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建設業許可「欠格要件」とは?役員の経歴まで徹底解説
「そんなことまで?」建設業許可で必ず確認される欠格要件とは
建設業許可のご相談をお受けするにあたって、経営管理責任者・専任技術者などの人の要件、資産要件(一般許可であれば500万円)など主要なポイントから確認するのですが、それらの要件を満たした後に必ず聞くことがあります。
「御社の役員、5%以上の議決権を持つ株主、支店長などのなかに、過去に有罪判決を受けたり、暴力団の方だったり、破産者の方はいませんか?」
少なからず、「何でですか?」と、けげんな表情をされます。おそらく心の中では「なんて失礼なことを聞くんだ」と思っているのではないかと想像します。
しかし、この質問は、建設業許可の取得において極めて重要な「欠格要件」の確認です。神奈川県の手引きでも、欠格要件に該当しないことは独立した許可要件の一つとされており、もし一人でも該当者がいれば、他の要件をすべて満たしていても許可は下りません。
申請後は、役員等が欠格要件に該当しないかについて行政庁による審査が行われます。暴力団関係などについて関係機関への確認が行われる場合もあり、単なる自己申告だけで審査が終わるわけではありません。
申請前であれば辞任してもらうなどの適法な対応が可能ですが、申請してしまうと不許可になってしまいます。手数料9万円(一般許可の場合)は返ってこないし、当事務所の報酬もお返しできない。再申請する場合は同じだけ費用が掛かる。何より許可取得が遅れる。いいことは何もない。なので、正直にお話しください。と説明しています。
この記事では、建設業許可を目指す経営者の方が必ず知っておくべき「欠格要件」について、その目的から具体的な内容、そして「もしや…」と思ったときにどうすべきかまで、専門家の視点から徹底的に解説します。過去の経歴に不安がある方も、自己判断で諦める前に、まずは正しい知識を身につけていきましょう。この記事を読むことで、欠格要件の全体像と、申請前に何をすべきかが明確になるはずです。
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そもそもなぜ欠格要件が定められているのか?
なぜ、個人の過去の経歴まで審査の対象になるのでしょうか。それは、建設業が私たちの生活の安全に直結する、きわめて公共性の高い産業だからです。
建物の建築やインフラ整備には、高い技術力だけでなく、法律を守る誠実な経営姿勢が不可欠です。もし、経営に問題のある事業者が参入すれば、手抜き工事や不正行為につながり、大きな事故を引き起こすかもしれません。こうした事態を防ぎ、業界全体の信頼性を守るために、建設業許可制度には「不適格な事業者を排除する」ためのセーフティネットが設けられています。
その根拠となるのが、建設業法第8条に定められた欠格要件です。この条文は、建設業を営むにふさわしくない者をあらかじめ排除することで、発注者や国民の安全と利益を守ることを目的としています。
つまり、欠格要件の審査は、単なる手続き上のルールではなく、建設業者としての社会的責任を果たす資格があるかどうかを問う、重要なプロセスなのです。
(参照:建設業法(昭和二十四年法律第百号))
誰が対象?欠格要件の審査対象となる人物の範囲
では、具体的に「誰」の経歴が審査されるのでしょうか。法律で定められた対象者の範囲は、思いのほか広いので注意が必要です。うっかり確認を漏らしてしまうと、後で大きな問題になりかねません。
審査の対象となるのは、主に以下の人々です。
- 法人の場合:
- 常勤・非常勤を問わず、役員等(取締役、執行役、持分会社の業務執行社員、組合の理事など)
- 相談役、顧問(肩書に関わらず、取締役等と同等以上の経営を支配していると認められる者)
- 議決権の5%以上を保有する株主
- 令第3条に規定する使用人(支店長、営業所長など、契約締結権限を持つ者)
- 個人の場合:
- 事業主本人
- 令第3条に規定する使用人(支配人など)
特に注意したいのが、「相談役」や「顧問」といった肩書の方や、「5%以上の株主」も対象に含まれる点です。登記簿に記載されている役員だけでなく、実質的に会社の経営に強い影響力を持つ人物まで審査範囲となることを覚えておきましょう。経営業務の管理責任者や専任技術者だけでなく、これらの人々全員について、欠格要件に該当しないことを確認する必要があります。

【具体例で解説】建設業許可の主な欠格要件と注意点
ここからは、建設業法第8条に定められた欠格要件の中から、特にご相談が多く、判断に迷いやすい項目をピックアップして具体的に解説していきます。「過去にこんなことがあったけど、大丈夫だろうか?」という不安をお持ちの方は、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
①破産手続と「復権」の考え方
「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は欠格要件に該当します。
ここで重要なのは、「過去に破産したこと=即アウト」ではないという点です。ポイントは「復権を得ているかどうか」です。
復権とは、破産手続きによって制限されていた法律上の資格(資格制限)が回復することを指します。自己破産の場合、裁判所から「免責許可決定」が確定すれば、自動的に復権します。
つまり、過去に自己破産を経験された方でも、すでに免責許可決定が確定し、復権しているのであれば、この欠格要件には該当しません。自己判断で「破産したからもうダメだ」と諦める必要はないのです。もし不安な場合は、ご自身の現在の状況がどうなっているかを正確に確認することが大切です。
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②前科・有罪判決はどこまで影響する?
犯罪歴に関する要件は、内容が複雑で誤解されやすい部分です。大きく分けて「拘禁刑以上の刑」と「特定の法律違反による罰金刑」の2つのパターンがあります。
拘禁刑以上の刑
「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」は欠格要件に該当します。
- 実刑判決を受けた場合:刑務所から出所した日(刑の執行が終わった日)から5年間は許可を受けられません。
- 執行猶予付き判決を受けた場合:これは特に注意が必要です。執行猶予の期間中は欠格要件に該当します。しかし、執行猶予期間が無事に満了すれば、刑の言渡しは効力を失うため、満了したその日から欠格要件には該当しなくなります。
「執行猶予が終わればすぐに大丈夫」と勘違いされがちですが、猶予期間の真っただ中はNGである点をしっかり押さえておきましょう。

特定の法律違反による罰金刑
「特定の法律に違反し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」も欠格要件に該当します。
すべての罰金刑が対象になるわけではありません。対象となるのは、以下のような法律に違反した場合です。
- 建設業法
- 建築基準法、宅地造成及び特定盛土等規制法、都市計画法などの一部
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)
- 刑法の傷害罪、暴行罪、脅迫罪、背任罪など
- 暴力行為等処罰に関する法律
例えば、スピード違反などの道路交通法違反による罰金は、原則としてこの欠格要件には該当しません。無許可営業などの建設業法違反で罰金刑を受けた方が役員等にいる場合、その刑の執行が終わってから5年間は、法人として建設業許可を受けられません。
③許可の取消処分や営業停止処分を受けた場合
過去に建設業者として行政処分を受けた経歴も審査されます。
- 許可の取消処分:不正な手段で許可を取得したり、営業停止処分に違反したりして建設業許可を取り消された場合、その取消しの日から5年間は新たに許可を受けることができません。
- 駆け込み廃業:許可取消を免れるために、行政庁からの聴聞通知を受け取った後に自主的に廃業届を提出した場合(いわゆる「駆け込み廃業」)でも、同様に届出の日から5年間は許可を受けられません。不正な回避は認められない仕組みになっています。
- 営業停止処分:営業停止を命じられ、その停止期間がまだ終わっていない場合は、期間が満了するまで許可は受けられません。
これらの処分歴は、建設業許可の更新ができないだけでなく、新規の申請にも影響します。
④暴力団員等との関係性
建設業界からの反社会的勢力の排除は、法律の非常に厳しい要請です。
「暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」は、欠格要件に明確に該当します。「元暴力団員」であっても、組織を離れてから5年が経過していなければなりません。
また、役員等自身が該当しなくても、「暴力団員等がその事業活動を支配する」と判断された場合も同様に欠格要件に該当します。これは、会社が反社会的勢力の資金源となることを防ぐための規定であり、コンプライアンス遵守の姿勢が厳しく問われます。
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欠格要件に該当するかも…申請前にすべきこと
ここまで読んで、「もしかしたら、うちの役員が該当するかもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。その場合に最もやってはいけないのが、「隠して申請してしまう」ことです。
なお、欠格要件に該当する事実そのものだけでなく、申請書や役員等の調書に重要な事実を記載しなかった場合や、虚偽の記載をした場合も、許可されない理由となります。
そのため、「書かなければ分からないだろう」と自己判断するのは非常に危険です。
先述の通り、行政庁は警察などに照会して厳格な審査を行います。もし欠格要件に該当する事実が発覚すれば、申請は許可されません。そうなると、申請手数料や専門家に支払った報酬が無駄になるだけでなく、事業計画にも大きな支障が出てしまいます。
では、どうすればよいのでしょうか。
正しい対処法は、申請前に適切な対応を取ることです。例えば、欠格要件に該当する可能性のある方が役員にいる場合、その方に役員を退任していただく、といった方法が考えられます。もちろん、そのためには法的に有効な手続き(株主総会での決議や登記の変更など)が必要です。
しかし、ご自身の判断で「このケースは該当するのか?」「退任手続きはどうすれば?」と悩むのは得策ではありません。解釈を誤ったり、手続きに不備があったりすれば、結局は許可が取れないという事態になりかねません。だからこそ、最短での許可取得を目指すためにも、まずは専門家に相談することが不可欠です。私たちは状況を正確に分析し、法的にクリアできる最善の道筋を一緒に考えます。
まとめ|欠格要件の確認は専門家への正直な相談から
建設業許可における「欠格要件」は、申請の成否を左右する非常に重要なチェック項目です。審査の対象は役員だけでなく、支店長や大株主まで及び、破産歴や前科といったデリケートな情報も含まれます。
この記事で解説したように、
- 過去に破産していても「復権」していれば問題ない
- 刑の「執行猶予期間中」は欠格要件に該当する
- 罰金刑は、建設業法違反など特定の法律違反の場合に限られる
など、要件の解釈は単純ではありません。「昔破産したことがある」「過去に刑事処分を受けたことがある」といった事実だけで直ちに許可不可と決めつけず、現在も欠格要件に該当するのかを個別に確認する必要があるのです。
だからこそ、最もお伝えしたいのは「自己判断で諦めたり、情報を隠したりせず、まずは専門家に正直にお話しいただきたい」ということです。
私たち専門家には守秘義務があります。ご相談いただいた内容を、正当な理由なく外部に漏らすことはありません。お話しにくい内容であっても、正確な事実を教えていただくことで、初めて私たちは最適な解決策をご提案できます。
もしかしたら、ご自身が「もうダメだ」と思っていることが、法律的には全く問題ないケースかもしれません。あるいは、役員構成を見直すといった対策を講じることで、適法に許可を取得できる道筋が見つかるかもしれません。
不安を抱えたまま手続きを進める前に、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。状況を確認したうえで、申請に向けた対応を丁寧にサポートいたします。
関連情報:建設業許可の行政書士費用

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
建設業許可の行政書士費用はいくら?報酬相場と追加料金
建設業許可、行政書士に頼むと総額いくら?費用の全内訳
「建設業許可を取りたいけど、行政書士に頼むと一体いくらかかるんだろう?」
建設業を営む社長様にとって、これは非常に切実な疑問だと思います。インターネットで調べても事務所ごとに料金が異なり、何が費用に含まれているのかも分かりにくく、不安を感じていらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、最も一般的な「新規・知事・一般」の建設業許可を行政書士に依頼した場合、総額で20万円~30万円程度がひとつの目安となります。
ただし、この金額はあくまで標準的なケースです。お客様の状況によっては、これより安くなることも、高くなることもあります。大切なのは、なぜその金額になるのか、費用の「内訳」を正しく理解することです。
この記事では、建設業許可申請の費用について、行政書士が分かりやすく、実務に即して解説します。費用の全体像から、報酬の相場、そして「話が違う!」となりがちな追加費用まで、この記事では、費用の全体像を把握しやすいように整理します。建設業許可の全体像については、建設業許可の申請についてで体系的に解説しています。
モデルケース:新規・知事・一般許可の総費用目安
まずは、一番ご相談の多い「新規・知事・一般許可」を例に、具体的な費用のシミュレーションを見ていきましょう。
| ① 行政書士への基本報酬 | 132,000円~ |
| ② 都道府県に納める法定費用 | 90,000円 |
| ③ 証明書取得などの実費 | 10,000円程度~ |
| 【合計】 | 232,000円~ |
このように、総費用は大きく3つのパーツから成り立っています。この後のセクションで、それぞれの費用がどのような性質のものなのか、詳しく解説していきますのでご安心ください。ちなみに、許可取得までには一定の建設業許可取得までの期間も必要です。
費用の三階建て構造:①行政書士報酬+②法定費用+③その他実費
建設業許可の申請費用は、よく「三階建て」に例えられます。この構造を理解することが、費用に関する疑問を解消する第一歩です。

