておくことが不可欠です。

所属する業界団体への確認方法と経審の証明書類

防災協定の適用条件が分かったところで、次は実際に所属している業界団体(建設業協会、専門工事業団体、事業協同組合など)へどのように確認し、どのような書類を揃えればよいのか、実務上の手順を整理していきましょう。

団体の事務局も、会員企業から経審用の問い合わせを受けることには慣れているケースが多いですが、こちらから確認すべきポイントを明確にして伝えることで、やり取りが格段にスムーズになります。

所属団体へ問い合わせる際に確認すべき3つの事項

所属団体の事務局へ電話やメールで問い合わせる際は、以下の3つの事項を順番に確認してください。手元に自社の「直前の決算日(審査基準日)」のメモを用意してから連絡すると確実です。

  1. 団体として、国や自治体等と経審の対象になる防災協定を締結しているか
    まずは団体自体が、都道府県や市区町村などと災害時の応急復旧等に関する協定を結んでいるかを確認します。複数の協定を結んでいる団体もあります。
  2. 自社が「審査基準日(直前の決算日)」時点で、その防災協定に基づく活動体制に含まれているか
    団体が協定を結んでいた場合、続けて「うちの決算日は〇年〇月〇日なのですが、その時点で、当組合の防災協定の協力体制(出動名簿や役割分担など)にうちは入っていますでしょうか?」と確認します。ここが加点可否の分かれ目になります。
  3. 経審申請用の「証明書」や「協定書・活動計画書の写し」を発行してもらえるか
    審査基準日時点で対象になっていることが確認できたら、経審の申請窓口に提示するための証明書類一式を発行してもらえるか尋ねます。あわせて、証明書の発行申請書(交付願)の取り寄せ方法、発行手数料の有無、そして「依頼してから手元に届くまでに何日くらいかかるか(所要日数)」を必ず確認しておきましょう。

団体によっては、代表者印を押印するために理事長の決裁が必要となり、証明書の発行までに1〜2週間ほど時間を要するところもあります。経審の審査予約日に間に合わなくなる事態を避けるためにも、余裕を持って早めに問い合わせることが大切です。

直接締結と団体経由で異なる確認資料・証明書の揃え方

経審の申請時に行政庁へ提示・提出する確認資料は、会社が自治体等と「直接締結している場合」と、「団体経由で参加している場合」とで必要な書類が異なります。それぞれの違いを比較表で確認してみましょう。

締結の形態主な確認資料・証明書類審査で確認されるポイント
会社が直接締結・防災協定書の写し国・特殊法人等・地方公共団体との協定であること、防災活動に関する協定であること、審査基準日時点で有効であること
業界団体経由・団体が発行する証明書
または
・「団体への加入を証する書類+防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる活動計画書等」
審査基準日時点で団体に加入し、協定に基づく防災活動に一定の役割を果たす立場にあること
締結形態による経審(W3)確認資料の違い

神奈川県では、業界団体を通じて防災協定の加点を受ける場合、必ずしも「協定書の写し・加入証明書・活動計画書」のすべてを揃えなければならないわけではありません。団体が発行する証明書によって、審査基準日時点でその団体に加入しており、協定に基づく防災活動に一定の役割を担っていることが確認できれば、その証明書を確認資料として使用できます。

一方、団体から単なる加入証明書しか発行されない場合には、それだけでは足りず、防災活動計画書や出動班編成表、役割分担表など、自社が実際に防災活動に一定の役割を果たす立場にあることを確認できる資料をあわせて提出する必要があります。なお、団体が発行する証明書には、審査基準日時点で対象となっていることが分かる記載が必要です。

また、防災協定という名称が付いていれば、どのような内容でも経審の加点対象になるわけではありません。神奈川県では、防災活動が有償であっても直ちに対象外となるわけではありませんが、協定の実質が請負契約や期間委託契約とみなされるものや、協定締結者を入札によって決定しているものなどは、加点対象外となる場合があります。そのため、「自治体と協定を結んでいる」という事実だけで判断せず、協定の相手方、内容、自社の役割、審査基準日時点での有効性まで確認することが重要です。

