建設業許可「欠格要件」とは?役員の経歴まで徹底解説

「そんなことまで?」建設業許可で必ず確認される欠格要件とは

建設業許可のご相談をお受けするにあたって、経営管理責任者・専任技術者などの人の要件、資産要件(一般許可であれば500万円)など主要なポイントから確認するのですが、それらの要件を満たした後に必ず聞くことがあります。

「御社の役員、5%以上の議決権を持つ株主、支店長などのなかに、過去に有罪判決を受けたり、暴力団の方だったり、破産者の方はいませんか?」

少なからず、「何でですか?」と、けげんな表情をされます。おそらく心の中では「なんて失礼なことを聞くんだ」と思っているのではないかと想像します。

しかし、この質問は、建設業許可の取得において極めて重要な「欠格要件」の確認です。神奈川県の手引きでも、欠格要件に該当しないことは独立した許可要件の一つとされており、もし一人でも該当者がいれば、他の要件をすべて満たしていても許可は下りません。

申請後は、役員等が欠格要件に該当しないかについて行政庁による審査が行われます。暴力団関係などについて関係機関への確認が行われる場合もあり、単なる自己申告だけで審査が終わるわけではありません。

申請前であれば辞任してもらうなどの適法な対応が可能ですが、申請してしまうと不許可になってしまいます。手数料9万円(一般許可の場合)は返ってこないし、当事務所の報酬もお返しできない。再申請する場合は同じだけ費用が掛かる。何より許可取得が遅れる。いいことは何もない。なので、正直にお話しください。と説明しています。

この記事では、建設業許可を目指す経営者の方が必ず知っておくべき「欠格要件」について、その目的から具体的な内容、そして「もしや…」と思ったときにどうすべきかまで、専門家の視点から徹底的に解説します。過去の経歴に不安がある方も、自己判断で諦める前に、まずは正しい知識を身につけていきましょう。この記事を読むことで、欠格要件の全体像と、申請前に何をすべきかが明確になるはずです。

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そもそもなぜ欠格要件が定められているのか?

なぜ、個人の過去の経歴まで審査の対象になるのでしょうか。それは、建設業が私たちの生活の安全に直結する、きわめて公共性の高い産業だからです。

建物の建築やインフラ整備には、高い技術力だけでなく、法律を守る誠実な経営姿勢が不可欠です。もし、経営に問題のある事業者が参入すれば、手抜き工事や不正行為につながり、大きな事故を引き起こすかもしれません。こうした事態を防ぎ、業界全体の信頼性を守るために、建設業許可制度には「不適格な事業者を排除する」ためのセーフティネットが設けられています。

その根拠となるのが、建設業法第8条に定められた欠格要件です。この条文は、建設業を営むにふさわしくない者をあらかじめ排除することで、発注者や国民の安全と利益を守ることを目的としています。

つまり、欠格要件の審査は、単なる手続き上のルールではなく、建設業者としての社会的責任を果たす資格があるかどうかを問う、重要なプロセスなのです。

(参照:建設業法(昭和二十四年法律第百号))

誰が対象?欠格要件の審査対象となる人物の範囲

では、具体的に「誰」の経歴が審査されるのでしょうか。法律で定められた対象者の範囲は、思いのほか広いので注意が必要です。うっかり確認を漏らしてしまうと、後で大きな問題になりかねません。

審査の対象となるのは、主に以下の人々です。

  • 法人の場合:
    • 常勤・非常勤を問わず、役員等(取締役、執行役、持分会社の業務執行社員、組合の理事など)
    • 相談役、顧問(肩書に関わらず、取締役等と同等以上の経営を支配していると認められる者)
    • 議決権の5%以上を保有する株主
    • 令第3条に規定する使用人(支店長、営業所長など、契約締結権限を持つ者)
  • 個人の場合:
    • 事業主本人
    • 令第3条に規定する使用人(支配人など)

特に注意したいのが、「相談役」や「顧問」といった肩書の方や、「5%以上の株主」も対象に含まれる点です。登記簿に記載されている役員だけでなく、実質的に会社の経営に強い影響力を持つ人物まで審査範囲となることを覚えておきましょう。経営業務の管理責任者や専任技術者だけでなく、これらの人々全員について、欠格要件に該当しないことを確認する必要があります。

建設業許可の欠格要件の審査対象となる人物の範囲を図解したインフォグラフィック。法人では役員、相談役、5%以上の株主、支店長などが、個人では事業主本人が対象となることを示している。

【具体例で解説】建設業許可の主な欠格要件と注意点

ここからは、建設業法第8条に定められた欠格要件の中から、特にご相談が多く、判断に迷いやすい項目をピックアップして具体的に解説していきます。「過去にこんなことがあったけど、大丈夫だろうか?」という不安をお持ちの方は、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

①破産手続と「復権」の考え方

「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は欠格要件に該当します。

ここで重要なのは、「過去に破産したこと=即アウト」ではないという点です。ポイントは「復権を得ているかどうか」です。

復権とは、破産手続きによって制限されていた法律上の資格(資格制限)が回復することを指します。自己破産の場合、裁判所から「免責許可決定」が確定すれば、自動的に復権します。

つまり、過去に自己破産を経験された方でも、すでに免責許可決定が確定し、復権しているのであれば、この欠格要件には該当しません。自己判断で「破産したからもうダメだ」と諦める必要はないのです。もし不安な場合は、ご自身の現在の状況がどうなっているかを正確に確認することが大切です。

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②前科・有罪判決はどこまで影響する?