- 1階部分:行政書士報酬
専門家である行政書士に支払う手数料です。書類作成や行政庁への確認・補正対応、申請代行といった専門的なサービスへの対価であり、事務所によって料金が異なります。 - 2階部分:法定費用
許可を出す行政庁(都道府県など)に納める申請手数料です。これは法律で定められた金額であり、どの行政書士に頼んでも、あるいはご自身で申請しても必ず同額がかかります。 - 3階部分:その他実費
申請に必要な公的な証明書(登記簿謄本や納税証明書など)を取得するための費用です。これも誰が申請しても必ず発生する費用となります。
この3つの合計が、あなたが支払う総額になるわけです。見積もりを見る際は、これらの費用がきちんと分けて記載されているかを確認することが重要です。もちろん、申請の前提として、建設業許可の要件をクリアしている必要があります。
【相場】行政書士の基本報酬はいくら?
では、費用の大部分を占める「行政書士報酬」の相場はどのくらいなのでしょうか。高すぎても困りますし、安すぎてもサービスの質が心配になりますよね。ここでは、客観的なデータと当事務所の料金を比較しながら見ていきましょう。
全国平均データで見る報酬相場(新規・知事許可)
日本行政書士会連合会が定期的に行っている報酬額の統計調査というものがあります。これによると、最新の令和7年度の調査(令和8年1月実施)では、建設業許可(法人・一般・知事・新規)の報酬について、以下のような結果が出ています。
- 平均値:151,341円
- 最も多かった価格帯(最頻値):165,000円
つまり、全国的な行政書士報酬の相場は、おおよそ15万円~16万円台であると言えます。これは、あなたが行政書士を選ぶ際のひとつの客観的な基準となるでしょう。
当事務所の基本報酬とサービス範囲
当事務所の新規許可申請(知事許可)における基本報酬は、132,000円(税込)~とさせていただいております。これは、先ほどの全国的な相場と比較すると、比較的ご利用いただきやすい価格設定になっているかと存じます。
もちろん、ただ安いだけではありません。この基本報酬には、以下のサービスがすべて含まれています。
- 無料相談・要件診断
- 申請書類一式の作成
- 行政庁への申請代行
- 申請に関する行政庁への確認・補正対応
専門特化による業務の効率化を図ることで、高品質なサービスを適正な価格でご提供しています。お客様にご用意いただく書類の準備から、煩雑な申請手続きまで、許可取得に向けて責任を持ってサポートいたしますので、どうぞご安心ください。
【要注意】基本報酬に「含まれない」追加費用が発生する5つのケース
「最初の見積もりは安かったのに、後からどんどん追加料金を請求された…」これは、行政書士選びで最も避けたい失敗です。こうした事態を防ぐには、どのような場合に追加費用が発生するのかを事前に知っておくことが不可欠です。
ここでは、専門家の視点から、特に追加費用が発生しやすい5つの典型的なケースを詳しく解説します。
ケース1:専任技術者の「実務経験証明」が複雑な場合
追加費用が発生する最も多いパターンが、この「実務経験証明」です。建設業許可では、営業所に専任の技術者を置く必要がありますが、国家資格などをお持ちでない場合、「10年間」の実務経験を書類で証明しなければなりません。
この証明が、想像以上に大変な作業になることがあるのです。
例えば、過去10年分の工事に関する契約書、注文書、請求書、そしてその入金が確認できる通帳などを、1件1件確認し、申請する業種との関連性を整理していく必要があります。資料がバラバラに保管されていたり、一部が紛失していたりすると、作業量が大きく増えることがあります。
こうした証明作業は、お客様の状況によって難易度が大きく変わるため、多くの事務所では基本報酬とは別に、追加報酬を設定しています。当事務所でも、実務経験証明が必要な場合は、+55,000円の追加報酬をいただいております。これは、許可取得の確実性を高めるための、緻密な作業に対する対価とお考えいただければ幸いです。場合によっては、学歴によって実務経験の証明期間を短縮できるケースもあります。
ケース2:経営管理責任者の経験証明がイレギュラーな場合
建設業許可の要件には、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する」こと、通称「経管(ケイカン)」の要件があります。最も一般的なのは、建設業に関して5年以上の経営経験(役員など)があることですが、この経験をお持ちでないケースも少なくありません。
例えば、建設業以外の業種での役員経験や、経営者に次ぐ立場で経営を補佐した経験などを証明する場合、通常の申請よりも多くの書類と、行政を納得させるための論理的な説明が求められます。これは行政書士の専門的な知識と経験が問われる部分であり、やはり追加の作業が発生します。
当事務所の料金ページにも記載の通り、「経営管理責任者が建設業許可業者での役員経験がない場合」には、+33,000円の追加報酬をいただいております。より詳しい要件については、経営業務管理責任者とはのページをご覧ください。
ケース3:申請後の「補正対応」に時間と手間がかかる場合
無事に申請書類を提出しても、それで終わりではありません。行政庁の審査官が内容をチェックし、疑問点や不備があれば、修正や追加資料の提出を求められます。これを「補正」と呼びます。
軽微な修正であれば基本報酬の範囲内で対応するのが通常ですが、問題が複雑な場合は注意が必要です。例えば、過去の工事内容について疑義が生じたり、社会保険の加入状況に問題が見つかったりした場合、何度も行政庁と協議を重ねたり、膨大な追加資料を作成したりする必要が出てくることがあります。このような予期せぬ事態への対応には、別途費用が発生する可能性があることを念頭に置いておくとよいでしょう。
ケース4:証明書類の取得代行や遠方への出張が必要な場合
これは「報酬」ではなく「実費」や「日当」に関する話です。基本報酬には、通常、申請書類の作成と提出代行が含まれていますが、それに付随する細かな費用は別途請求されることが一般的です。
- 証明書類の取得代行費用:登記事項証明書、納税証明書、役員の身分証明書など、当事務所がお客様に代わって取得する場合の手数料。
- 交通費・日当:営業所が遠方にあり、現地調査や行政庁への出張が必要な場合の費用(当事務所では、神奈川県、東京都への申請の場合は、日当はいただいておりません)。
これらの費用は、見積もり段階では確定しにくいため、後から実費として請求されることが多いです。見積もりを確認する際は、どこまでが報酬に含まれ、何が別途実費としてかかるのかをしっかり確認しましょう。行政庁への申請方法は自治体によっても異なります。
ご自身の申請内容がどのようなものかによって、費用は変動するということをご理解ください。
【内訳】行政書士報酬以外に必ずかかる法定費用・実費
ここまで行政書士の報酬について詳しく見てきましたが、冒頭で説明した通り、総費用には報酬以外に「法定費用」と「その他実費」が含まれます。これらは、行政書士に依頼せずご自身で申請した場合でも、必ず必要になる費用です。
役所に納める手数料(法定費用)一覧
法定費用は、申請の種類と、営業所の所在地によって区分される「知事許可」か「大臣許可」かによって金額が決まっています。これは国や都道府県に納める手数料であり、値引きなどはありません。
| 申請区分 | 法定費用 |
|---|---|
| 新規申請(知事許可) | 90,000円 |
| 新規申請(大臣許可) | 150,000円 |
| 更新申請・業種追加申請 | 50,000円 |
※国土交通大臣の新規許可は登録免許税として納付します。更新・業種追加は収入印紙、知事許可は各都道府県所定の方法で納付します。
※一般建設業と特定建設業を同時に申請する場合などは、手数料が加算されます。
行政書士の見積もりで、この法定費用が報酬と合算されて「申請費用一式」などと記載されている場合は、内訳を確認することをお勧めします。
証明書取得にかかる費用(その他実費)
申請には、会社の身元や役員の方の情報を証明するために、様々な公的証明書を添付する必要があります。これらの取得費用も、お客様にご負担いただく実費となります。
主な証明書と取得費用の目安は以下の通りです。
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本):1通 600円
- 納税証明書:1通 400円程度
- 身分証明書:1通 300円程度
- 登記されていないことの証明書:1通 300円
これらの証明書は、役員の人数や会社の状況によって必要な通数が変わります。合計すると、数千円から1万円を超えることも珍しくありません。詳細な必要書類については、無料相談前に準備すべき資料リストのページも参考にしてください。
【実例】当事務所の料金と許可取得までの道のり
先日、新規で建設業許可を取りたいという社長様からお電話をいただきました。開口一番、やはり「いくらかかるの?」というご質問でした。
費用が気になるのは自然なことです。しかし、私はいつも正直にお伝えするようにしています。
「お電話ありがとうございます。費用については、お客様の状況によって変わってまいります。例えば、経営のご経験や技術者の資格の有無、お手元にある書類の状況などをお聞かせいただかないと、正確な金額は出せないのが正直なところです。」
少し間を置いて、こう続けました。
「ただ、目安としてお伝えしますと、もし一番スムーズなケースであれば、全国の行政書士の相場(15万~16万円)よりはお安い13万2千円(税込)でご案内できるかと思います。一方で、先ほど申し上げた実務経験を書類で証明するような場合は、どうしても作業が増えますので、相場より少し上になるかもしれません。その代わり、と言ってはなんですが、許可が取れるよう、私たちがとことんお付き合いし、徹底的に書類を確認させていただきます。まずはお手元の資料を拝見した上で、正式なお見積書を出させていただけませんでしょうか。」
このご説明に納得いただけたのか、社長様は「分かった、それなら一度見てもらうよ」とご信頼くださり、正式にご依頼いただくことになりました。私たちは、ただ安い料金を提示するのではなく、お客様一人ひとりの状況に真摯に向き合い、透明性のある料金で、許可取得に向けて、必要書類の確認と申請手続きを丁寧にサポートします。具体的な相談から許可申請の流れについても、ウェブサイトでご確認いただけます。
費用だけで選ぶのは危険!失敗しない行政書士選びの3つの視点
ここまで読んでくださったあなたは、建設業許可の費用について、かなり詳しくなったはずです。最後に、その知識を活かして「本当に信頼できる行政書士」を選ぶための、3つの重要な視点をお伝えします。
視点1:「追加費用の範囲」を見積もりで確認する
「基本報酬5万円~」といった、一見して安すぎる広告には注意が必要です。その裏では、相談料や書類取得代行費、軽微な補正対応まで、あらゆるものが追加費用の対象になっている可能性があります。
見積もりを取る際は、必ず「この金額にはどこまでの業務が含まれていますか?」「追加費用が発生するとしたら、どのような場合ですか?」と具体的に質問しましょう。この質問に明確に答えられない事務所は、避けた方が賢明かもしれません。
視点2:建設業許可の「専門性」と「実績」を確かめる
行政書士が扱う業務は非常に幅広いため、すべての業務に精通しているわけではありません。建設業許可は、数ある許認可の中でも特に要件が複雑で、行政庁ごとの「ローカルルール」も存在します。
だからこそ、建設業許可を中心に取り扱っている事務所を選ぶことが、申請準備や行政庁対応を円滑に進めるうえで役立ちます。事務所のウェブサイトを見て、建設業許可に関する情報が豊富か、具体的な解決事例が掲載されているかなどをチェックしましょう。例えば、他県での経験証明のように、専門家でなければ判断が難しいケースは多々あります。
視点3:許可取得後の「アフターフォロー」まで任せられるか
建設業許可は、一度取得したら終わりではありません。毎年、事業年度終了後4ヶ月以内に「決算変更届」を提出し、5年ごとに「更新申請」を行う必要があります。未提出の決算変更届があると、更新申請や経営事項審査を進める際に、先に提出を求められるなど手続上の支障が生じることがあります。また、更新申請を行わなければ許可は失効します。
目先の申請費用だけでなく、こうした許可取得後の手続きまで、長期的なパートナーとしてサポートしてくれる事務所を選ぶことが、事業の安定的な継続には不可欠です。役員変更や本店移転など、事業の変更に応じた手続きも発生しますので、一貫して任せられる専門家を見つけることが大切です。
まとめ|建設業許可の費用は専門家への相談から始めよう
建設業許可を行政書士に依頼する際の費用について、ご理解いただけたでしょうか。
総費用の目安は20万円~30万円程度ですが、これは「行政書士報酬」「法定費用」「その他実費」の3つで構成されています。特に報酬は、お客様の状況、特に経営管理責任者や専任技術者の証明の難易度によって変動します。
費用に関する漠然とした不安は、専門家に相談することで解消できます。「自分の場合は総額でいくらになるのか?」を正確に知ることが、最初の一歩です。
当事務所では、建設業許可に関する無料相談を実施しております。お客様の状況を丁寧にお伺いし、詳細なお見積もりを無料でご提示いたします。強引な勧誘はいたしませんので、まずはお気軽にご自身のケースでは費用がいくらになるのか、確かめてみませんか?
詳しいご相談方法については、こちらのページをご覧ください。お電話または問い合わせフォームより、ご連絡をお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
資格を持っていても専任技術者になれない?「常勤性」で止まった建設業許可の事例
資格を持っていても営業所技術者になれない?標準報酬月額9.8万円から判明した「常勤性」の問題
「資格を持っている親戚がいるので、この人を営業所技術者にして建設業許可を取りたいんです」
ある建設会社の社長から、新規の建設業許可申請についてご相談をいただいたときのことです。お話を伺うと、親族の中に申請予定業種に必要な資格を持つ方がおり、その方を営業所技術者等(旧・専任技術者)として申請したいとのことでした。
そこで、常勤性を確認するため、社会保険関係の資料を拝見しました。すると、標準報酬決定通知書に記載されたその方の標準報酬月額は「98千円」。
標準報酬月額98千円は、実際の月給が必ず98,000円という意味ではありません。しかし、通常のフルタイム勤務をしている従業員として見ると、かなり低い水準です。
「この方は、普段どのくらい会社に来ていますか?」
詳しく事情を伺ってみると、社長から返ってきたのは、
「資格を持っている親戚なので給与は払っていますが、実際にはたまに会社に来るくらいなんです」
というお話でした。
ここで問題となるのは、資格の有無ではなく「常勤性」です。営業所技術者等は、原則としてその営業所に常勤し、専らその職務に従事する必要があります。資格を持っていても、たまにしか出勤しない状態では、営業所技術者等として認めてもらうことは難しくなります。
この事例では、標準報酬月額「98千円」という一つの数字がきっかけとなり、営業所技術者として申請できる勤務実態なのかを改めて確認することになりました。標準報酬月額98千円という資料を見れば、「本当に営業所で常勤しているのか」「短時間勤務ではないのか」と確認すべき事情になります。そのため、「他に本業があるのではないか?」「名前を借りているだけ(名義貸し)ではないか?」といった疑念を持たれてしまうのです。
この記事では、なぜ給与額が低いと常勤性が問題になるのか、実際の相談事例を交えながら、その理由と具体的な解決策を専門家の視点から詳しく解説していきます。建設業許可の全体像については、建設業許可の要件で体系的に解説しています。
なぜ標準報酬月額が低いと「常勤性」を確認されるのか?
建設業許可の審査において、行政庁が専任技術者の給与額、特に社会保険の標準報酬月額に注目するのはなぜでしょうか。それは、標準報酬月額が「常勤性」、つまりその会社で恒常的に勤務しているという実態を客観的に示す、極めて重要な指標だと考えられているからです。
建設業法では、営業所技術者等を営業所ごとに専任で設置することが求められ、その営業所に常勤している必要があります。これは、見積、入札、請負契約締結等が各営業所で行われることを踏まえ、許可を受ける業種について専門的知識を有する者を営業所ごとに配置し、請負契約の適正な締結・履行を確保するための重要なルールです。
もし、専任技術者がごくたまにしか出勤せず、給与もお小遣い程度だとしたらどうでしょう。その人は本当に会社の技術的な責任を担っていると言えるでしょうか。行政庁は、このような「名義貸し」に近い状態を防ぐため、給与額と勤務実態の整合性を厳しく審査するのです。
社会保険加入だけでは不十分!標準報酬月額の意味
「社会保険にはちゃんと加入しているから大丈夫ですよね?」というお声もよく聞きます。しかし、社会保険に加入しているという事実だけで、営業所技術者等の常勤性まで当然に認められるわけではありません。
建設業許可では、社会保険の適用事業所について適切な加入が求められますが、営業所技術者等については、それとは別に、その営業所に常勤している実態を確認する必要があります。
その常勤性を確認する資料の一つが「標準報酬月額」です。
標準報酬月額とは、基本給や各種手当などを含む報酬月額を一定の等級に区分した、社会保険料を計算する基礎となる金額です。通常は毎年4月から6月までに支払われた報酬をもとに定時決定されます。
したがって、標準報酬月額が98千円だからといって、「実際の月給がちょうど98,000円」という意味ではありません。ただし、98千円の等級は報酬月額93,000円以上101,000円未満に対応しており、通常のフルタイム従業員として見ると、かなり低い水準です。
今回のケースでも、標準報酬月額が98千円だったことから、「本当にこの方は営業所で常勤しているのだろうか」「短時間勤務ではないのか」と勤務実態を詳しく確認するきっかけになりました。
例えば単純計算として、神奈川県で月170時間勤務すると仮定すれば、2026年9月時点の最低賃金1,225円でも、170時間分の賃金は約20万8千円となります。実際の最低賃金の判定では、所定労働時間や賃金の内訳をもとに個別に確認する必要がありますが、標準報酬月額98千円という数字は、通常のフルタイム勤務を想定した場合には大きな違和感があります。
社会保険労務士の視点から見ても、このような数字が確認できた場合には、標準報酬月額だけで結論を出すのではなく、実際の勤務時間、給与額、賃金台帳、勤怠記録などを確認し、勤務実態との整合性を確かめる必要があります。
出勤簿や賃金台帳との整合性が問われる
常勤性は標準報酬決定通知書など所定の確認資料で審査されますが、勤務実態に疑義がある場合には、賃金台帳や出勤簿など追加資料による確認を求められることがあります。そのため、社会保険の記録、給与、勤怠の内容が実態と整合していることが重要です。
例えば、以下のようなケースは虚偽申請を疑われる典型例です。
- 標準報酬月額は98,000円なのに、出勤簿上は毎日8時間、週5日勤務していることになっている。
- 賃金台帳の支給額と、社会保険料の計算基礎となる報酬額に大きな乖離がある。
これらの矛盾は、「書類上だけフルタイム勤務に見せかけているのではないか」という疑念に直結します。許可を取得するためには、社会保険の記録、給与の支払い記録、そして日々の勤怠記録という3つの情報が、「当社の営業所で常勤しており、その勤務実態に見合った給与が支払われている」という一貫して確認できる必要があります。適切な給与計算と勤怠管理は、許可申請の土台とも言えるでしょう。
また、言うまでもありませんが、営業所技術者等の兼務が問題となるケースため、その点も厳しく確認されます。
(参考:建設業法(昭和二十四年法律第百号))
【実例】資格を持つ親族を専任技術者にしようとした失敗談
抽象的な説明だけでは、実際のリスクを把握しにくい場合があります。ここで、私が実際に経験した相談事例をご紹介します。この話は、多くの経営者が陥りがちな「思い込み」の危うさを教えてくれます。
発覚のきっかけは「標準報酬決定通知書」の報酬月額
それは、ある建設会社の社長から新規の許可申請についてご相談いただいた時のことでした。一通りの資料を拝見する中で、私は一枚の書類に目を留めました。専任技術者候補となる方の「標準報酬決定通知書」です。
そこに記載されていた標準報酬月額は「98千円」でした。標準報酬月額は実際の給与額そのものではありませんが、98千円の等級は月々の報酬が概ね10万円前後であることを示します。
この数字を見て、私は勤務実態を詳しく確認する必要があると感じました。仮に月170時間程度のフルタイム勤務であれば、この水準は神奈川県の最低賃金から計算される賃金額を大きく下回るからです。
私は社長に、その方の勤務状況について詳しくお話を伺うことにしました。
「実は、資格を持っている親戚がいまして。普段は別の仕事をしているんですが、名前を借りる形で籍を置かせてもらっているんです。給与も、まあお礼程度ということでこの金額で…」
社長のお話は、私が懸念していた通りの内容でした。悪気はないのです。しかし、この「資格を持っているから大丈夫だろう」という安易な考えが、許可取得が困難になるところでした。