今後新たに防災協定への参加や締結を検討する際の注意点

所属団体へ確認してみたものの、「現時点では防災部会に登録していなかった」「所属している組合では防災協定を結んでいなかった」という結果になることもあるでしょう。その場合は、来期以降の経審に向けて、これから新たに防災協定への参加や締結を検討していくことになります。

最後に、今後新たに取り組む際の現実的な進め方と、経営者として必ず踏まえておくべき注意点についてお伝えします。

団体での参加条件の確認と自治体窓口への相談の流れ

これから防災協定による評価を目指す場合、いきなり自社単独で市役所や県庁へ交渉に行くよりも、まずは「すでに所属している業界団体の枠組みに参加できないか」を確認するのが最も現実的な第一歩です。

所属団体が自治体と防災協定を結んでいるのであれば、どうすればその防災活動の編成(防災部会や災害対策班など)に追加登録してもらえるのか、参加条件や募集時期を事務局に尋ねてみましょう。「一定の重機を保有していること」「緊急連絡体制を整えること」「年1回の防災訓練に参加すること」といった条件を満たせば、次年度の編成見直しのタイミングで登録できるケースが多く見られます。

もし現在の所属団体で協定を結んでいない場合は、地域の建設業協会や専門工事業組合など、防災協定を締結している他の建設業団体への新規加入を検討するか、あるいは自社単独で自治体と協定を結ぶ道を探ることになります。

自社単独での新規締結や、地域での協力体制について知りたい場合は、本店所在地がある自治体の防災担当窓口(危機管理課、防災対策課、あるいは道路・河川の管理課など)や、地域の建設業団体へ相談してみてください。自治体が現在どのような業種・エリアで災害時の協力業者を必要としているか、基本的な方向性を教えてもらえるはずです。

点数目的だけでなく災害時の人員・機材体制を踏まえる

防災協定への参加や新規締結を検討するにあたり、経営者として決して忘れてはならないのが、「防災協定は単なる経審の点数稼ぎのツールではない」ということです。

P点が約26点アップするというメリットは非常に魅力的ですが、防災協定を結ぶ(あるいは団体の防災体制に名を連ねる)ということは、大地震や集中豪雨、大雪などの災害が実際に発生した際、自治体や団体からの出動要請に応じて現場へ駆けつける社会的責任を負うことを意味します。

したがって、新たに参加・締結を検討する際は、以下の点について自社の体制を冷静に見つめ直す必要があります。

  • 夜間や休日であっても、緊急連絡を受けて速やかに動ける連絡網と人員(技術者・技能者)が確保できているか
  • 応急復旧や瓦礫の撤去などに必要な建設機械、車両、資材などを手配・稼働できる状態にあるか
  • 自社の従業員の安全確保や労務管理を含め、災害時の出動ルールを社内で共有できているか

もし、実態として出動できる人員も機材もないのに「点数だけ欲しいから」と無理に名前だけを連ねるようなことをすれば、いざ有事の際に要請に応えられず、地域社会や発注機関からの信頼を大きく損なう結果になりかねません。自社の規模や保有機材、人員体制を踏まえ、「自分たちにできる範囲で、いかに地域の安全に貢献するか」という誠実な姿勢で検討することが何より大切です。

まとめとして、経営事項審査における防災協定(W3)の評価は、地域を守る建設業者の取り組みが正当にスコアへ反映される重要な項目です。まずは現在所属している業界団体へ「審査基準日時点で対象になっていないか」「証明書を発行してもらえないか」を確認し、既存の加点機会の見落としを防ぎましょう。そして、これから参加を検討される場合は、自社の体制を整えながら、地域貢献と計画的な経審対策を両立させていっていただければと思います。

なお、建設業許可や経営事項審査の手続き、決算に向けた事前の評点シミュレーションなどについて疑問やお悩みがある場合は、川崎の建設業に強い行政書士として多数のサポートを行っている当事務所の建設業許可・経営事項審査の案内ページもあわせてご参照ください。

 

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