犯罪歴に関する要件は、内容が複雑で誤解されやすい部分です。大きく分けて「拘禁刑以上の刑」と「特定の法律違反による罰金刑」の2つのパターンがあります。

拘禁刑以上の刑

「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」は欠格要件に該当します。

  • 実刑判決を受けた場合:刑務所から出所した日(刑の執行が終わった日)から5年間は許可を受けられません。
  • 執行猶予付き判決を受けた場合:これは特に注意が必要です。執行猶予の期間中は欠格要件に該当します。しかし、執行猶予期間が無事に満了すれば、刑の言渡しは効力を失うため、満了したその日から欠格要件には該当しなくなります。

「執行猶予が終わればすぐに大丈夫」と勘違いされがちですが、猶予期間の真っただ中はNGである点をしっかり押さえておきましょう。

建設業許可の欠格要件となる前科の影響を図解。実刑判決の場合は出所後5年間、執行猶予付き判決の場合はその期間中が欠格期間となることを示している。

特定の法律違反による罰金刑

「特定の法律に違反し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」も欠格要件に該当します。

すべての罰金刑が対象になるわけではありません。対象となるのは、以下のような法律に違反した場合です。

  • 建設業法
  • 建築基準法、宅地造成及び特定盛土等規制法、都市計画法などの一部
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)
  • 刑法の傷害罪、暴行罪、脅迫罪、背任罪など
  • 暴力行為等処罰に関する法律

例えば、スピード違反などの道路交通法違反による罰金は、原則としてこの欠格要件には該当しません。無許可営業などの建設業法違反で罰金刑を受けた方が役員等にいる場合、その刑の執行が終わってから5年間は、法人として建設業許可を受けられません。

③許可の取消処分や営業停止処分を受けた場合

過去に建設業者として行政処分を受けた経歴も審査されます。

  • 許可の取消処分:不正な手段で許可を取得したり、営業停止処分に違反したりして建設業許可を取り消された場合、その取消しの日から5年間は新たに許可を受けることができません。
  • 駆け込み廃業:許可取消を免れるために、行政庁からの聴聞通知を受け取った後に自主的に廃業届を提出した場合(いわゆる「駆け込み廃業」)でも、同様に届出の日から5年間は許可を受けられません。不正な回避は認められない仕組みになっています。
  • 営業停止処分:営業停止を命じられ、その停止期間がまだ終わっていない場合は、期間が満了するまで許可は受けられません。

これらの処分歴は、建設業許可の更新ができないだけでなく、新規の申請にも影響します。

④暴力団員等との関係性

建設業界からの反社会的勢力の排除は、法律の非常に厳しい要請です。

「暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」は、欠格要件に明確に該当します。「元暴力団員」であっても、組織を離れてから5年が経過していなければなりません。

また、役員等自身が該当しなくても、「暴力団員等がその事業活動を支配する」と判断された場合も同様に欠格要件に該当します。これは、会社が反社会的勢力の資金源となることを防ぐための規定であり、コンプライアンス遵守の姿勢が厳しく問われます。

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欠格要件に該当するかも…申請前にすべきこと

ここまで読んで、「もしかしたら、うちの役員が該当するかもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。その場合に最もやってはいけないのが、「隠して申請してしまう」ことです。

なお、欠格要件に該当する事実そのものだけでなく、申請書や役員等の調書に重要な事実を記載しなかった場合や、虚偽の記載をした場合も、許可されない理由となります。
そのため、「書かなければ分からないだろう」と自己判断するのは非常に危険です。

先述の通り、行政庁は警察などに照会して厳格な審査を行います。もし欠格要件に該当する事実が発覚すれば、申請は許可されません。そうなると、申請手数料や専門家に支払った報酬が無駄になるだけでなく、事業計画にも大きな支障が出てしまいます。

では、どうすればよいのでしょうか。

正しい対処法は、申請前に適切な対応を取ることです。例えば、欠格要件に該当する可能性のある方が役員にいる場合、その方に役員を退任していただく、といった方法が考えられます。もちろん、そのためには法的に有効な手続き(株主総会での決議や登記の変更など)が必要です。

しかし、ご自身の判断で「このケースは該当するのか?」「退任手続きはどうすれば?」と悩むのは得策ではありません。解釈を誤ったり、手続きに不備があったりすれば、結局は許可が取れないという事態になりかねません。だからこそ、最短での許可取得を目指すためにも、まずは専門家に相談することが不可欠です。私たちは状況を正確に分析し、法的にクリアできる最善の道筋を一緒に考えます。

まとめ|欠格要件の確認は専門家への正直な相談から

建設業許可における「欠格要件」は、申請の成否を左右する非常に重要なチェック項目です。審査の対象は役員だけでなく、支店長や大株主まで及び、破産歴や前科といったデリケートな情報も含まれます。

この記事で解説したように、

  • 過去に破産していても「復権」していれば問題ない
  • 刑の「執行猶予期間中」は欠格要件に該当する
  • 罰金刑は、建設業法違反など特定の法律違反の場合に限られる

など、要件の解釈は単純ではありません。「昔破産したことがある」「過去に刑事処分を受けたことがある」といった事実だけで直ちに許可不可と決めつけず、現在も欠格要件に該当するのかを個別に確認する必要があるのです。

だからこそ、最もお伝えしたいのは「自己判断で諦めたり、情報を隠したりせず、まずは専門家に正直にお話しいただきたい」ということです。

私たち専門家には守秘義務があります。ご相談いただいた内容を、正当な理由なく外部に漏らすことはありません。お話しにくい内容であっても、正確な事実を教えていただくことで、初めて私たちは最適な解決策をご提案できます。

もしかしたら、ご自身が「もうダメだ」と思っていることが、法律的には全く問題ないケースかもしれません。あるいは、役員構成を見直すといった対策を講じることで、適法に許可を取得できる道筋が見つかるかもしれません。

不安を抱えたまま手続きを進める前に、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。状況を確認したうえで、申請に向けた対応を丁寧にサポートいたします。

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