ヒアリングで判明した「たまに来るだけ」という勤務実態
さらにヒアリングを進めると、「会社にはたまに顔を出す程度」という、常勤とは到底言えない勤務実態が明らかになりました。社長は、社会保険に加入し、給与を支払っていれば問題ないと考えていらっしゃったのです。
私は、この状態が建設業法で固く禁じられている「名義貸し」と判断されかねない、非常に危険な状態であることを丁寧にご説明しました。専任技術者は、文字通りその営業所に「常時」いて「専ら」その業務に従事する人でなければなりません。たまにしか出勤しない勤務実態では、建設工事に関する技術的な管理責任を継続的に担っているとは説明しにくくなります。
このまま申請すれば、許可が下りない可能性が高く、事情によっては虚偽申請として問題視されるおそれもありました。表面的な書類だけでなく、その背景にある実態までしっかりと確認すること。それが私たち専門家の重要な役割なのです。
常勤性を満たすための2つの具体的な解決策
「では、うちはもう許可が取れないのでしょうか…」
事実をお伝えすると、社長は不安そうな表情を浮かべられました。しかし、問題点を整理したうえで、対応策を検討しました。私は、この状況を打開するための具体的な解決策を2つご提案しました。
選択肢1:常勤可能な別の技術者を専任にする
一つ目の方法は、問題となっている親族の方ではなく、社内にいる別の方や、新たに採用する方を専任技術者にするという選択肢です。
例えば、他に国家資格や実務経験の要件を満たす正社員の方がいれば、その方を専任技術者として申請します。この方法のメリットは、常勤性の要件について説明しやすくなり、申請上の不安要素を減らせることです。
一方で、デメリットとしては、社内に適任者がいない場合は新たに人材を採用する必要があり、採用コストや人件費が増加する可能性が挙げられます。今回のケースのように、親族の方の勤務形態をどうしても変えられない事情がある場合には、有効な選択肢となります。許可の維持には、役員や技術者の交代時に空白期間を作らないよう注意が必要です。
選択肢2:勤務実態と給与を常勤に見合う形へ変更する
二つ目の方法は、その親族の方自身の働き方と処遇を、常勤の実態に見合う形へ変更するという、より本質的な解決策です。

社長とご親族に事情を説明し、ご納得いただいた上で、私たちはこの選択肢を取りました。具体的には、以下のステップを踏みました。
- 勤務実態の変更:「たまに来るだけ」の状態から、営業所の営業時間内は常時勤務する、いわゆるフルタイム勤務(例:1日8時間、週40時間)へと勤務実態を改めていただきました。
- 給与額の変更:実際の所定労働時間に応じて最低賃金法を満たし、かつ勤務実態に見合った適正な給与水準に変更しました。
- 社会保険手続き:固定的賃金の変動後、随時改定の要件(継続3か月の報酬、支払基礎日数、2等級以上の差など)を満たすことを確認したうえで、社会保険労務士として年金事務所へ「月額変更届」を提出し、標準報酬月額を実態に合わせました。
重要なのは、申請の直前に給与額だけを形式的に変更するのではなく、勤務、給与、社会保険の届出という3つの実態をすべて整合させ、実際に「常勤している状態」を作ってから申請に臨むことです。この一連の手続きを正確に行うことで、私たちは無事に建設業許可を取得することができました。当事務所の社会保険労務士顧問サービスでは、こうした労務管理の適正化もサポートしています。
まとめ:許可申請前に技術者の給与と勤務実態の確認を
建設業許可を取得できるかどうかは、単に資格を持った人がいるかどうかだけでは決まりません。その人が「常勤の専任技術者」として、勤務実態、給与水準、社会保険の記録、そのすべてにおいて矛盾なく証明できるかが重要です。
特に、親族や高齢のOB社員に技術者をお願いしようとお考えの場合、申請準備を始める前に、必ず以下の点を確認してください。
- 標準報酬月額は、常勤の従業員として不自然なほど低くないか?
- 出勤簿やタイムカードで、恒常的な勤務実態を客観的に示せるか?
- 他に本業を持っていたり、他社の役員を兼任していたりしないか?
「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断が、後で申請手続き上の大きな支障となります。もし少しでも不安な点があれば、ぜひお早めに専門家にご相談ください。
当事務所は、行政書士(許可申請)、社会保険労務士(労務管理・社会保険)、司法書士(登記)の各分野に対応しています。許可申請のことから、それに伴う社会保険の手続き、役員変更の登記まで、ワンストップで貴社をサポートいたします。まずは、お気軽に無料相談をご利用ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
専任技術者の兼任は不可!転職時の登録抹消忘れトラブル事例
【トラブル事例】良かれと思った営業所技術者等(旧・専任技術者)の届出が行政からストップ!
事業拡大を目指す建設会社のB社は、経験豊富なAさんを迎え入れました。Aさんは以前、建設会社X社で専任技術者を務めていたベテランです。B社はAさんを新たに専任技術者として登録するため、早速、行政庁へ変更届を提出しました。
変更届はいったん収受されました。B社の社長も一安心。これで新しい体制で事業を加速できる、そう考えていました。
しかし、その数週間後、事態は急変します。行政庁の担当者から、一本の電話がかかってきたのです。
「B社さんですか?先日ご提出いただいたAさんの専任技術者登録の件ですが、Aさんはまだ前職のX社で専任技術者として登録が残っている状態です。このままでは二重登録になってしまうため、この状態ではB社の営業所技術者等として認めることができません。まずX社側の届出状況を整理してください。」
突然の連絡に、B社の社長は対応に戸惑いました。Aさんに確認すると、「X社はもう解散したと聞いているのですが…」とのこと。良かれと思って進めていた建設業許可の手続きが、思わぬ形で一時的に進められなくなったのです。
実は、このような「登録抹消忘れ」のトラブルは、決して珍しい話ではありません。幸い、このケースではX社の廃業届が未提出だったことが判明し、そちらの手続きを進めることでAさんの登録は無事に抹消され、B社での専任技術者登録を完了できました。しかし、一歩間違えれば、許可の維持に関わる重大な問題に発展しかねない状況でした。
なぜ、このような事態が起きてしまうのでしょうか。この記事では、その根本的な原因から具体的な対処法、そして未然に防ぐためのチェックポイントまで、専門家の視点から詳しく解説していきます。
なぜ専任技術者は2社で兼任できないのか?「常勤性」の原則を解説
今回のトラブルの根底にあるのは、建設業法が定める「常勤性の原則」という非常に重要なルールです。建設業許可を維持するためには、常勤役員等(経営業務管理責任者等)や営業所技術者等(旧・専任技術者)が、申請会社で常勤し、営業所技術者等については勤務を要する営業所で専らその職務に従事している必要があります。このテーマの全体像については、建設業許可の要件で体系的に解説しています。
なぜ法律は、ここまで厳格に「常勤」であることを求めるのでしょうか。それは、建設業許可が、国民の生活や安全に直結する重要なインフラを担う事業者に対して与えられる、社会的信用の証だからです。許可業者は、常に適正な経営と確かな技術力を保持し、責任ある施工体制を維持する義務があります。
そのためには、経営や技術の責任者が、片手間ではなく、その会社に腰を据えて日々の業務に専念していることが大前提となります。もし、一人の技術者が複数の会社を掛け持ちできてしまうと、責任の所在が曖昧になり、建設工事の品質や安全性の確保が難しくなる恐れがあるのです。「常勤性の原則」は、建設業許可制度の信頼性を支える重要なルールと言えるでしょう。神奈川県の手引きでも、他の建設業許可業者の常勤役員等、補佐者、営業所技術者等、令3条使用人と重複している場合や、他で常勤している場合は許可できないと明記されています。

「常勤」とは?具体的な判断基準
では、法律上の「常勤」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。これは単に「毎日会社に来ている」というだけでは不十分で、行政庁は以下の要素を総合的に見て判断します。
- 勤務場所と時間: 許可を受けようとする営業所の営業日・営業時間において、常時勤務していること。
- 勤務実態: 役員・従業員などの立場に応じて、申請会社で継続して勤務している実態が確認できること。
- 社会保険等の加入状況: 適用事業所に該当する場合は、勤務先で健康保険や厚生年金保険、雇用保険に適切に加入していること。適用除外に該当する場合もあります。
- 他の職務との関係: 他の法人で常勤の役員であったり、個人事業主であったりしないこと。
特に注意が必要なのは、他社での役職や事業です。たとえ名目上だけであっても、他社の代表取締役などに就任している場合は、「その会社での職務に専念している」と見なされ、常勤性が否定される可能性が非常に高くなります。
退職しても登録は自動で消えない!行政手続きの仕組み
多くの経営者が誤解しがちな点ですが、従業員が会社を退職したからといって、行政庁に登録されている専任技術者としての情報が自動的に消えることはありません。
建設業許可に関する情報は、すべて許可業者からの「届出」に基づいて管理・更新されています。つまり、専任技術者が退職した場合、会社側が「この人が辞めたので、登録から外してください(または後任のこの人に交代します)」という変更届を提出しない限り、データ上はその人が在籍し続けていることになってしまうのです。
冒頭の事例でB社が直面した問題の核心は、まさにこの点にあります。X社がAさんの退職(あるいは会社の解散)に伴う手続きを行っていなかったため、Aさんの登録情報が行政庁の記録上に残っていた、というわけです。
専任技術者の登録が残っていた場合の具体的な対処法
もし採用した人材に前職の登録が残っていることが判明した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。慌てずに、以下のステップで進めていきましょう。
ステップ1:前職の登録状況を確認する
まずは、情報の正確性を担保するために、管轄の行政庁(都道府県の建設業課など)に問い合わせ、登録状況を正式に確認することが第一歩です。「〇〇という人物が、以前△△という会社で専任技術者として登録されていたか、またその登録が現在も有効か確認したい」といった形で問い合わせます。
自治体によっては電話で回答してくれる場合もありますが、個人情報保護の観点から、書面での閲覧申請が必要になることもあります。不確かな情報で動く前に、まずは公的な記録を確認し、現状を正確に把握することが重要です。
ステップ2:前職の会社に「変更届」の提出を依頼する
前職の会社が現在も営業している場合は、その会社に連絡を取り、専任技術者の削除または交代の「変更届」を提出してもらうよう依頼するのが最も基本的な解決策です。
その際、ただ「手続きをしてください」と伝えるだけでなく、採用したご本人から事情を説明してもらのがスムーズでしょう。会社としては、退職した元従業員のために手間をかけることになるため、丁寧なコミュニケーションが求められます。場合によっては、変更届の作成に必要な情報をこちらで準備するなど、協力的な姿勢を示すことも円満な解決につながります。神奈川県など一部の自治体では、届出の郵送が可能なケースもありますので、前職の会社の負担を軽減する方法を一緒に考えてあげるのも一つの手です。
【特殊ケース】前職の会社が解散・廃業している場合
冒頭のB社の事例のように、前職の会社がすでに存在しない場合は話が少し複雑になります。この場合、確認すべきは「変更届」ではなく、「廃業届」が提出されているかどうかです。
会社が法的に事業を辞めた場合、建設業許可についても廃業届を提出する義務があります。X社が建設業を全部廃業するのであれば廃業届を提出し、許可業者としての登録を整理する必要があります。一部業種のみの廃業であれば、営業所技術者等の変更届等も必要になります。
もし、会社は解散しているのに廃業届が未提出という状況であれば、清算人など、法令上届出を行える立場にある人に連絡し、廃業届を提出してもらう必要があります。しかし、連絡先が不明であったり、協力を得られなかったりすることも少なくありません。このような困難なケースでは、行政庁と相談しながら対応を進める必要があり、必要に応じて行政書士へ相談することも有用です。
トラブルを未然に防ぐ!採用時に確認すべきチェックポイント
一度トラブルが起きてしまうと、解決までに時間も労力もかかります。最も賢明なのは、こうした問題を未然に防ぐことです。採用活動の段階で、以下のポイントをチェックする習慣をつけましょう。

面接時:建設業許可に関する経歴のヒアリング
専任技術者や経営管理責任者としての採用を検討している候補者には、面接の段階で建設業許可に関する経歴を具体的にヒアリングすることが重要です。以下の質問は必ず確認するようにしましょう。
- 「過去に、他の会社で専任技術者や経営管理責任者として登録されていた期間はありますか?」
- 「もし登録されていた場合、その会社を退職される際に、ご自身の登録を抹消する手続き(変更届の提出)が行われたか把握していますか?」
候補者本人が手続きの詳細まで把握していないケースも多いですが、この質問をすることで、会社として「常勤性」や「二重登録」の問題を重要視しているという姿勢を示すことができます。また、実務経験の証明など、他の要件を確認する上でも重要な情報となります。
内定後:前職での登録抹消手続きの確認
面接で過去の登録歴が判明した場合は、内定を出した後、入社日までの間に具体的なアクションを取ってもらうことが肝心です。
候補者本人から前職の会社に連絡してもらい、自身の登録が現在どうなっているかを確認し、もし残っているのであれば、速やかに変更届を提出してもらうよう依頼してもらいましょう。
そして、可能であれば「変更届の控え」など、手続きが完了したことを証明する書類のコピーを提出してもらうようお願いするのが最も確実です。口約束だけでなく、書面で確認することで、入社後の手続きをスムーズに進めることができます。
【よくある質問】他社の代表取締役でも専任技術者になれる?
専任技術者の兼任問題に関連して、非常によくいただく質問の一つが「自社の役員が、別の会社で代表取締役もやっているんだけど、専任技術者になれる?」というものです。
原則は不可!常勤性の証明が極めて困難な理由
結論から言うと、他社の代表取締役を兼務している方が専任技術者になるのは、原則として認められません。その理由は、やはり「常勤性の原則」にあります。
代表取締役は、その会社を代表して業務を執行する法律上の重い責任を負っています。社会通念上、代表取締役は「その会社に常勤している」と見なされるのが一般的です。そのため、別の会社で「専らその職務に従事する」専任技術者になることは、論理的に両立が難しいと判断されてしまうのです。
行政庁によっては、非常勤であることの証明書などを提出すれば認められる可能性もゼロではありません。他社に代表取締役等が複数おり、その会社では非常勤であることが客観的に確認できる場合など、例外的に認められるケースがあります。神奈川県の手引きでも、他社の代表取締役等である場合の取扱いが明示されています。
【事例】複数社の兼任が認められないケース
以前、当事務所にご相談いただいた事例で、この原則を痛感する出来事がありました。
すでに建設業許可をお持ちの小規模なC社の社長から、「事業ごとに会社を分けたくて、別会社を設立してそちらでも許可を取りたいんだよね」というご相談でした。私はすぐにこうお伝えしました。
「社長、新しい会社でも許可を取るとなると、そちらにも専任技術者と経営業務の管理責任者が、それぞれもう一人ずつ必要になりますが、ご準備は大丈夫ですか?」
すると、社長は少し驚いた様子でこう返されました。
「え、そうなの?2社とも事務所は同じ場所にするつもりなんだけど、それでもダメなのかい?」
「はい、たとえ場所が同じでも、法律上は別々の法人格(会社)になります。ですから、それぞれの会社に、専任の要件を満たす方が必要になるんです。社長がお一人で両社の責任者を兼ねることはできません」
この説明に、社長は深く納得されたようでした。結局、新たな人材を確保するハードルが高いことから、新会社の設立と許可取得は断念されることになりました。この事例が示すように、営業所技術者等は、原則として申請会社に常勤し、他社で常勤することはできません。たとえ経営者が同一人物であっても、法人格が異なれば厳格に適用されます。ただし、同じ会社内で複数の業種の専任技術者を兼任することは、一定の要件を満たせば可能です。
まとめ:専任技術者の採用は登録状況の確認が不可欠
今回は、専任技術者の転職・採用時に起こりがちな「登録抹消忘れ」トラブルについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 兼任は不可: 専任技術者は「常勤性の原則」により、複数の会社で同時に登録することはできません。
- 自動抹消はされない: 従業員が退職しても、会社が変更届や廃業届を提出しない限り、行政庁の登録は残ったままになります。
- 事前確認が重要: トラブルを避けるため、採用活動の段階で候補者の過去の登録状況を確認し、必要であれば入社前に抹消手続きを促すことが不可欠です。
建設業許可の手続きは、単純な書類作成だけでなく、こうした目に見えないリスクが潜んでいます。手続きの遅れは、事業計画そのものに影響を与えかねません。「うちの会社は大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じたら、行政書士に相談することで、必要な手続きや確認事項を整理しやすくなります。当事務所では、無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
「10年分の注文書を集めるの?」社員の学歴を調べたら実務経験3年で済んだ建設業許可の事例
「10年分の注文書、本当に必要?」ある空調工事会社の成功事例
「500万円以上の工事を請け負うには、建設業許可が必要ですよ」
このルールはご存知でも、許可取得の具体的なステップで頭を抱える経営者様は少なくありません。
特に、社内に国家資格を持つ従業員がいない場合、営業所技術者等(旧・専任技術者)の要件を満たすためには、原則として10年以上の実務経験を証明する必要があります。これは、10年分の注文書や請求書、契約書などを探し出し、整理するという、相当な時間と手間がかかる作業です。
先日、ご相談にいらした空調工事会社A社の社長も、まさに同じ課題を抱えていました。
「管工事の許可を取りたいのですが、資格者が社内にいなくて…。10年分の書類を集めるしかないと覚悟はしているんですが、正直、途方に暮れています」
必要書類の多さに負担を感じている社長に、私は別の確認方法を提案しました。
「社長、工業系の高校や大学、専門学校を卒業された従業員さんはいらっしゃいませんか?」
すぐには思い当たらなかった社長でしたが、会社に戻って従業員名簿を確認してくださったところ、一人の従業員Bさんが土木工学科を卒業していることが判明したのです。
結果、どうなったか。
A社は、たった3年分の実務経験を証明するだけで、無事に管工事の建設業許可を取得できました。10年分の書類集めという重労働を回避し、スムーズに申請準備を進めることができたのです。
「まさか社員の学歴でこんなに楽になるとは…」。社長の安堵した表情は、今でも忘れられません。この記事を読んでいるあなたも、A社と同じように、別の確認方法が見つかるかもしれません。これから、そのための具体的な方法を詳しく解説していきます。諦める前に、ぜひ一度、従業員の方の経歴を確認してみてください。
より詳しい実務経験の証明方法については、「営業所技術者等(旧・専任技術者)の実務経験証明に必要な書類」のページで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
実務経験期間を短縮できる「指定学科」とは?基本ルールを解説
なぜ、A社は10年ではなく3年の実務経験で許可が取れたのでしょうか。その鍵が「指定学科」制度です。
これは、建設業許可の要件で求められる営業所技術者等(旧・専任技術者)について、国が定めた特定の学科を卒業していれば、建設工事に関する一定の知識があると見なされ、実務経験の証明期間を大幅に短縮できるというものです。
10年分の書類集めに比べれば、従業員の卒業証明書を取り寄せる手間は、はるかに少ないはずです。まずは、この基本ルールをしっかりと押さえておきましょう。

大学・高専卒業なら3年、高校卒業なら5年に短縮
学歴によって、短縮される期間は異なります。具体的には、以下の表のように定められています。
| 学歴 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学・短期大学・高等専門学校の指定学科を卒業 | 3年以上 |
| 高等学校の指定学科を卒業 | 5年以上 |
| 専門学校の指定学科を卒業(専門士・高度専門士) | 3年以上 |
| 専門学校の指定学科を卒業(専門士・高度専門士に該当しない場合) | 5年以上 |
| 上記以外の場合 | 10年以上 |
このように、大学や高専で指定学科を卒業していれば3年、高校であれば5年の実務経験で済むことになります。これは、取得したい建設工事の種類に対応した専門知識を学校で学んでいることが評価されるためです。
対象は「学校教育法」に定められた学校のみ
ここで非常に重要な注意点があります。それは、「建設系の学校なら何でも良い」というわけではない、という点です。
この制度の対象となるのは、建設業法上の要件に該当する学校区分に限られます。具体的には、学校教育法による高等学校・中等教育学校、大学・高等専門学校、専修学校の専門課程(いわゆる専門学校)などが該当します。
一方で、職業訓練校や各種学校は、学校教育法上の指定学科卒業ルートにそのまま当てはまらない場合があります。また、海外の大学についても国内大学と同じ扱いになるとは限りませんが、学歴や履修内容により国土交通大臣の認定を受けられる場合があります。特に「専門学校」については注意が必要です。学校教育法上の「専修学校の専門課程」の指定学科を卒業していることが前提となり、専門士または高度専門士の称号がある場合は3年以上、称号がない場合は5年以上の実務経験が必要です。
「うちの社員が卒業した学校は対象になるのだろうか?」と少しでも疑問に思ったら、自己判断で進める前に、卒業証明書などを取り寄せて確認することが大切です。
要注意!学科名だけで判断してはいけない理由
「よし、うちの社員は工業高校卒だ!これで5年に短縮できるぞ!」
そう確信するのは、まだ少し早いかもしれません。実は、指定学科の判断は、皆さんが思っている以上に複雑で、専門的な知識が求められます。ここで多くの経営者様がつまずいてしまうのです。
行政が発行する手引きには、指定学科の例が記載されていますが、その学科名と卒業証明書の学科名が完全に一致していなくても認められるケースもあれば、逆に、似たような名前でも認められないケースも存在します。この微妙な判断が、申請の成否を分けることになるのです。
手引きの学科名と完全一致しなくても認められるケース
まず、認められる可能性があるケースを確認します。卒業証明書に書かれた学科名が、手引きの例と一言一句同じでなくても、諦める必要はありません。
例えば、学科名が完全一致しなくても、指定学科として整理されている学科名との関係や、学校・学科の認定状況によって認められる場合があります。また、時代の変化とともに学科名も多様化しています。「土木環境科」や「建築デザイン科」のように、「環境」や「デザイン」といった現代的な名称が含まれている学科でも、その中身が実質的に「土木工学」や「建築学」に関するものであれば、指定学科として認められる可能性は十分にあります。
曖昧な記載の工事経験を証明するのと同じように、学科名もその実態が重要になるのです。
判断の決め手は「履修科目証明書」にあり
では、学科名だけでは判断が難しい場合、行政庁の担当者は何を基準に判断するのでしょうか。
その判断材料となるのが、「履修科目証明書」または「成績証明書」です。
これは、その学生が在学中にどのような専門科目を学び、単位を取得したかを詳細に記録した書類です。担当者は、卒業証明書の学科名と併せてこの証明書を確認し、「土木工学概論」や「建築構造力学」といった具体的な科目名から、申請する工事の種類と関連性があるかを判断します。判断に迷う場合は、事前に申請先の行政庁に照会するとよいでしょう。

冒頭のA社の事例では、Bさんの学科名は「土木工学科」でした。管工事業の指定学科には土木工学が含まれているため、卒業証明書や必要に応じた履修科目証明書を確認することで、指定学科に該当する可能性を検討できました。
単に「請負契約」で働いていただけでは実務経験として認められないケースがあるのと同様に、学歴の証明も表面的な名称だけでは不十分なのです。行政庁ごとのローカルルールも存在するため、この判断は非常に専門的です。
卒業校に証明書を請求する際は、「建設業許可申請に利用するため、履修した専門科目が分かる証明書を発行してください」と明確に伝えることをお勧めします。
自分で確認するのは難しい?専門家に相談する3つのメリット
ここまでお読みいただき、「指定学科」制度の可能性と、同時にその判断の難しさもお分かりいただけたのではないでしょうか。
- うちの社員の学歴は、本当に指定学科に該当するのか?
- 卒業校への証明書の請求や、行政庁への事前確認はどう進めればいい?
- もし該当しなかった場合、やはり10年分の書類を集めるしかないのか?
こうした不安や疑問を抱えながら、不確かな情報をもとに手探りで進めるのは、時間的にも精神的にも大きな負担となります。申請準備のやり直しや、予定していた許可取得時期が遅れる可能性があります。
そんな時こそ、私たち専門家にご相談ください。司法書士・行政書士・社会保険労務士が在籍する当事務所にご依頼いただくことで、お客様には3つの大きなメリットがあります。
- 該当性の丁寧な調査
これまでの経験と専門知識に基づき、お客様の従業員の方の学歴が指定学科に該当するかを確認します。履修科目証明書を精査し、行政庁の見解も踏まえた上で、申請に適した方法をご提案します。 - 面倒な書類取得と作成の代行
卒業校への証明書請求のサポートから、複雑な申請書類一式の作成まで、面倒な手続きをすべて代行します。お客様は本業に集中していただけます。 - 行政との事前協議によるスムーズな申請
判断が分かれるような微妙なケースでは、正式な申請前に当事務所が行政庁の担当者と事前協議を行います。論点を整理し、認められる可能性を高めることで、円滑な許可申請につながるよう準備します。
10年分の実務経験証明が必要と思われるケースでも、専門家が要件を確認することで、指定学科や資格など別の方法を検討できる場合があります。当事務所の相談から許可申請までの流れは明確です。まずは「もしかしたらうちも…」と思われたその直感を、ぜひお聞かせください。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
建設業許可通知書がない!紛失時の対応と再発行の代替策
「許可通知書がない!」元請からの提出依頼に焦る前に
「元請会社から、急に建設業許可通知書の写しを提出するよう言われたのですが、事務所のどこを探しても見つからないんです…」
先日、ある建設会社の社長から、このような切羽詰まったご相談をいただきました。数年前に許可を取得し、事務所の移転もあったため、大切な書類であることは分かっていても、いざという時に見当たらなくなってしまったとのこと。「通知書がないと、まさか許可も無効になってしまうのでしょうか?」と、その表情は不安でいっぱいでした。
もし、あなたも今、同じような状況でこの記事にたどり着いたのであれば、まずはお伝えしたいことがあります。どうぞ、ご安心ください。許可通知書を紛失したからといって、取得した建設業許可がすぐに失効することはありません。
この記事では、建設業許可にまつわる手続きの専門家である行政書士の視点から、以下の点を分かりやすく解説していきます。
- そもそも建設業許可通知書とはどんな書類なのか
- 紛失してしまった場合の、具体的な対処法
- 二度と慌てないための、賢い保管・管理のコツ
この記事を最後までお読みいただければ、通知書が手元にない場合の対応方法や、今後の書類管理で確認すべきポイントを把握しやすくなります。まずは落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。
そもそも建設業許可通知書とは?役割と重要性を解説
「建設業許可通知書」と一言で言っても、普段あまり意識することがないため、どんな書類だったか正確に思い出せない方もいらっしゃるかもしれませんね。まずは、この書類が持つ本来の役割と重要性について、基本からおさらいしておきましょう。
許可が下りた証明となる「一度きり」の公文書
建設業許可通知書とは、建設業許可の申請が行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)によって正式に認められた際に、その証明として一度だけ発行される公的な文書です。許可処分の内容を申請者に知らせる通知文書と捉えると分かりやすいでしょう。
この通知書は、新規で許可を取得した時だけでなく、5年ごとの許可更新や、新たな業種を追加した際にも発行されます。通常、許可の処分が下りてから数日〜数週間で、申請先の行政庁から書留郵便などで会社宛に送られてきます。
許可処分を受けたことを示す重要な書類であり、許可番号や許可年月日を確認する際にも使用されます。

許可証明書や許可票(金看板)との違いは?
建設業許可に関連する書類や物品には、通知書とよく似た名前のものがあり、混同されがちです。ここで、それぞれの違いを明確にしておきましょう。
| 種類 | 役割と目的 | 発行のタイミング |
|---|---|---|
| 建設業許可通知書 | 許可が下りた事実を一度だけ通知する公文書(合格通知) | 新規・更新・業種追加などの許可処分時 |
| 建設業許可証明書 | 「現在」許可が有効であることを対外的に証明する書類 | 必要に応じて、都度申請して取得 |
| 建設業許可票(金看板) | 許可業者であることを公に示すため、営業所や、発注者から直接請け負った工事現場に掲示する看板 | 許可取得後に、業者自身が作成・設置 |
このように、許可通知書は「過去の許可取得の事実」を知らせるものであり、許可証明書は「現在の許可の有効性」を証明するもの、そして許可票は「常時掲示する看板」と、それぞれ目的が全く異なります。特に「許可証明書」は、この後の紛失時の対応で重要な役割を果たしますので、覚えておいてください。
なぜ提出を求められる?通知書がないと困る3つの場面
許可通知書を紛失したとしても、許可そのものがなくなるわけではありません。では、なぜ元請会社などはこの書類の提出を求めるのでしょうか。実務上、通知書がないと具体的にどのような場面で困るのかを知ることで、その重要性が見えてきます。
1. 元請・取引先からの信用確認
最も多いのが、元請会社や新たな取引先から、下請業者として契約する際に提出を求められるケースです。これは、発注者側がコンプライアンス(法令遵守)を徹底し、建設業許可が必要な工事を無許可業者に発注してしまうリスクを避けるために行われます。
適切な建設業許可を持つ業者であることは、会社の技術力や経営基盤の信頼性を示す第一歩です。通知書をすぐに提示できないと、信用力に疑問符がつき、大切な契約のチャンスを逃してしまう可能性もゼロではありません。
2. 金融機関の融資審査
事業資金の融資を金融機関に申し込む際にも、事業の適法性や安定性を証明する資料の一つとして、許可通知書の写しの提出を求められることがあります。特に、建設業界向けの融資制度を利用する場合には、許可の有無が審査の前提条件となることも少なくありません。
円滑な資金調達は、事業を継続・発展させる上で不可欠です。いざという時に資金繰りで困らないためにも、許可を証明する書類はいつでも提示できるようにしておく必要があります。
3. 経営事項審査(経審)や各種手続き
公共工事の入札に参加するために受ける経営事項審査(経審)の申請や、その他の許認可手続きにおいても、建設業許可の証明として通知書の写しが必要になる場合があります。
また、少し特殊なケースですが、過去に自社に在籍していた役員や従業員が、その経験を証明して別の会社で許可を取得しようとする際に、証明資料として過去の通知書の控えが必要になることもあります。社内の重要書類として、適切に管理しておくことが求められるのです。

建設業許可通知書を紛失した場合の対処法
さて、ここからが本題です。実際に許可通知書を紛失してしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。焦る気持ちを抑えて、正しい解決策を確認しましょう。
結論:許可通知書の再発行は原則不可
まず、最も重要な結論からお伝えします。建設業許可通知書は、原則として再発行されません。
これは、通知書が「許可が下りた」という一度きりの事実を通知するための書類だからです。賞状や合格通知をなくしても再発行してもらえないのと同じ理屈で、ほとんどの行政庁で同様の扱いとなっています。
「再発行できない」と聞くと不安になるかもしれませんが、繰り返しになりますが、通知書をなくしても許可の効力に影響はありません。再発行を求めて行政庁に何度も問い合わせて時間を浪費する、ということのないようにしましょう。
代替策:建設業許可証明書を取得する
では、どうすればよいのか。代表的な対応策は、許可行政庁が発行する「建設業許可証明書」または所定の確認書類を取得することです。
先ほども触れましたが、この証明書は「現在、有効な建設業許可を保有していること」を公的に証明してくれる書類です。元請会社や金融機関などから通知書の提出を求められた場合でも、建設業許可証明書を提出することで、現在有効な建設業許可を受けていることを示せる場合があります(提出先が通知書そのものを指定している場合は、代替書類で足りるか事前に確認しましょう)。
証明書を取得するための手続きの概要は以下の通りです。
- 申請先:許可を受けた行政庁(都道府県の担当窓口など)
- 必要なもの:証明書交付申請書、手数料(数百円程度。神奈川県では、建設業許可証明書の交付手数料は1通350円)など
- 発行までの期間:即日〜数日程度が一般的ですが、窓口の混雑状況にもよります
もし、どの行政庁に建設業許可申請をしたか忘れてしまった、あるいは自社の許可情報がどうなっているか確認したい場合は、国土交通省の検索システムで調べることも可能です。
参照:国土交通省の建設業許可情報の検索システム
急な提出依頼で慌てないためにも、この「建設業許可証明書」という代替手段があることを、ぜひ覚えておいてください。
許可通知書の紛失を防ぐための保管・管理方法
建設業許可証明書で当面の提出依頼に対応できたとしても、同じ状況を繰り返さないための対策が重要です。専門家として、将来の紛失リスクを減らすための具体的な保管・管理方法を2つご提案します。
原本は「許可関係ファイル」で一括管理
まずは基本ですが、物理的な書類の管理方法です。許可通知書の原本を受け取ったら、バラバラに保管するのではなく、建設業許可に関する書類をまとめた専用のファイルを作り、そこで一括管理することをおすすめします。
例えば、以下のような書類を一緒にファイリングしておくと良いでしょう。
- 許可申請書の副本(控え)
- 毎年の決算変更届の控え
- 役員変更など、各種変更届の控え
ファイルには「建設業許可関係」と大きくラベリングし、誰が見てもすぐに分かるようにしておくことが大切です。こうすることで、担当者が変わってもスムーズな引き継ぎが可能になり、書類の散逸を防ぐことができます。
PDF化してデータでもバックアップを
原本の管理と合わせて、ぜひ実践していただきたいのがデジタルデータでのバックアップです。物理的な紛失や火災・水害などの災害リスクに備え、許可通知書を受け取ったらすぐにスキャナで読み取り、PDFデータとして保存しておきましょう。
データは、社内の共有サーバーやクラウドストレージなどに保管しておくと、いつでもどこでも確認できて便利です。ファイル名も「建設業許可通知書_R06更新」のように、日付や内容が分かるようにしておくと、後から探す際に非常に効率的です。
近年では、JCIPを通じた電子申請も可能になり、通知書が電子データで交付されるケースも増えてきました。こうした流れに対応するためにも、書類のデジタル管理はこれからのスタンダードと言えるでしょう。急な提出依頼にも、メールでPDFを送るだけで迅速に対応できるという大きなメリットもあります。
まとめ:許可通知書は会社の信頼を示す重要書類です
今回は、建設業許可通知書の紛失というトラブルへの対処法について解説しました。最後に、重要なポイントをもう一度振り返っておきましょう。
- 許可通知書は再発行できない重要書類:許可取得の事実を証明する一度きりの公文書です。
- 紛失したら「建設業許可証明書」を取得:焦らず、代替書類である証明書を申請すれば対外的な証明は可能です。
- 今後は「原本+データ」で賢く管理:専用ファイルでの保管とPDFでのバックアップで、将来のリスクに備えましょう。
建設業許可通知書は、許可要件を満たして許可処分を受けたことを示す重要書類であり、取引先等に許可の事実を説明する際の確認資料になります。
建設業許可に関する手続きは、更新や変更届など多岐にわたり、日々の業務の中で管理していくのは大変な面もあるかと存じます。もし、証明書の取得方法が分からない、あるいは許可の管理全般に不安があるといった場合は、私たち行政書士のような専門家にご相談いただくのも一つの有効な手段です。煩雑な手続きは専門家に任せ、安心して事業に専念できる体制を整えるお手伝いができれば幸いです。
建設業許可に関する相談を検討している場合は、相談前に準備する資料もご確認ください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
とび・土工だけではもったいない!2級土木施工管理技士で8業種を同時取得した事例
2級土木施工管理技士、とび・土工の許可だけで満足ですか?
「うちの会社には2級土木施工管理技士がいるから、まず『とび・土工・コンクリート工事』の許可を取ろう」
今まさに、このように考えて建設業許可の準備を進めていらっしゃらないでしょうか。もちろん、事業に直結する許可を取得することは非常に重要です。しかし、その資格で要件を満たせる業種を一つだけに限定して申請すると、将来必要になる業種を後から追加する手間や費用が発生する可能性があります。
多くの経営者様が、目の前の「特定の業種許可」という課題に集中するあまり、その資格が持つ本当の価値、つまり取得可能な他の業種について見落としてしまいがちです。
実は、2級土木施工管理技士の資格は、「とび・土工・コンクリート工事」以外にも複数の業種で専任技術者の要件を満たせる場合があります。そして何より重要なのは、最初の新規申請のタイミングであれば、複数の業種を同時に申請しても、行政に支払う手数料は1業種の場合と変わらないケースがほとんどだという事実です。
この記事では、その「もったいない」状況を回避し、将来的な追加費用や手続負担を抑え、事業展開の選択肢を広げるための具体的な方法を、実際の事例を交えながら解説します。建築一式工事以外で税込500万円以上の工事を請け負う場合など、建設業許可が必要となる場面で知っておくべき知識を解説します。
【事例】とび・土工の相談が、追加費用なしで8業種同時取得につながった話
先日、川崎市で事業を営むA社の社長から、こんなご相談をいただきました。
「とび・土工工事業の許可を、なるべく早く取得したいんです」
お話を伺うと、社内には2級土木施工管理技士の資格を持つ従業員の方がいらっしゃるとのこと。これは心強いお話です。早速、その方の資格証を拝見させていただきました。記載されていた種別は「土木」。この資格があれば、A社がご希望の「とび・土工・コンクリート工事」の専任技術者になるための要件は、問題なくクリアできます。
しかし、私の仕事は、ただ言われた通りの書類を作ることではありません。お客様の未来の事業展開まで見据え、その可能性を最大限に引き出すご提案をすることです。私はA社の社長に、こう問いかけました。
「社長、この資格で、とび・土工以外にも追加で申請できる業種があります。解体工事業については、合格年度等によって登録解体工事講習の修了または解体工事に関する実務経験が必要になる場合がありますが、要件を満たせば合計8業種を同時に申請できます。」
社長は、本当に驚かれた様子でした。「え、本当ですか?」と。
私は、その資格が持つポテンシャルを丁寧にご説明しました。2級土木施工管理技士(土木)の資格は、とび・土工・コンクリート工事のほかに、土木一式工事、石工事、鋼構造物工事、舗装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、そして解体工事業という、合計8つの業種で営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。ただし、解体工事業については、合格年度等によって登録解体工事講習の修了または解体工事に関する実務経験が必要になる場合があります。
そして、最も重要なポイントをお伝えしました。
「新規で許可を申請する場合、1業種でもこの8業種すべてでも、神奈川県に支払う審査手数料は9万円で変わりません。もちろん、当事務所の報酬も8倍になるわけではありません。もし将来、他の業種が必要になってから追加しようとすると、その都度、県の審査手数料5万円と申請の手間がかかってしまいますよ」
このご提案に、社長は即決されました。「ぜひ、全部お願いします!」と。

結果として、A社は当初の目的だった「とび・土工・コンクリート工事」だけでなく、将来の事業拡大に活用できる合計8業種の許可を、追加の審査手数料なしで一度に取得されました。これは、お客様の状況を深くヒアリングし、資格の価値を最大限に引き出す視点があったからこそ実現できた事例です。
2級土木(種別:土木)で同時取得できる8業種の一覧と工事内容
A社の事例でご紹介したように、2級土木施工管理技士の資格者証の種別が「土木」の場合、一般建設業許可において以下の8業種の専任技術者になることができます。建設業許可の29業種ありますが、この資格一つでこれだけの範囲をカバーできるのは大きな強みです。
具体的にどのような工事がそれぞれの業種に含まれるのか、将来の事業展開をイメージしながら確認してみましょう。
| 業種名 | 工事内容の例 |
|---|---|
| 土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(例:道路工事、河川工事、橋梁工事など) |
| とび・土工・コンクリート工事 | 足場の組立て、掘削、コンクリート打設、基礎工事、くい打ちなど |
| 石工事 | 石材の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事(例:石積み、コンクリートブロック積みなど) |
| 鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事(例:鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事など) |
| 舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
| しゅんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 |
| 水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事、又は公共下水道の処理設備を設置する工事 |
| 解体工事業 | 工作物解体工事 |
これらの業種は、一見すると無関係に思えるかもしれません。しかし、例えば「とび・土工」の現場で基礎工事を行っていれば、将来的に元請けとして「土木一式」の工事を受注する道が開ける可能性があります。また、道路工事に関連して「舗装工事」や「水道施設工事」のニーズが生まれることも十分に考えられます。
「今は関係ない」と思っていても、数年後には主要な事業の一つになっている可能性があります。その時に慌てて業種追加をするのではなく、可能性のある業種をあらかじめ取得しておくことこそ、ビジネスチャンスを逃さないための賢明な経営判断と言えるでしょう。
なぜ同時申請は費用面で有利なのか?費用と手間を比較
「将来必要になったときに追加すれば良いのでは?」という疑問も、もっともです。しかし、そこには明確なコストの差が生まれます。「費用」と「手間」という2つの観点から、なぜ新規申請時にまとめて業種を取得すべきなのかを具体的に見ていきましょう。当事務所の料金体系と合わせてご検討いただくことで、より具体的なイメージが掴めるはずです。

新規申請なら同じ許可区分で複数業種を同時申請しても手数料は9万円
建設業許可を初めて取得する「新規申請」の場合、知事許可であれば、都道府県に支払う法定手数料は9万円です。
そして、ここが重要なポイントですが、この手数料は申請する業種が1つであっても、今回ご紹介した8業種をまとめて申請しても、金額は一切変わりません。
つまり、取れる業種をまとめて申請した方が、1業種あたりの法定手数料負担は小さくなります。同じ9万円を支払うのであれば、将来の可能性まで含めて最大限の業種を取得しておくことが、いかに経済合理的であるかお分かりいただけると思います。
より詳しい区分については、知事許可と大臣許可の違いをご覧ください。
後からの「業種追加」は1回5万円と大きな手間がかかる
一方、「とりあえず、とび・土工だけでいいや」と1業種だけで許可を取得したとします。その数年後、事業が拡大し、「やはり舗装工事の許可も必要だ」という状況になったらどうなるでしょうか。
この場合、「業種追加」という手続きが必要になり、1回の申請ごとに5万円の法定手数料がかかります。
もし、2級土木施工管理技士(土木)で取得できたはずの残り7業種を、将来的に1業種ずつ7回に分けて追加していくとすれば、
5万円 × 7回 = 35万円
もの追加手数料が発生してしまう計算になります。これは非常にもったいない出費です。
さらに、コストは手数料だけではありません。その都度、申請書類を作成し、役所の窓口へ提出するという手間と時間がかかります。もし専門家に依頼すれば、その分の報酬も申請のたびに必要です。業種追加は、目先の判断が将来的な大きなコスト増につながる典型的な例と言えるでしょう。
注意!専任技術者になるためには「常勤性」が必要
ここまで、2級土木施工管理技士の資格で多くの業種が取得できるメリットをお伝えしてきましたが、一つ重要な注意点があります。それは、専任技術者になるための「常勤性」という要件です。
単に資格を持っているだけでは不十分で、その技術者が許可を受けようとする営業所に常時勤務していることが必要条件となります。いわゆる「名義貸し」が固く禁じられているのはこのためです。

常勤性は、申請先自治体の手引きに基づき、健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写しなど、所定の確認資料で証明します。そのため、専任技術者になる方については、社会保険の加入状況や雇用関係を確認できる資料を、申請先自治体の手引きに沿って準備する必要があります。
あなたの会社の可能性を最大化するために、今すぐ専門家へ
この記事を通じて、「欲しい業種」だけを見るのではなく、「持っている資格で取得できる業種は何か?」という視点を持つことの重要性をご理解いただけたのではないでしょうか。
新規申請というタイミングは、将来の事業展開の可能性を、最小限のコストで最大限に広げる絶好の機会です。このタイミングで取得可能な業種を確認しておくことが重要です。
「うちの技術者が持つ他の資格では、他にどんな業種が取れるんだろう?」
「このまま1業種だけで申請して、本当に損はないだろうか?」
もし少しでもそう感じられたなら、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。私たちの役割は、ただ言われた通りの申請書を作成することではありません。お客様の会社の状況を丁寧にヒアリングし、そのポテンシャルを最大限に引き出すための最適な許可取得プランをご提案することです。
御社に在籍されている技術者の方の資格情報をお教えいただければ、取得可能な建設業許可の業種をすべて洗い出し、無料で診断いたします。まずは許可申請までの流れをご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
「リフォーム工事一式」では建設業許可の実務経験を証明できない?神奈川県の確認資料を解説
「リフォーム工事」だけでは建設業許可の経験証明が難しい理由
「長年リフォーム工事を請け負ってきたから、そろそろ建設業許可を取りたい」とお考えの事業主様は多いのではないでしょうか。しかし、いざ過去の書類を見返してみると、注文書や請求書に「〇〇邸リフォーム工事一式」としか書かれていない…そんなケースは決して珍しくありません。
ここで確認しておきたい重要な点があります。実は、建設業法上の建設工事は2つの一式工事と27の専門工事の計29種類に分類されており、その中に「リフォーム工事」や「改修工事」という業種は存在しません。
これは、建設業許可の審査において、単に「リフォーム工事を10年やっていました」と主張しても、どの専門工事の経験を積んできたのかが全く伝わらないことを意味します。審査行政庁は、あなたが申請したい業種(例えば、内装仕上工事業や大工工事業など)の経験を、客観的な書類で10年以上積んでいるかを確認したいのです。
神奈川県の建設業許可申請の手引きでも、契約書等の工事名が「増築」「改築」「改修」「リフォーム工事」などとなっていて、業種を判別しにくい場合には、見積書、内訳書、工程表、図面など工事内容を確認できる資料の追加提出を求めています。
そのため、「リフォーム工事」としか記載のない書類だけでは、申請したい業種の工事であったことを確認できず、実務経験の裏付け資料として十分でないと判断される可能性があります。
「まさか、これまでの経験が無駄になるのか…」と不安に思われたかもしれません。ただし、書類の記載が曖昧な場合でも、内訳書や図面、写真などから工事内容を補足できることがあります。この記事では、私たち専門家がどのようにして「リフォーム工事」という曖昧な経歴を、許可取得に必要な「専門工事」の実績へと整理していくのか、その具体的な手順を解説していきます。
【相談事例】曖昧な工事経歴をどうやって証明したのか?
工事内容を具体的に整理することで、許可申請に必要な実務経験として説明できる可能性が見えてくる場合があります。先日、当事務所にいらっしゃったお客様も、まさに同じ悩みを抱えていました。
「10年以上、住宅や店舗のリフォーム工事をしてきたので、建設業許可を取りたいんです」
ご相談の際、お客様はそう力強くおっしゃいました。しかし、お持ちいただいた過去の注文書や請求書を確認すると、そのほとんどに「〇〇邸リフォーム工事」「店舗改修工事」としか書かれていませんでした。この記載だけでは、申請したい業種の実務経験として審査で説明することが難しい状況でした。
そこで、提出可能な資料を確認し、工事内容を具体的に整理することにしました。リフォーム工事と一口に言っても、その中身は専門工事の集合体です。造作工事や木製設備の取付けであれば「大工工事」、建具の取付けであれば「建具工事」、給排水設備の交換であれば「管工事」、屋根の葺き替えであれば「屋根工事」といったように、施工内容に応じて該当業種を整理していきます。
そこで、お客様と一緒に、保管されていた見積書や内訳書、現場の写真、図面を一つひとつ確認しました。さらに、工事内容を具体的にヒアリングさせていただき、どの作業がどの業種に該当するのかを一件ずつ丁寧に整理していったのです。この地道な作業が、許可申請で実務経験を説明するための重要な準備になります。単に「リフォームをしていた」という事実を、「申請したい業種の専門家としての実務経験があった」という客観的な証明へと再構築していくのです。
このお客様のケースのように、書類の工事名が曖昧であっても、その中身を分析・整理することで、実務経験として説明できる可能性があります。過去の経験を証明する上で、他県での経験証明が必要な場合など、より複雑なケースにも対応してきました。大切なのは、最初から諦めないことです。

行政書士はこう見る!工事経歴を業種に振り分ける3ステップ
では、具体的にどのようにして曖昧な工事経歴を整理していくのでしょうか。ここからは、私たち専門家が実務で行っている思考プロセスを、3つのステップに分けて具体的にご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
Step1:書類の仕分けと内訳の確認
最初に行うべきは、とにかく手元にある関連書類をすべて集めることです。注文書や請求書はもちろんのこと、見積書、内訳書、図面、現場写真など、工事内容の裏付けとなりそうなものは、どんな些細なものでも構いません。
特に重要なのが「内訳書」や「見積書」です。工事名が「リフォーム工事一式」となっていても、内訳を見れば「クロス張替」「キッチン設備交換」「間仕切り壁設置」「ユニットバス組立」といった具体的な項目が記載されているはずです。これらの項目は、経験を専門業種に分類するための重要な手がかりになります。
まずは、申請したい業種に関連しそうな項目にマーカーを引くなどして、情報を可視化していく作業から始めましょう。この段階では、まだどの業種に該当するか完璧に判断できなくても大丈夫です。まずは、ご自身の経験を客観的な「事実」として洗い出すことに集中してください。どのような資料を準備すべきか、具体的なリストも参考にしてみてください。
Step2:工事内容から業種を特定する判断基準
Step1で洗い出した具体的な工事項目を、建設業法上の29業種のどれに振り分けるか。ここが最も専門的な判断が求められる部分です。同じ工事項目でも、施工の範囲や内容によって該当する業種が変わることがあるため、注意深く見極める必要があります。

いくつか代表的な例を見ていきましょう。
- キッチンの交換工事:
システムキッチンの交換は、それだけで一つの建設業種に決まるわけではありません。給排水管やガス管の接続工事であれば「管工事」、電気配線やコンセント工事であれば「電気工事」、壁・床などの内装仕上げを伴えば「内装仕上工事」、造作工事を伴えば「大工工事」など、実際に施工した内容を確認して業種を判断します。 - 間仕切り壁の設置:
木材で下地を組む工事は「大工工事」、クロス張りや内装間仕切り工事は「内装仕上工事」、塗装は「塗装工事」、コンセントの増設などがあれば「電気工事」として整理する必要があります。 - ユニットバスの設置:
ユニットバスの設置では、給排水設備の接続は「管工事」、照明や電源の接続は「電気工事」など、施工内容ごとに複数の業種が関係します。ユニット本体の組立・固定についても、内訳や施工内容を確認したうえで業種を判断する必要があります。
このように、一つのリフォーム工事の中には、複数の専門工事が含まれているのが通常です。どの部分がどの業種の経験として主張できるのかを、工事内容に応じて的確に切り分ける作業が不可欠です。特に、みなし登録電気工事業者の届出が必要な電気工事のように、建設業許可とは別の手続きが関わるケースもありますので、慎重な判断が求められます。
業種区分の考え方については、国土交通省が公表しているガイドラインも参考になります。
Step3:経験年数を証明するための資料整理術
業種の振り分けができたら、最終ステップとして、申請したい業種の経験が10年以上(またはそれに準ずる期間)あることを証明するための資料整理を行います。
まず、申請したい業種ごとに、該当する工事の注文書・請求書をセットにして、時系列に並べていきます。そして、最初の工事資料から最後の工事資料までの期間が必要な実務経験年数を満たしているかを確認します。実務経験を証明する資料の求められ方は許可行政庁によって異なるため、申請先の手引きに沿って、必要な期間分の資料を整理することが重要です(神奈川県では、その間について原則として各年1件以上の契約書・注文書・請求書等による裏付けが必要です)。
もし、特定の月の請求書だけが見つからない、といった書類の不足がある場合でも、すぐに諦める必要はありません。例えば、取引先に保管されている注文書や契約書の控えを確認してもらうなど、他に客観的な裏付け資料が残っていないかを探します。取引先作成の証明書などが補足資料となる場合もありますが、それだけで実務経験の裏付けとして認められるとは限らないため、申請先への事前確認が重要です。
また、個人事業主の方であれば、毎年の確定申告書の控えが、その期間事業を営んでいたことの強力な裏付け資料となります。申告書の事業種目欄から申請する工事業種が明確に確認できるかどうかが重要です。
最終的には、審査官が一目見て「この人は、この業種の経験をこれだけの期間、継続して積んできたのだな」と理解できるように、整理されたファイルを作成することがゴールです。必要であれば、工事経歴の一覧表や、工事内容を補足する説明資料を別途作成することも有効な手段と言えるでしょう。
それでも証明が難しい場合の最終手段
ここまでご紹介した3つのステップをご自身で試みてみたものの、「やはり書類が足りない」「この工事がどの業種になるのか判断できない」といった課題が残ることもあります。
特に、10年という長期間の書類をすべて完璧に揃えるのは、簡単なことではありません。また、業種の判断は非常に専門的で、微妙なケースも多々あります。もし、ご自身での整理に行き詰まりを感じたなら、それは専門家へ相談するタイミングかもしれません。
私たちのような専門家は、日々多くの許可申請に携わる中で、様々なケースに対応してきた経験と知識があります。どの書類が決定的な証拠になるのか、不足している場合にどのような代替手段があるのか、行政の審査官がどこを重視するのかを熟知しています。
無理に不確かな情報で申請を進めてしまい、不許可という結果になってしまっては、時間も労力も無駄になってしまいます。そうなる前に、一度建設業許可に関する相談窓口で、許可取得への道が拓ける可能性は十分にあります。当事務所の相談から許可申請の流れもご確認いただき、ぜひお気軽にご状況をお聞かせください。
まとめ:曖昧な工事経歴も整理次第で許可取得を目指せる場合がある
「リフォーム工事」や「改修工事」という経歴は、一見すると建設業許可の取得には不利に思えるかもしれません。しかし、本記事で解説したように、内訳書や図面、写真などを確認して工事内容を具体化することで、専門工事の実務経験として整理できる場合があります。
重要なポイントをもう一度振り返ってみましょう。
- 書類をすべて集め、内訳から具体的な工事内容を洗い出すこと。
- 洗い出した工事内容を、専門的な基準で適切な業種に振り分けること。
- 業種ごとに資料を整理し、経験年数が途切れていないかを確認すること。
この3つのステップを丁寧に行うことで、これまで積み上げてきた経験を、建設業許可申請で説明しやすい形に整理できます。
もちろん、この作業は根気のいる地道なものです。しかし、このプロセスを経ることで、ご自身の事業の強みを再確認し、今後の事業展開を考える良い機会にもなるはずです。この記事が、あなたの建設業許可の申請についての第一歩を後押しできれば、これほど嬉しいことはありません。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
家具や機械の『納品+設置』は建設業許可が必要?金額基準を解説
「家具を納品して設置するだけ」でも建設業許可は必要?
「オフィス移転に伴い、デスクや棚など一式で600万円の注文が入った。納品と設置もお願いしたいと言われている」
「工場に新しい機械を導入する。機械本体が1000万円で、据付費用は30万円だ」
オフィス家具店や文房具店、機械商社などを経営されている方にとって、このような高額な受注は大きなビジネスチャンスですよね。しかし、商品を販売するだけでなく、現場での「設置」や「据付」まで請け負う場合、建設業許可の要否を確認すべき場合があることをご存知でしょうか。
それは、建設業許可の問題です。
「うちは建設会社じゃないから関係ない」「設置費用だけなら少額だから大丈夫」——。そう思われるかもしれません。実際、先日ご相談に見えたある家具店の社長も、当初は「なぜうちが建設業許可?」と半信半疑でいらっしゃいました。
しかし、お話を伺うと、家具の代金と設置費用を合わせると500万円を優に超える案件を請け負おうとされていました。この場合、たとえ家具の販売がメインであっても、その「設置」が建設工事とみなされ、建設業許可が必要になるケースがあるのです。
この記事では、これまで建設業とは無縁だと思っていた事業者の方々に向けて、
- なぜ家具や機械の設置が「建設工事」にあたるのか
- 許可の要否を分ける「500万円」という金額基準の正しい考え方
- 請求書を分けても「抜け道」にはならない理由
- 自社の業務がどの工事業種に該当するのか
といった疑問を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。知らないうちに法律違反を犯してしまうリスクを避け、安心して事業を拡大していくために、ぜひ最後までお読みください。
建設業許可の基本:「建設工事」とは何か
そもそも、なぜ家具の設置が「建設工事」になる可能性があるのでしょうか。それを理解するために、まずは建設業法が定める「建設工事」の定義を見てみましょう。
法律の世界では、「建設工事」とは「土木建築に関する工事で、別表第一の上欄に掲げるもの」と定義されています。これだけでは少し分かりにくいですが、ポイントは「単なる物品の販売や運搬」と「建設工事」は明確に区別されるという点です。
例えば、完成品の家具をお客様のオフィスに運んで、指定の場所に「置くだけ」であれば、それは単なる納品(運送)であり、建設工事にはあたりません。一方、建築物への家具の据付けや、家具の材料を現場で加工・組み立てて据え付ける作業などは、作業内容によって内装仕上工事の「家具工事」に該当する可能性があります。
つまり、単に商品を売るだけでなく、その「工事の完成を請け負う」契約かどうかが、建設業許可を考える上での最初の分かれ道となります。
参照:国土交通省「建設業法等における定義」
判断基準は「請負代金500万円(税込)」
では、すべての設置作業に建設業許可が必要かというと、そうではありません。建設業法には「軽微な建設工事」という例外規定があり、この範囲内であれば許可は不要とされています。
その重要な基準となるのが「1件の請負代金が500万円未満(税込)」であるかどうかです。
ただし、ここで注意したいのは、「商品代金が500万円を超えたら、それだけで建設業許可が必要になる」という意味ではないことです。
まず、納品に伴う設置・据付作業が、建設業法上の「建設工事」に該当するかを判断します。そのうえで、商品・機器の供給を含めて、その工事の完成を一体として請け負っている場合には、設置費用だけを切り離して考えるのではなく、契約全体の金額を踏まえて500万円基準を判断する必要があります。
ここで多くの方が陥りがちなのが、「設置費用だけで判断してしまう」という誤解です。設置・据付部分が建設工事に該当し、商品・機器の供給を含めて一体としてその建設工事の完成を請け負っている場合には、商品・機器代を含む契約金額が500万円基準の判断対象となる可能性があります。工事費だけを切り出して判断することはできません。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 家具本体の価格:480万円(税抜)
- 設置費用:15万円(税抜)
- 合計:495万円(税抜)
この家具の納入と据付が一体として「内装仕上工事の完成を請け負う契約」と評価される場合には、税込544.5万円となるため、軽微な建設工事には該当せず、原則として建設業許可が必要になります。
設置費用がわずかであっても、商品代金と合わせることで500万円のラインを超えるケースは、十分に起こり得るということを覚えておいてください。
契約書や請求書の分割は「抜け道」にならない
「それなら、商品代金の請求書と、設置費用の請求書を別々に発行すれば問題ないのでは?」
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一体の建設工事であるにもかかわらず、500万円未満にする目的で工事契約を分割しても、原則として合算されます。単に請求書を分けただけで許可が不要になるわけではありません。
建設業法施行令第1条の2第2項には、「同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない」と定められています。
つまり、工事の実態が一つである限り、契約書や請求書をいくら分けても、それらを合算した金額で判断されるのです。「元請けから言われたから」「お客様の要望で」といった事情だけでは、直ちに「正当な理由」があるとはいえない可能性があります。
安易に契約を分割する行為は、意図的な許可逃れ(脱法行為)とみなされ、後述する厳しい罰則の対象となる可能性があります。法令遵守を徹底することは、事業を守る上で極めて重要です。契約形態は、工事の実態が請負契約にあたるかどうかで判断されることを、強く認識しておきましょう。
このテーマの全体像については、建設業許可の基礎知識で体系的に解説しています。
あなたの業務はどの工事に該当?具体的な業種分類
「自分の会社のやっている設置作業が、建設工事に当たるかもしれないことは分かった。では、もし許可を取るなら、29種類ある建設業種のうち、どれに該当するのだろう?」
ここからは、家具店や機械商社の業務で特に可能性の高い業種について、具体的なケースを交えながら解説していきます。
ケース1:家具の据付は「内装仕上工事業」

オフィス家具や店舗の造作家具などを、建築物に固定する作業は「内装仕上工事業」に分類される可能性が高いです。
国土交通省が公表している「建設業許可事務ガイドライン」によると、内装仕上工事業には「家具工事」が含まれており、その例として「建築物に家具を据え付ける工事」が挙げられています。
ここでのポイントは、「据え付ける」という言葉です。単に床に置くだけの家具は該当しませんが、
- 壁や床にアンカーボルトで固定する造り付けの収納棚
- 現場で組み立てて設置するカウンター
- オフィスを区切るパーテーションの設置
といった作業は、内容に応じて「家具工事」または「内装間仕切り工事」などの内装仕上工事に該当する可能性があります。こうした作業が内装仕上工事に該当し、家具の供給を含めて一体として工事の完成を請け負う契約で、その請負代金が500万円(税込)以上となる場合には、原則として内装仕上工事業の許可が必要になります。
参照:国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」
ケース2:機械の取付けは「機械器具設置工事業」
工場で使う生産設備、立体駐車場の設備、舞台装置など、現場で組み立てが必要な機械を設置する工事は「機械器具設置工事業」に該当することがあります。
この業種は判断が非常に難しいことで知られています。ポイントは、「他のどの専門工事にも分類されない、現場での組立て・設置を伴う複合的な機械」が対象となる点です。
例えばポンプ設備であれば、配管設備の一部として設置する内容なら管工事に該当する場合があり、単純に「機械器具設置工事」と決めることはできません。一方で、現地の状況に合わせて複数の機械や部品を組み合わせ、一つのシステムとして機能するように組み立て・設置するような工事は、機械器具設置工事と判断される可能性が高くなります。
このように、同じ機械を設置する場合でも、その作業内容によって該当する業種が変わることがあります。特に他業種との区別がつきにくく、専門的な判断が求められるため、自己判断は非常に危険です。
無許可営業のリスクと正しい対処法
もし、建設業許可が必要な500万円以上の工事を、許可がないまま請け負ってしまったらどうなるのでしょうか。
無許可で請け負った場合、法令違反として罰則等の対象になる可能性があります。建設業法では、無許可営業に対して「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という重い罰則を定めています。
法的な罰則はもちろんですが、事業上も次のようなリスクが考えられます。
- 信用の失墜:コンプライアンス違反が発覚すれば、取引先や金融機関からの信用に影響する可能性があります。
- 事業機会の損失:行政処分や発注機関の措置等により、公共工事への参加や取引に影響が生じる可能性があります。
- 将来の許可取得への影響:無許可営業について刑に処せられた場合、その内容によっては建設業許可の欠格要件に該当し、その後の許可取得に重大な影響が生じる可能性があります。
「うちの業務、もしかしたら許可が必要かも…」と少しでも感じたら、見て見ぬふりをせず、すぐに行動を起こすことが重要です。まずは、見積書や契約書を締結する前に、その契約が建設業許可を必要とするものかどうかを確認すること。そして、その判断に迷う場合は、許可取得の準備を進める、あるいは専門家に相談するというステップを踏むことが、リスクを回避し、事業を安心して成長させるための賢明な対処法と言えるでしょう。
まとめ:その契約、本当に大丈夫?専門家にご相談ください

今回は、家具店や機械商社の方々が見落としがちな「納品+設置」業務における建設業許可の必要性について解説しました。
この記事のポイントを改めて整理しましょう。
- 家具や機械の「設置・据付」は、その内容によって「建設工事」に該当する場合がある。
- 設置・据付が建設工事に該当し、商品・機器の供給を含めて一体として工事の完成を請け負っている場合には、設置費だけでなく契約全体の金額を踏まえて500万円基準を判断する。
- 契約書や請求書を分割しても、実質的に一つの工事であれば合計額で判断され、抜け道にはならない。
- 家具の据付は「内装仕上工事業」、機械の取付けは「機械器具設置工事業」などに該当する可能性があるが、判断には専門知識が必要。
- 無許可営業には「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という重い罰則がある。
「うちの会社は建設業じゃないから」という思い込みが、気づかぬうちに大きな経営リスクを招いてしまうかもしれません。特に、高額な商品を扱う事業者の方ほど、その危険性は高まります。
「この見積書、許可なしで契約して大丈夫だろうか?」「自社のこの作業は、どの業種にあたるのだろう?」
少しでも疑問や不安を感じたら、ご自身で判断せずに、私たち建設業許可業務を中心に取り扱う行政書士にご相談ください。契約前の段階でご相談いただければ、リスクを未然に防ぎ、安心してビジネスチャンスを掴むためのお手伝いができます。当事務所の相談から許可申請までの流れをご確認いただき、まずはお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。
決算変更届の工事経歴書、そのままで経審に使える?「7割ルール」を解説
なぜ?決算変更届と経審で「工事経歴書」のルールが違う理由
「毎年きちんと決算変更届を出しているんだから、その工事経歴書を経審でも使えるはず」。そうお考えになる建設業の社長様は少なくありません。しかし、ただし、そのまま流用すると、差し戻しや再作成が必要になる可能性があります。
結論から申し上げますと、決算変更届と経営事項審査(経審)では、同じ「工事経歴書」でも、求められる記載ルールが全く異なります。経審を受ける会社は、決算変更届に添付する工事経歴書の段階から、経審用の記載ルールに従って作成する必要があるのです。
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?それは、それぞれの書類が持つ『目的』が根本的に違うからです。
- 決算変更届の目的:事業年度ごとの実績を報告する『事後報告』です。許可行政庁に対して「この1年間、このような工事を行いました」と届け出るための書類であり、比較的シンプルなルールで作成が認められています。
- 経営事項審査の目的:公共工事の入札に参加するための『能力評価』です。全国の建設業者を公平な基準で評価し、点数化(ランク付け)するための審査なので、非常に厳格で統一されたルールが求められます。
決算変更届は事業年度ごとの実績報告としての性格が強い一方、経審は公共工事の入札参加に関わる評価手続きであるため、記載順序や金額処理などの確認がより厳格に行われます。
この「目的」の違いこそが、後ほど詳しく解説する「金額は税抜で統一」「元請・下請の記載順序」「財務諸表との整合性」といった経審特有の厳しいルールにつながっているのです。
この根本的な違いを理解することが、差し戻しや手戻りを防ぎ、スムーズな経審手続きを終えるための第一歩となります。公共工事への参加を目指す上で、経営事項審査(経審)の仕組みを正しく理解し、適切な書類を作成することが不可欠です。
【実例】審査で指摘される前に!よくある失敗談
「ルールが違うのは分かったけど、具体的にどんなミスが起きるの?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、私が実務の現場で目の当たりにした、実務上起こりやすい事例を少しだけご紹介します。
先日、神奈川県の経営事項審査の窓口で順番を待っていた時のことです。私の前に審査を受けていた会社さんが、審査員から次々と指摘を受けている声が聞こえてきました。
「工事経歴書、元請を7割書いて…」「金額が7割に足りてないですよ」「元請と下請を混ぜて書いちゃダメです」

そのやり取りを聞いていて、指摘されている内容から「あぁ、決算変更届の書き方のまま提出してしまったんだな」とすぐに分かりました。そして同時に、「この内容では、今日この場で受理されることはないだろうな。書類を一から作り直して、また別の日程で来庁しなくてはならないだろうな…」とも感じました。
貴重な時間を使って審査会場まで足を運んだにもかかわらず、たった一枚の書類のルールを知らなかったために、すべてが無駄になってしまう。こうした光景は、決して珍しいものではありません。
決算変更届の書類を安易に流用してしまうと、このような「差し戻し」や「手戻り」という現実的なリスクに直結します。この記事を読んでくださっているあなたには、同様の手戻りを避けるため、これから具体的なルールの違いを詳しく解説していきます。
経審用の工事経歴書作成|決算変更届との3つの決定的違い
それでは、いよいよ本題です。決算変更届用の工事経歴書と、経審用の工事経歴書では、具体的に何が違うのでしょうか。実務上、特に重要で間違いやすいポイントは、次の3つに集約されます。
- 金額の扱い(税抜 / 税込)
- 工事の記載順序(元請 / 下請)
- 完成工事高との整合性
この3つのポイントをしっかり押さえることが、工事経歴書の不備を防ぐための重要なポイントとなります。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
違い1:金額は「税抜」が大原則!その理由と注意点
経審における大原則は、課税事業者については「工事経歴書に記載する請負金額を税抜で統一する」ということです。
決算変更届では、工事経歴書・直前3年の各事業年度における工事施工金額・財務諸表の税込/税抜を統一して記載しますが、経審では課税事業者について税抜で作成する必要があります。なぜなら、経審は全国の事業者を同じ土俵で評価するための審査だからです。消費税の課税事業者と免税事業者が混在する中で、税込金額で評価してしまうと、公平な比較ができなくなってしまいます。そのため、評価のブレをなくす目的で「税抜」に統一されているのです。
このルールを知らずに、税込で作成された決算書を元に工事経歴書を作成してしまうと、大変な手戻りが発生します。
以前、初めて経審を受けたいという川崎市の空調工事業者様からご相談がありました。お預かりした資料を確認したところ、なんと決算書も決算変更届もすべて「税込」で作成されていたのです。
「経審は、税抜の決算書でないと受けられないんですよ」とお伝えし、急いで顧問税理士の先生に税抜での決算書再作成を依頼していただきました。もちろん、それに伴って工事経歴書もすべて作り直しです。なんとか申請には間に合わせることができましたが、税理士の先生も、弊所も、そして何よりお客様ご自身も、相当な時間と労力を費やすことになってしまいました。
特に、将来的に経審を受ける可能性がある会社様は、決算を締める段階で顧問税理士に「税抜経理」をお願いしておくことが非常に重要です。建設業許可では500万円の金額判断など消費税の扱いが重要になる場面も多く、専門家との連携は不可欠と言えるでしょう。
違い2:最重要!元請・下請の記載順序「7割ルール」を完全図解
経審用の工事経歴書作成で、最も多くの方がつまずくのが、この「7割ルール」と呼ばれる記載順序のルールです。
経営規模等評価の申請を行わない会社は、経審用のように元請工事を先に7割超まで記載する必要はありませんが、主な完成工事を請負代金の大きい順に記載し、その後に主な未成工事を記載します。しかし、経営規模等評価の申請を行う会社は公共工事の発注者保護の観点から「元請としての施工能力」が重視されるため、記載する順番に非常に厳しいルールが設けられています。
ルールを簡単に言うと、「まず元請工事を優先的に書き、次に下請工事を書く」という2段階のステップで、それぞれ完成工事高の7割に達するまで記載していく必要があります。言葉だけでは分かりにくいので、図解で見ていきましょう。

【ステップ1:元請工事の抽出と記載】
- まず、その業種の工事の中から「元請工事」だけをすべてリストアップします。
- その元請工事を、請負金額の大きい順に並べ替えます。
- 金額の大きいものから順番に工事経歴書に記載していき、その合計額が「元請完成工事高」の7割を超えるところまで、もしくはすべての元請工事を記載し終えるまで続けます。
【ステップ2:残りの工事の記載】
- ステップ1で記載しなかった残りの元請工事と、すべての「下請工事」を合わせ、請負金額の大きい順に並べ替えます。
- 金額の大きいものから順番に、ステップ1に続けて記載していきます。
- 工事経歴書に記載した工事の合計額(ステップ1+ステップ2)が、その業種の「総完成工事高(元請+下請)」の7割を超えるところまで記載を続けます。
このルールは非常に複雑で、手作業でやろうとすると計算ミスや転記ミスが起こりがちです。決算変更届のように単純に工期順や金額順に並べるだけでは、審査で指摘される可能性が高い重要なポイントだと覚えておきましょう。
違い3:財務諸表「完成工事高」との整合性確認
最後の違いは、書類間の数字の整合性です。経審では、提出された書類全体の信憑性が厳しくチェックされます。
特に重要なのが、工事経歴書や工事種類別完成工事高、財務諸表(税抜)の損益計算書に記載されている「完成工事高」が、千円単位で整合している必要があるという点です。

例えば、工事経歴書で「管工事」として計上した工事金額の合計が5,000万円だった場合、財務諸表の完成工事高の内訳にある「管工事」の金額も、ぴったり5,000万円でなければなりません。
この整合性が取れていないと、「どちらかの数字が間違っている」と判断され、書類全体の信憑性が疑われ、差し戻しの原因となります。
よくあるミスとして、千円未満の端数処理の違いが挙げられます。工事経歴書では千円単位で記載しますが、千円未満の切り捨て処理や関係書類との集計方法が統一されていないと、合計額が財務諸表の数字とズレてしまうケースがあります。
チェックする際は、必ず工事経歴書の業種別合計額をすべてリストアップし、財務諸表の数字と一つひとつ突き合わせる作業が必要です。この地道な確認作業が、差し戻しのリスクを減らすための重要な確認手順となります。
将来の経審に備えるための決算変更届段階での準備と対策
ここまで経審特有の厳しいルールについて解説してきましたが、「毎年提出する決算変更届の段階から、何か準備できることはないの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。もちろんです。未来の経審で慌てないために、今からできる「予防的措置」がいくつかあります。
専門家の視点から、ぜひ実践していただきたい3つの対策をご紹介します。
- 顧問税理士との情報共有
最も重要な対策です。決算をお願いしている顧問税理士の先生に、「将来、経営事項審査を受ける可能性があります」と一言伝えておきましょう。それだけで、プロである税理士の先生は「それなら税抜で決算書を作成しておこう」と判断してくれます。いざ経審を受ける段階になってから税込の決算書を税抜に修正するのは、先ほどの事例のように大変な手間がかかります。決算の段階で済ませておくのが一番です。 - 日々の経理処理での区分け
経理担当者の方にお願いしたいのが、日々の会計処理の段階で、工事ごとに「元請」か「下請」かを明確に区分して入力しておくことです。多くの会計ソフトでは、摘要欄や補助科目を使ってタグ付けができます。これを徹底しておくだけで、経審の際にあの複雑な「7割ルール」の集計作業が大幅に効率化できます。 - 契約書・注文書等の整理保管
工事経歴書に記載した工事は、その内容が事実であることを証明するための裏付け資料(エビデンス)の提示を求められることがあります。具体的には、工事の契約書や注文書・請書などです。これらの書類を工事ごとに整理し、いつでも取り出せるように保管しておく習慣をつけましょう。これは経審だけでなく、建設業許可の更新手続きなどでも役立ちます。
これらの準備は、決して難しいことではありません。しかし、日頃から少し意識しておくだけで、数年後に経審を受ける際の負担を大幅に軽減できるのです。
より詳細な記載方法については、国土交通省が公開している資料も参考になります。
参照:国土交通省の工事経歴書記載フロー
まとめ:工事経歴書は「目的」を理解すれば怖くない
今回は、経営事項審査(経審)における工事経歴書の書き方について、決算変更届との違いに焦点を当てて解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 根本的な違い:決算変更届は「事後報告」、経審は「能力評価」。この目的の違いがルールの厳格さにつながる。
- 3つの決定的違い:
- 金額は必ず「税抜」で統一する。
- 元請・下請の「7割ルール」という厳格な記載順序を守る。
- 財務諸表の「完成工事高」と金額を完全に一致させる。
- 未来への備え:決算変更届の段階から「税理士との連携」「日々の経理での区分」「契約書類の保管」を意識することが、将来の負担を大きく減らす。
一見すると複雑で難解に思える経審用の工事経歴書ですが、なぜそのようなルールになっているのかという「目的」を理解すれば、決して怖いものではありません。一つひとつのルールには、すべて「全国の事業者を公平に評価する」という明確な理由があるのです。
とはいえ、これらの作業をご自身で行うには、多くの時間と専門的な知識が必要になるのも事実です。もし、少しでも不安を感じたり、本業である現場の仕事に集中したいとお考えでしたら、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。
専門家にご依頼いただくことで、書類作成や確認作業の負担を軽減し、本業に充てる時間を確保しやすくなります。スムーズな経審申請を通じて、貴社の公共工事への参加準備を適切に進めるためのお手伝いができれば幸いです。まずは無料相談から、現状のお悩みをお聞かせください。

司法書士・行政書士・社会保険労務士の猪狩佳亮(いがり よしあき)です。地元・神奈川県川崎市を拠点に、中小企業の社長さんのお悩みに耳を傾け、許認可や労務、法律手続きなどの「困った」を一緒に解決しています。3つの資格を活かし、建設業や宅建業の許可、助成金のご相談など、経営の身近なサポーターとして活動中。どんな小さなことでも、まずは気軽にご相談ください。